善意と応援が生んだ奇跡:無名だった著者の本が発売前から増刷が決まった理由
「おかげさまで増刷(2刷)が決まりました! 」
昼食後の眠気に負けてベッドに寝転がりながらXを眺めていたら、編集の田島さんからのメールが来た。その文面は、いつになく嬉しそうだった。
私の処女作、「#100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった」は、昨日電子版がリリースされたばかり。しかも紙の本の発売は明後日の予定なのに、すでに増刷が決まったらしい。
私自身も今朝までまったく想像していなかった。なにせ、編集の田島さんからも、「1冊目で売れる人はほとんどいない。本を書くだけで成功だ」、と強調されていた。
私は社会人1年目の23歳。プログラミングや執筆活動で引きこもりがちな、「無名の新人著者」。私にはまだファンはいない。サポートしてくれるのは、せいぜい研究室にいた頃の先生や、学会で会った先生や学生くらいだ。
そんな私の本が、どうして発売前から増刷に至ったのか。怠惰な自分の性格を自覚しつつ、なぜここまで大きな広がりが生まれたのか。その裏側を、少しでも記録しておきたいと思い、このNoteを書き始めた。
1.本を書こうと思ったきっかけ
まず最初に、私がこの本を書こうと思ったきっかけは、先生(研究室の指導教員)などからの勧めだった。
私が10月28日から2月4日にかけて行った、「100日チャレンジ」という企画が学会で評価され、メディアにも載せてもらうほど成功。そしてその時の日記や記録、レポートなどおよそ300ページもの文章が残っていた。
私はレポート課題をサボるために生成AIに何百時間も使うほど、文章を書くのが嫌い。それでも、「こんな機会は滅多にない」と後押しされた。当時他にやりたいことがなかった私は、成り行きで始めた。
大学を出ると同時に社会人となり、無味乾燥で冴えない研修に追われる生活に突入。忙しかったけど刺激的で楽しかった研究室と比べ、私は退屈していた。
「何も分からない」状態からスタートし、それでも一冊の本を出せるのか試してみたい
当時の私の動機はこの程度。そんな私が、知り合いに日経BP社の田島さんを紹介してもらい、持ち込み企画を通してもらった。――それがこの本の発端だった。
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2. 厳しい現実:”無名”の著者の苦悩
編集の田島さんに何度も言われたことがある。
「本の内容がどれだけ良くても、読んでもらわないと伝わらない。まだ”無名”の著者である大塚さんには“ファン”がいないから、まずは知ってもらう努力が必要だ」
本を読む人の少ない現代。もし読まれなかったら徒労だし、せっかくプログラミングスキルを身に着けたのだから他の案件でもやったほうがいいんじゃないかと思うこともあった。なんのためにこんなに苦労しているんだろう、って。
それでも世に出す以上、何万人に読まれてもいいように、エンジニアが辿る成長過程を、エンジニアでない人でも読めるような形で書いた。
これからエンジニアになる学習者が、下積み過程を頑張って乗り越えて欲しい。
一般のビジネスパーソンに、生成AIやソフトウェア開発について知って欲しい。
現代を生きるすべての人に、便利な現代社会の根底を支えるエンジニアや研究者がどんなことをしているのか知って欲しい。
そんな思いで、私は5月23日から6ヶ月以上に渡り、毎日良い本を書くために悩み続けた。
――それが完成したのは、11月14日。書き始めてから175日も経った後だった。
3. 宣伝戦略:昨日よりも”1%”でも良くするために
「本の内容は良くても、無名の著者にはファンがいない。」
この言葉が私の胸に常に突き刺さっていた。
世の中に知ってもらえるよう、SNSや講演など、積極的に露出して欲しい
――本を発売する何ヶ月も前からこう言われ続けてきた。
もちろん、新卒1年目の私に強いコネクションなんてあるわけもなく、大学の先生や出版社の方を抜くと、直接声をかけられる相手なんてせいぜい数人ほど。それでも「この本が売れなければ、せっかく書いた内容が読まれないまま終わってしまう」と考え、いろいろ試行錯誤した。
まず取り組んだのが、Noteでの連続投稿。最初は面倒くさがりの私が毎日書くなんて無理だし、だいたい仕事も研究も、やることはたくさんある。大学生の頃とは違うのだ。
しかし、よく考えてみると、100日チャレンジの序盤も同じだった。1日目、2日目は序盤のやる気でなんとかなるけど、そこから先を続けるのは難しい。あの時は時間的制約に加え、技術的な課題があり、そもそも作れるかどうかが常に問題になっていた。
その時と比べれば今は楽だ。スキルは既に備わっているし、時間もある。他の仕事を10時間くらいに抑えれば、1日2,3時間程度ならできる。
私はいつも周りに言っている言葉がある。
私は遊ぶために生きているのであって、仕事をするために生きているのではない。
