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「人と会うと疲れる」ことには名前があった!――ソーシャルバッテリーで見えた世界

  • 学校や会社に行くと、帰り道にはクタクタ

  • 友達と楽しい時間を過ごしたはずなのに、帰宅するとぐったりして何も手につかない

  • ひとりの時間を取れないと、なんだか息がつまるように感じる

……こんな経験はありませんか? かくいう私も、以前は、性格の問題や、体力や精神力が足りないからかな、と悩んだものです。

ところが最近、この「人と会うとなぜか疲れる」という状態には、英語圏のネットカルチャー発祥の面白い名前があると知りました。それが「ソーシャルバッテリー(Social Battery)」という概念です。

ソーシャルバッテリーとは?

ソーシャルバッテリーとは、直訳すれば「社会的電池」。私たちの対人関係や社交性を、バッテリー残量のように“数値化”して捉える考え方です。英語圏のSNSやネットコミュニティで広まったこの考え方は、「人と関わることでエネルギーを消耗し、逆に充電しなければバッテリーが切れてしまう」という比喩に基づいています。
 人と会って話す、何かを一緒にする、仕事の打ち合わせや飲み会、学校でのグループワークなど、人と過ごす時間はいろいろな刺激に満ちています。楽しい反面、気を使ったり、相手を喜ばせようとしたり、自分のスタンスを守ろうとしたり――そうしたやりとりの積み重ねが、少しずつ自分の「社交エネルギー」を削り取っていくのです。
 実は、社交的に見える人も含めて、このソーシャルバッテリーは必ずしも同じだけ備わっているわけではありません。バッテリーが大容量の人もいれば、小さい容量の人もいます。また、回復速度にも個人差があり、ひとりの時間を持てばすぐに回復できる人もいれば、じっくりと休息しないとエネルギーが戻らない人もいるのです。日本では「陰キャ」、「陽キャ」のような概念に近いと思います。

「人と会うと疲れる」の正体

ソーシャルバッテリーの概念で説明すると、「人と会うと疲れる」というのは、単に気合や体力が不足しているからではなく、「限られた社交エネルギーを使い切ってしまうから」ということになります。特に日本の社会では、互いに空気を読み合うコミュニケーションや、上下関係や目上の人への配慮など、かなり神経を使う場面が多いですよね。これが重なると、バッテリーの消費がどんどん大きくなってしまいます。

また、人と会うとき、無意識に「相手に合わせなくちゃ」「盛り上げなくちゃ」といったプレッシャーを抱く人もいるでしょう。さらに、会話のキャッチボール自体は楽しくても、笑顔でいる間にも少しずつエネルギーが削れ続けているのです。「楽しかったはずなのに、帰宅するとぐったり」というのは、まさにこのケースで、楽しさは享受できても、ソーシャルバッテリーも消費されてしまいます。

一方で、「自分は内向的だから、人と関わるのがそもそも苦手」と感じている方もいるかもしれません。ソーシャルバッテリーが小さめの人は、自分のペースで休息を取らないとすぐにエネルギー切れを起こしやすい傾向があります。でも、それは性格上の弱点ではなく、一種の特性なのです。

どうやったら回復できる?

では、ソーシャルバッテリーが減ったとき、どうやって回復すればよいのでしょうか? それは人によってさまざまですが、よく挙げられる方法としては以下のようなものがあります。

  • 一人の時間を確保する
     カフェや自室で静かに過ごす、一人で散歩する、本を読む、音楽を聴くなど、誰にも気を使わない時間を作ることが大きな回復になります。人によっては、映画を観たり、ゲームをしたり、ただ寝るだけでもOK。「誰にも干渉されずに過ごせる」という感覚が鍵です。

  • SNSやチャットも含めたコミュニケーション断ち
     
    いくら物理的に人と離れていても、メッセージのやり取りが続くと気が休まらない場合があります。ときには通知をオフにするなど、完全に一人の世界に没頭できる時間を作ってみましょう。私もこれには取り組んでみました。

