前兵庫県議・竹内英明さんはなぜ死に追い込まれたのか 今西憲之[ジャーナリスト]
内部告発文書を入手して取材し始めた時からのつきあい
私と竹内さんが親しくなったのは、W氏の内部告発文を早々に入手して、取材を始めた時だ。斎藤知事は、 「公務員失格」 「内部告発はウソ八百」 と記者会見。その直後から、竹内さんとは頻繁に情報交換をするようになった。 竹内さんとは何かの選挙取材で一度だけ面識があった。昨年4月、内部告発が出始めて間もない時に、事務所に電話をかけてみると、 「待ってましたで。かかってくると思っていたんや」 と歓迎してくれた。 竹内さんは姫路市の高校から早稲田大学に進学。同大学公認の政治サークル「鵬志会」に在籍。将来は政治家を志していた。大学卒業後は、大手コンビニエンスストアに就職したが、政治の道があきらめられず、旧民主党の職員になった。その後、姫路市議を経て県議へと転身していた。 大学時代の1つ先輩にあたるのが、小沢一郎衆院議員の元秘書で、陸山会事件に巻き込まれてしまった石川知裕さん。 私が石川氏と親しく、過去に何度も記事にしていることを知っており、 「あんたが内部告発のことに取り組んでくれるなら、心強い」 姫路市の繁華街で3時間以上、竹内さんと話し込んだ時、そう見送ってくれた。 当初は、兵庫県の知事という地方の首長の問題でさほど関心は高くなかった。だが内部告発に加えて斎藤知事の「ウソ八百」などの発言もあり、いつしかニュースが全国区となった。 私は竹内さんのアドバイスもあって、斎藤知事の一連の問題では、何度も独自の記事を出すことができた。 ある時、兵庫県庁近くで竹内さんが 「俺の好きなB級グルメがあるんや」 と誘ってくれた。竹内さんの趣味はB級グルメ巡りだそうで、地元の姫路市だけに限らず、あちこちで食べ歩いているという。 一緒に行ったカレーも絶品だった。その食事中のことだった。 「あれ、書けないんですか。あれしかないねん、斎藤知事のクビをとるには。そうでないと、W氏も浮かばれへん」 陽気な竹内さんが険しい表情でそう話した。 内部告発をしたW氏は、百条委員会に証人として出席が決まり大きく注目されていたが、危惧もあった。兵庫県から「強制的に押収」された公用パソコンの中に、個人的なデータが残されていた。 W氏は弁護士を通じて内部告発には関係がない、個人的なデータの開示は内部告発者保護の観点などから、外部に出さないように求めていた。 百条委員会もW氏の意向に理解をしていたが一部の県議が反論。W氏は昨年7月、それを苦にしてか、自死に追い込まれた。 竹内さんはW氏と同じ高校で、後輩にあたる。私に宛てたLINEで、 《知事側近と特定の県議がW氏の個人情報をもとに彼を攻撃しようと企んでいた。許せません》 と竹内さんは書き、さらに 「これがW氏の自殺の原因や。県議や知事は許しがたい。徹底的に追求してやる。あれしかないやろ」 その口調は怒りに満ちていた。