私は誰よりも自分の時間を大事にする。1ヶ月前、ハンガリーの大学に呼ばれ、授業で講演しに行った時は、せっかくだからと日本での仕事を全部キャンセルし、2週間も延長してヨーロッパで観光したり遊んだりしていた。周りは楽しんでおいで、と温かく見送ってくれた。
時間的、空間的自由 ――私は、この自由を、絶対に手放したくない。だから、やるときはやらないといけない。勝負をかけるときに時間や努力を惜しんではいけない。これは100日チャレンジで得た教訓の1つでもある。
そんなことを考えながらも、気づけば8日連続で記事を投稿し、今これを書いているので9日目になった。そこには、「もうすぐ本が出ます」「こんな内容です」「こういう背景で執筆しました」と、少しずつ“私と本のストーリー”を語るようにした。――”無名”という大きな足枷を外すために。
単語を一つ一つ選び、読みやすくて面白いツイートや文章を書く。
私が今できる一番のことは、これだった。また、SNSはXを中心に、1日3回は必ずタイムラインを確認してみたり、「#100日チャレンジ」のハッシュタグを活用したりと、地道に情報を発信し続けた。本のレビューや感想が気になって仕方ないのもあるけれど、これまでの人生で一番SNSを開いた期間だったと思う。
4. 一筋の光明:散らばったパズルのピース
私が強く感じたのは、たくさんの方の“善意”や“応援”。私からお願いしたのは、先生に作って貰った献本リストのうち、話したことのある数人だけ。それなのに、発売前からSNSで「この本、面白そう!」「100日チャレンジ気になる」と呟いてくれる人たちが増えていき、私の元にも「予約しました!」「発売が楽しみです!」というメッセージがたくさん届いた。
正直、誰がどこで広めてくれているのか、私にははっきりとは分からない。SNSを見ても、元々のフォロワー数は知れているし、私に強い拡散力があるわけではない。だからこそ、過去の学会発表で会った人や、ハッカソンなどのイベントで一度会った人、偶然私のTwitterやNoteにたどり着いた人などが、好意でシェアしてくださったのだと思う。
数ある新刊の中から私の本に目を留めてくれる、そんなささやかな応援の積み重ねこそが、今回の早期増刷という思いがけない成果を生んだのだと思う。そんな読者の反応に励まされて、とても嬉しかった。
5.1つのメール:増刷の連絡を見て
実際、編集の田島さんから増刷の連絡をもらった時、私は最初「何かの間違いでは?」と疑った。本来なら、1冊目で売れるなんて本当にごく一部の著者だけ。私も「本を書くこと自体が貴重な経験だし、売れなくても仕方ないよね」と自分に思い込ませていたところはある。
でも、こうして客観的なデータとして「発売前予約の勢いが出版社の想定よりはるかに多い」という情報が届くと、現実なんだと実感した。そして、その陰には、自分の頑張りだけでは到底たどり着けない“誰かの応援”があった——そう強く感じている。
もちろん、自分なりの努力もしてきた。SNSでの情報発信やNoteでの連続投稿は、私にとっては相当頑張ったと思う。なにせ本を書いた後から、大学時代に読んだマーケティングや行動経済学、心理学の本を読み直したり、ネットでの実例などを調べて、本の宣伝のためにできることは全部やったから。私は経済学部出身。当時はそういった本を読むのは好きだったけど、勉強嫌いだったし、そもそも何の役に立つか分からなかったから、期末試験当日しか真面目に勉強しなかった。でも、あの時やったことは今、確実に役に立っている。
けれども、ここまで広がった要因はやはり、会ったことがある人も、オンラインでしか繋がったことのない人も含めて、「この人の本、応援してあげたいな」と行動に移してくださった皆さんの存在が大きいと思っている。
”無名”の新人著者の本が注目された。そこには、本を見つけてくれた皆さんの一つ一つの「いいね」や「リツイート」、レビュー、感想などの応援や後押しがあった。
おわりに
今回の増刷決定は、私自身の地道なアウトプットの継続と、それを上回る「出会った人たちの善意」が生んだ奇跡だと思う。
卒業してから1年経っていない私が、初めて書いた一冊の本。それをできるだけ多くの人に読んでもらいたいという気持ちが「私ひとり」から「多くの人たち」に広がっていくさまを目にすることができて光栄に思っている。出版に詳しいわけでもなく、有名なプログラマーでもない。そんな私でも、ここまで来れたのは「ちょっとでも力になりたい」と思ってくれた方々の存在があったからこそだと思う。
何より、「本の内容はよくできているから、みんなに知ってもらえるように頑張ってほしい」という田島さんの言葉を信じて継続してきたことが報われて、ほっとしている。発売前からこれだけ人を巻き込み、増刷できたのは本当に幸運だと思う。
これからはもっと多くの人に手に取ってもらえるよう、さらに情報発信を続けるとともに、いっそう内容を磨いていきたいと思います。私の個性を更にさらけ出しつつ、“誰かの役に立つ”という想いで、これからも書き続けていくので、どうか引き続き応援していただけると嬉しいです。ありがとうございました。
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