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 守宮(やもり)  [俳句・川柳]



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                  ひび割れし 壁を 四肢もて 押さへつつ




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 あっしが羽毛だったころ  [小説]

これは、あっしが前世で 羽毛だったころのお話でやす。
どこにでもあるような街の、どこにでもあるような駅に住む、どこにでもいる鳩の 胸の羽毛のひとひらだったころのお話でやす。
あっしは、ふわふわしてて ちっぽけで、そして、なんとなく 白に近い灰色をしておりやした。

ある夏の日、いつもの駅屋根の上での毛づくろいの拍子に、あっしは 鳩の身体を離れ、ふわ と舞いやした。
うもう.jpg何か 黒いものの上に、あっしの一部がぺたりと張り付きやした。
べったりてかてかと ひとすじの乱れも許さじと後ろに撫でつけられた 中年男の頭髪のてっぺんでやした。
中年男は、あっしが張り付いたことなど つゆ気づかず、眉間にしわを寄せ、口をへの字に結び、この暑いのにダブルの背広の しかもボタンをきっちり留めて、腹を突き出して歩いてゆきやした。

あっしは、一部がぺたりと固定されているものの、おおかたの部分は、ひらひらひらひらと 男の歩調に合いながら揺れやした。

「今月の決算報告!!」
あるビルの一室に入るや、中年男が、やや怒鳴るように 室じゅうに声を響かせやした。
羽毛3.jpgロの字に長テーブルが合わせられた室内は、まるでアルミニウムのように キーーーンと無機質な緊張感が張りつめきり、濃紺や黒のスーツの若い男女が、各々 ノート型パソコンを前に 背筋をまっすぐに 顔をこわばらせてやした。

空調の風が、中年男の頭のてっぺんのあっしを ひらひらひらひらと揺らしやした。
と・・・・
「くくっ・・・」 「くすっ」 「ふふふふ・・・・」
誰れからともなく 唇の内側にかすかなかすかな笑いが起こり、若い男女は、キーボードをチョコチョコッと打って目配せし合ったり、下を向いて肩を小さくふるわせたりしやした。
アルミニウムのような空気は、少ぅしだけ ほんの少ぅしだけ 柔らかなものに変わりやした。
中年男は「何がおかしいんだ?!」といった様子で ギョロリと一同を見渡しやしたが、すぐに席につき ハンカチで汗をひとぬぐいし、よりいっそう眉間にしわを寄せ パソコンを出しやした。

ふわふわしててちっぽけで なんとなく白に近い灰色のあっしは、ひらひらひらひらと揺れつづけやした。
あっしは、「羽毛に生まれてきて良かったなぁ」と 少ぅしだけ ほんのりと思いやした。

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 陽  [俳句・川柳]

               


               蜥蜴(とかげ)尾の 「し」といふ文字の舞踏かな




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 鞄にはハロルド・ピンター  [独り言]

ふらりと隣町。
古びたレストランを見つけ 扉を押してみる。

黄ばんだ白壁に ロンドン橋が霧にけぶる複製画、テーブルに ずんぐりした木製のソルト&ペッパー、カウンターには 残り少ないスコッチのボトル・・・・
奥には、ダムウェイター 料理昇降機が見えた。

オムライスを注文する。
待ちながら、雑誌 二冊ほどを読み終える。
運ばれてきたそれに 自分は 思わず噴き出さずにはいられなかった。
殆ど混ぜていないと一目で解る 白と黄のだんだらの卵焼きといい、卵焼きの下からはみ出す 朱いライスの左右非対称の具合といい、たよりなくにょろにょろと迷走するケチャップといい、どう見ても プロの料理人が作ったとは思えない姿の一皿だったからだ。

自分は、「もしかしたら ダムウェイターの下には二人の殺し屋が潜んでいて、オムライス作りも指令の一つと信じ、慣れぬ手つきで必死に仕上げたのだろうか?」と一人笑いころげながら スプーンを取った。

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 ギャラリー  [短歌]



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            海ひろぐ写真誉められ会釈せむ若き女はやや退(しぞ)きつつ




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 神田神保町・矢口書店  [映画・演劇雑記]

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各々の趣味に関する書物を求めて 古書店街・神田神保町に しばしば足を運ぶ人は多いだろう。
私の場合、目指すのは、靖国通り沿い・角地に ひときわ時代がかった面持ちでたたずむ矢口書店である。

矢口書店-------戯曲や映画鑑賞入門や商業映画のパンフレット、学校演劇づくりの教本から メソッド本、評論集、国内外の演劇史・映画史、朗読・アナウンスの基礎を説いたもの、月刊シナリオ イメージフォーラム誌などのバックナンバー、照明・音響・美術・メイクなど 様々なスタッフを志す人のための育成本、そして、書き込みのされている撮影台本までが、そろりそろりと歩を進み入らねば 雪崩をおこしかねない怒涛の冊数で 湿った息をひそめて待ちかまえている 映画・演劇を専門的にあつかう古書店である。

