通知を消した瞬間、自由を感じた──「即レス」社会を生き抜くために
朝起きて、ベッドの上でまだぼんやりと眠気を感じている状態でも、手は自然とスマホに伸びてしまう──私たちの多くは、LINEやSNSの通知を確認しないと落ち着かない生活リズムにどっぷり浸かっているのではないでしょうか。
メッセージが来ていれば「早く返事しなければ失礼かも」「既読スルーは嫌われるかも」などと考え、気づけば自分の時間を手放している。そんな生活をしていると、常に通知音に神経を尖らせてしまいます。
私自身、エンジニアや研究者、著述家として活動する中で、日常的にメールやチャットを使いながら人とやり取りをしています。プロジェクトの進捗確認や原稿の打ち合わせなど、頻繁に連絡を取らざるを得ない環境にいるからです。ところが、気づいたら「いつでも返信できる人」として扱われ、リアルタイムでのコミュニケーションを期待されるようになっていました。最初は「レスが早いほうが相手に親切だろう」と思っていたのですが、徐々に「通知を見るたびに時間を奪われる」感覚が強くなってきたのです。
そこで思い切って、スマホやPCの通知をほぼ全部オフにするという実験を始めました。結論から言えば、これが驚くほど快適でした。通知が鳴らないだけで、こんなにも自由を感じられるとは思わなかったのです。今回は、私が通知をオフにした背景や理由、そしてその結果得られた“気づき”について紹介していきたいと思います。
集中状態(フロー)にこそ価値がある
私が通知を切った一番の理由は、「フロー」状態を守りたいというものです。エンジニアであり研究者でもある私にとって、集中して作業ができる時間は何よりも貴重。アイデアを練ったり、コードを書いたり、論文をまとめたり──こうしたクリエイティブな作業を行うには、ある程度のまとまった時間と深い集中が必要です。
フロー状態に入るまでには、少なくとも30分ほどかかることが多いと感じています。最初の数分〜十数分は、頭の中にある雑念を整理しながら徐々に作業モードに移行し、やっと「時間がすっと流れるような感覚」に至る。その瞬間に何かの通知が鳴ると、一気に思考がブツッと切れてしまうのです。
せっかく入りかけたフローが、LINEやSlackの通知で台無しにされる
フローを壊されると、再び集中に戻るまでにさらにエネルギーが必要
フロー状態の作業効率は通常の5倍や10倍。これを邪魔されると進みが遅くなるし、何より心情的に辛い。
リアルな場での「ちょっといいですか?」と声をかけられるのも同じですが、音で不意打ちされ、「返信義務を負う」ほうが、より直接的に思考を寸断される感覚があります。集中力が途切れるとイライラするのはもちろん、イライラしている自分に気づくとさらにモチベーションが下がることもしばしば。
だからこそ私は、「自分のペースで連絡を確認できる環境」を最優先しようと決めました。
通知をオフにしても意外と困らない
「通知をオフにすると大事な連絡を見逃すのでは?」という不安が最初はありました。ですが、実際にやってみると、「本当に今すぐ返さないと大問題になる案件」は案外少ないのです。ほとんどの場合、数時間どころか1〜2日ほど返信が遅れても大きなトラブルにはなりませんでした。
もちろん、仕事で急ぎの連絡が来ることはあります(そのほとんどは先生ですが…)。その場合は、事前に「急ぐ場合は電話で連絡をお願いします」と伝えておくようにしています。緊急の用事であれば電話なり直接声をかけてくるもの。チャットやメールを24時間リアルタイムで追い続ける必要はないのだ、と改めて実感しました。
また、私の仕事柄、返信が遅くなっても致命的な問題が発生しづらい、というのも事実です。もしこれが接客業で、「お客様からの問い合わせには数分以内に答えるのが当たり前」という職場だったら、こうはいかないでしょう。ですが、それでも多くの会社員、研究者、クリエイターにとっては、「即レスに縛られて疲弊する」よりも「自分でスケジュールをコントロールして成果を出す」ほうが本来望ましいはずです。
「はがき」感覚でのやり取り
私はメールやSNSの返信について、2〜3日に1回くらいのペースでまとめて行うことにしています。これは、人と人とのコミュニケーションを手紙やはがきの感覚に近づけたいからです。かつては、私が生まれるよりずっと前の話ですが、文通のためにポストに投函し、数日後に返事が来るのが当たり前でした。今のように「送信ボタンを押したら数秒で届く」世界ではなかったはずです。
もちろん現代のメリットを否定するつもりはありません。すぐに送信できる便利さ自体は素晴らしいものです。ただ、その便利さを自分の首を絞める方向に使ってしまうと、常に「まだ返事していないメッセージはないか」とビクビクしながらスマホを開く羽目になります。結果として何度も通知を確認するループに陥り、膨大な時間を浪費してしまうのです。
メールを見てから「丁寧に書き直す」ストレス
文面だけでは伝わりにくいニュアンスを調整するために、何度も推敲する手間