  • 自然に触れる
     
    公園に行ったり、川の近くを散歩したり、近所の緑地でのんびりしたり……自然を感じると、ソーシャルバッテリーとは別の形でリフレッシュできます。

  • 趣味に没頭する
     自分が好きなことにひたすら集中すると、リラックスして充電される人は多いものです。読書、ゲーム、映画鑑賞、ハンドクラフト、料理など、好きなジャンルなら何でもいいでしょう。

 つまり、「意識的に自分だけの時間を作る」ことが重要です。逆に、疲れているときにさらに人混みの多い場所へ行くと、バッテリー残量がゼロになりやすいので、どうしても行きたい時は平日など、空いている時に行きましょう。

切れるとどうなる?

もしもソーシャルバッテリーが切れてしまうと、どうなるのでしょうか? 具体的には、以下のような症状があらわれることがあります。

  • 人の声や視線が気になってイライラしたり、不安が強まる

  • 気力がわかず、会話を続けるのがしんどい

  • 普段は気にしない小さなことが気になり、ストレスを感じやすい

  • 自分の殻に閉じこもりたくなる

  • 人付き合いが嫌になって、約束をすべて断ってしまう

 これは、「もう社交エネルギーが底をついていますよ」という心や体からのSOSサインとも言えます。このまま無理をして人付き合いを続けると、さらに消耗してしまったり、相手にネガティブな感情をぶつけてしまったり、後から自己嫌悪になることもあるでしょう。そうなる前に、自分のバッテリー残量を把握し、早めに"充電する"必要があります。

私の場合――リモートワークのエンジニアとして

私自身、リモートワークが主流のエンジニアとして働いています。実は入社当初は、在宅勤務が基本のはずなのに、なぜか数か月間だけ出社を強制される期間がありました。新人研修で3ヶ月間出社が義務付けられていたのです!

通勤ラッシュに…は巻き込まれなかったけど、毎日8時半に起きては9時半に会社に行き、白昼夢のまま学校の授業みたいなものを連日受けさせられました。先生からは「リモート・フレックスだからベッドに寝転がってパソコン広げればいいから」と言われて仕方なく就職したのに、不意打ちでした。

幸い、今はフルリモートで働けるようになったので、もう5ヶ月近く出社していません。業務連絡はオンラインミーティングやチャットツールが中心ですし、物理的に人と会うこともほとんどありません。多分、同僚の顔もだいぶ忘れてしまいましたが(笑)、私自身はこのスタイルがとても気に入っています。

 とはいえ、完全に人を避けているわけではありません。会社の人以外では週に2〜3回は会っています。これ以上多いと疲れるし、少なすぎると逆に寂しくなるので、私にとってはこのくらいのバランスがちょうどいいのです。

おわりに――ソーシャルバッテリーに配慮する社会へ

ソーシャルバッテリーの概念は、単なるネットスラングのようにも思われがちですが、実は私たちの心の健康や働き方に深く関わっています。「出社するのが当たり前」「毎日誰かと顔を合わせてこそ仕事」という価値観が根強い会社も多いですが、すべての人にとってそれが最適とは限りません。
 リモートワークが可能な業種では、「出社する必要が本当にあるのか?」を改めて検討してほしいですし、ソーシャルバッテリーの問題に悩む人にとっては、在宅勤務が絶好の解決策になり得るかもしれません。私個人としては、リモートワークを導入しない会社を「ブラック」とまでは言いませんが、少なくとも「それぞれの性格や社交バッテリーの特性に合った働き方の選択肢を用意すべきだ」と強く思っています。

もし、あなた自身や身近な人が「どうしても人と会うと疲れてしまう」と感じているなら、ぜひこのソーシャルバッテリーという考え方をシェアしてみてください。それは決して「わがまま」や「コミュ障」というレッテルとは無関係です。むしろ、自分のペースで充電しながら人と関わるための重要な視点なのです。自分の生活リズムや働き方をコントロールし、自分に合う社交の仕方を選べる世界こそ、多様性が尊重されている証拠だと思います。

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