私はまず、外壁面の特価の棚からレジの前まで ベロリと舐めるように表紙を見まわる。
それから、「実験・前衛映画評論」のコーナーに来ると、ことさら念入りに 視線の舌を往復させる。
中でも私の最も尊敬する映像作家・松本俊夫氏の単著書との出逢いを期待しているのだ。
今春は、何年も前から探していた 氏の評論集「映像の探求=制度・越境・記号生成」を発見し、つい、「あっ! あったあったーー!!」と、店中に 歓喜の独白をこだまさせてしまった。

店のホームページから検索することもできるが、必ずしも ホームページ上の情報と在庫が常に一致している訳ではないそうなので、また、私は 出向いて 自らの足で目で探す という行為が好きなので、デジタルの羅針盤も用いながら、定期的に この 文字と写真で構成された映画と演劇の山深くに彷徨い入る。
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 梅雨明け  [俳句・川柳]


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                 笑みながら 渇く 屍(かばね)の 紫陽花や





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 もしも一日だけ違う人間になれるとしたら  [独り言]

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もしも一日だけ 自分以外の違う人間になれるとしたら------
私は、ボルゾイ犬を助手席に アルファロメオで ミラノの街なかを走り抜ける人になりたいとも、史上最大のピンクダイヤを落札して ネットニュースに 余裕の笑みをまきちらす人になりたいとも思わない。
「たくさん食べられる人」になりたい。
「食べたいものを食べたいだけ いくらでも食べられる胃袋の人」になりたい。

幼い頃から食が細く、フルコースや懐石料理のような 一つ一つ順に出てくるものは とても最後まで辿りつけず、一人で表で食べる時には、必然的に なるべく量の少ないものから選択することとなり、米や揚げ物のような腹にずっしりくる物は より少ししか食べられない。
そのくせ 食べることには人一倍目が無く、「どこどこの店の何を食べたい・・・」等という思いが しじゅう頭の中を去来している。

何でもどれだけでも食べられるとしたら------
先ず、脂身のいっぱいついたチャーシューのゴロゴロ入ったチャーハンの大盛りドームを つきくずしつつ わしわしとかきこんでみたい。
天ぷら屋のカウンターで、い並ぶ素材をかたっぱしから指さし、店の冷蔵庫をカラにしてみたい。
餃子の皿をテーブルいっぱいに並べて・・・・いや、いっそ、大皿からはみ出す特製巨大餃子の両端をよいしょと握り持ち がぶりとかじりついてみたい。

それから一時間後に、「完食者! ぼんぼちぼちぼちさん!!」と ラードでべったりの店の壁に でかでかと貼り出されてみたい。
ついでに、「この餃子、もう一粒!」と、たくさん食べられる人の世界の言語の助数詞でもって おかわりをしてみたい。
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 酔  [短歌]


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           金色のジョッキの底の我れ目覚め 駆けりては跳ね跳ねては廻り



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 自由律徘句・自由律短歌  [独り言]

私はこれまで、詩という領域のものでは、散文詩 短歌 歌詞形式の詩 無季語徘句を創ってきました。
そして今夏から、また新たに挑戦したいと考えているのが 自由律俳句と自由律短歌です。

文字通り、通常の五七五 五七五七七に収めない 徘句・短歌です。
これは単に、字たらずや字あまりの句や歌ということではありません。
また、極端に短い散文詩 というのとも違います。
各々の作品に 独自の律を内包した オリジナリティーの強い 徘句・短歌です。
ですから、歌詞形式の詩の短いもの といったニュアンスが むしろ近いかも知れません。

じゆうりつ2.jpg何故、自由律の句や歌を創ろうと思いたったか------
それは、私の創りたい句や歌の中には 独自の律に乗せたほうが 言はむとしていることが最大限に伝わるものがある-------宝石でいうと、ブリリアントやオーバルではなく 呼び名もないオリジナルのカットをほどこすのが最もその個性を引き出せるものがある-----と 気づかされたからです。

通常の句や歌は、規定の律に収めることで 光を増し、その作品世界が広がります。
けれどそれは、全ての作品にあてはまるわけではありません。
五七五・五七五七七にはめ込んでしまうことで 逆に輝きが閉ざされてしまう場合もあります。
それならば、そういう原石は、自由律で最大限の反射率にもっていこう------と 思い立ったわけです。
じゆうりつ3.jpg何故なら、私は、律を守るために俳句や短歌を創っているのではなく、七五は 作品研磨の方法の一つに過ぎない と考えるからです。

また、自由律で、徘句と短歌の区別はどうやってつけてゆくのか、という点に関しては------
決して、単に 十七音に近い字数の作品を 徘句、三十一音に近いものを 短歌、と 分けてゆくつもりはありません。
映像でいうワンショット的なイメージ つまり徘句的なものを前者、長めのショット あるいはワンシーンに相当する 短歌のニュアンスのものを後者と、あくまで その作品が どちらの世界観に近いかで 決めようと思っています。

未熟なりに 我が内にどんな律を発見できるか、夏休み直前の少年のように 高鳴る鼓動をおさえきれない夏初めです。


タグ:短歌 徘句
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