結局、簡潔に書いたつもりでも相手を怒らせてしまったり、誤解を招く可能性もある
これらのストレスを小さくするためにも、はがきを出すような気持ちでのんびり返信するほうが、個人的には気が楽です。そして、もし本当に話が早いほうがよい場合は、電話や対面で「直接コミュニケーションする」という選択肢を使う。メッセージの最大のメリットは「時間に縛られない」ことなのに、それを自ら「リアルタイムの会話の代用品」として使ってしまうのは、ちょっともったいないと感じるのです。
ソーシャルバッテリーの温存
私自身、外から見ると「社交的」「積極的に人と話すタイプ」に見えるらしいのですが、内面はそうでもないと自覚しています。楽しい仲間との飲み会は大好きだし、オンラインゲームでボイスチャットを繋ぎながらワイワイ遊ぶのも好きです。でも、それを連日するとものすごい疲れを感じることが多いのです。
そこで私が取り入れているのが、「1週間に人と会う回数を3回までにする」というルール。人と会ったり、濃いコミュニケーションをすると、それなりにソーシャル・バッテリーを消費します。もちろん、それ以上の頻度で会わなければならないときもありますが、できるだけ自分のバッテリーを守るための仕組みを用意するわけです。
SNSやメールチェックも、基本的には1日1回程度にしています。これは、通知をオフにしているからこそ可能になった習慣です。通知オンのままだと、SNSアプリを開くたびに新しいメッセージが届いていて、ついつい気になってしまう。ですがオフにしておけば、「自分が見たいと思ったときに、まとめて見る」だけなので、集中が途切れにくくなります。
通知オフが生み出した”自由”
冒頭にも書いたように、通知をすべてオフにしたときは正直「大丈夫かな?」という不安がありました。でも今では、この習慣が生活や仕事の質を大きく上げたと感じています。
フロー状態を守りやすくなった
朝のうちに集中してアイデアをまとめる、お昼過ぎは仮眠し、午後に一気にコードを書く。そんなメリハリがつきやすくなりました。相手に余計な期待をさせずに済む
私はすぐに返す必要がないものについては即レスすることはありません。それを最初から伝えてあるので、「返信が帰って来ないのはいつものことだ」という"謎の信頼"を得ました。おかげで、「返信しないのは私が相手に対して怒っているからだ」みたいな余計なことを考えさせなくて済むのでだいぶ助かっています。心の余裕が増える
通知音がいつ鳴るか構えている必要がなくなるので、気持ちが落ち着きました。結果として、人との会話やコミュニケーションそのものを前より楽しめるようにもなったのです。
もし即レス文化に疲れているなら
最後に、もしあなたが「通知音に支配されて疲れている」「返信が遅いと周囲に責められてつらい」と感じているなら、少しだけでも通知を減らしてみてほしいのです。一度すべてをオフにするのは難しくても、たとえば「業務連絡用のチャットだけはオンにして、SNSはオフにする」といった形でも構いません。
コミュニケーションの手段は、決して「リアルタイムである必要」はありません。メールやSNSは、文字通り“スローなやり取り”にも向いているはずです。なのに、いつの間にか「すぐに返事しないと失礼」「相手を待たせてはいけない」というプレッシャーに押しつぶされ、身動きが取れなくなっていないでしょうか。
結局、「自分のペースで休みながら付き合う」ことができれば、誰とでもある程度うまくやっていけるのだと思います。常に通知で首を絞められるような環境に身を置いていると、その調整が非常に難しくなってしまうんです。
おわりに
私は今でも、エンジニアとしての案件、研究者としての実験や論文執筆、そして著述家としての本の執筆やブログ発信など、さまざまな活動を並行して進めています。通知をオフすることには多少のリスクはありますが、その分、「自分の創造性を最大限発揮できる時間」を確保できるメリットのほうが大きいと感じます。
もし「通知を切るなんて、仕事で怒られない?」「周りから冷たいと思われない?」と心配しているなら、まずは「一部の通知だけオフ」にするところから始めてみてください。実際にやってみると、「すぐ返信しなくても大丈夫なことって意外と多いんだな」と驚くかもしれません。そして、通知音が鳴らない静かな日々に慣れてくると、徐々に自分がやりたいことに集中できる時間が増え、心にもゆとりが生まれてきます。
通知を消した瞬間、自由を感じた。
この感覚は、私にとって小さな革命でした。“即レス”に疲れきっていたら、ほんの少しだけ、その束縛を手放してみませんか。通知音の鳴らない世界で、あなたが本来持っているペースと集中力を取り戻してみてください。もしかすると、それはあなたにとっても大きな気づきとなり、仕事や生活に新たな風を吹き込んでくれるかもしれません。
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