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理工系学部の大学入試で、女子学生を増やすための「女子枠」を設置する動きが広がっている。背景には理系分野におけるジェンダーバランスの不均衡があるが、男子学生にとっては「逆差別」と映る可能性も。女子枠はなぜ必要なのか。背景と今後の課題を探った。
文部科学省によると、今春入学者の国公立大入試で理工系学部に女子枠を設けた大学は30校で、前年の14校から2倍以上に増えた。統合で昨年10月に発足した東京科学大もその一つ。昨年4月入学の入試から総合型選抜と学校推薦型選抜で導入し、今春入学分では旧東京工業大の学部の女子枠を、58人から149人へと大きく広げた。
「多様性がイノベーション(革新)に結びつくことは明らかなのに、日本の理工系大学のジェンダーバランスは何十年も偏ったまま。今変えなければ世界から取り残されるという危機感があった」。東京科学大副学長の関口秀俊さんは導入の理由をこう語る。
旧東工大では女子寮の整備や女子高生向けのイベントなどあの手この手で女子学生を増やす努力をしてきたが、2020年代に入っても比率は13%と低迷。「女子は理系が苦手といったアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が根強く、啓発活動では不十分だった」(関口さん)
女子枠の導入により今春からは女子学生の比率が20%を超える見込みで、女性専用のリフレッシュルームの設置やキャンパス内の照明を明るくするなど女性向けの環境整備も加速したという。

一方、女性だけを優遇するのは「逆差別だ」との声にはどう応えるか。東京科学大理事の井村順一さんは「社会のどこかにひずみがあり、その原因が男性がげたを履かされていたことにあるなら脱いでいただかないといけない。それが女子枠の考え方」だと説く。

女子枠のような仕組みなしに男女比の偏りは是正されないのだろうか。「女性比率が極端に低いこと自体が女性が増えない要因になる。ロールモデルがいないことや、女性の声が反映されないために環境整備が遅れることで悪循環が生まれる」と説明するのは、「教育にひそむジェンダー」の著者で、東京大准教授の中野円佳さんだ。
女子枠について「数的な構造を変えるため、どこかの段階で『介入』は必要」と一定の評価をした上で、「そもそもは、進路を決めるまでの間に女性だけが否定的な言葉を浴びるなどのジェンダーバイアスが問題。大学の存続や発展のためという理由ではなく、女性が自身の進路を自由に選べる社会を目指すべきだ」と話している。
(共同通信)
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