「…にしても、俺に続いてベルの担当か…愚弟が迷惑をかけてないか?」
「い、いえ。問題ないです……むしろ、優秀過ぎてサポートの余地が無かった貴方よりやり甲斐がありますね。貴方の弟と聞いた時と、ロキ・ファミリアでは無く、新興のヘスティア・ファミリアに入った時は驚きましたが…」
「家の門番が文字通り門前払いだそうだ…俺の名前を出さなかったらしい…まあ、そこはいい。で、話ってのは?」
「はい、ベル君のことで…失礼、クラネル氏…いえ、どう呼べば…えっと」
「いいよベルで。敬語で話す必要も無い」
エイナとはオラリオに来てから長い付き合いだ。当時はまだロキ・ファミリアでは後進育成に力を入れていなかったので、今こそ新人にはリヴェリアが教えていたりするが、ダンジョン内についての勉強などは俺はエイナから学んだ。
「…分かったよ、レイ君。えっと、ベル君の事なんだけど、最近急速にステイタスが上がったのは知ってる?」
「…ああ、到達階層をどんどん増やしてるらしいな。まだ1ヶ月だっけか?」
「うん…君と同じで凄いスピードでステイタスが上がってるみたい。それで、他ファミリアのサポーターを雇ったみたいなんだけど…ソーマ・ファミリアの人何だよね…ほら、あそこって結構大きいけど…その、よく問題を起こしてる人が多いじゃない?」
「…ああ。あそこはちょっと特殊だしな…噂だと、団員は主神の造る酒を目当てに金稼ぎで必死らしい」
実際はその他の事情も知っているが、あまり強く忠告するとベルにリリルカと離れるように忠告されてしまうかも知れないので、程々に。
「…お酒」
「そんで、話ってのはベルが騙されてそうだったら助けて上げてとかそんなところか?」
「う、うん。ほら、ベル君凄く純粋だから…」
「…まあ、そういう所も俺が多少は教育してあるから、大丈夫だと思うぞ?」
「へぇ…でも不安だなぁ…」
「…まあ、気にする様にしとく」
レイはそう言って部屋を後にする。
「うん、忙しい中ありがとう。私も、少しソーマ・ファミリアについて調べてみる」
エイナはそう言うと、レイに手を振った。
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「…何の用だ?」
「……気付いていたか」
周囲に人が居ない道を選び、少し声を出して着けていた人間を誘き出す。
「オッタル、いくら気配を消せてもそのデカい図体はどうしようもないぞ?」
「ム…」
「冗談だ。俺対策で声を完全に断つのは良いが…流石にずっと追われてれば気が付く」
ギルドから出て、ホームに出る予定であったが、帰路の途中で着けられていることに気が付き、あえて人気のない場所に出た。
「今オラリオで唯一俺を倒し得る男が、本当に何の用だ?」
「貴様の弟の件だ。我らが女神より、聞きたい要件があるとの事だ」
「何で伝言役にお前なんだよ…護衛はどうした。」
「…貴様の弟に、フレイヤ様が執心しているのを知るのは、今は俺だけだ。」
「敵対派閥の中でも幹部…それも両者Lv7が接触なんて、オラリオ中大騒ぎだぞ。遂にオラリオ最強の座を巡って雌雄を決するのか?ってな」
「なればこそ、機会を伺っていただけのことだ」
「……折角だし、少し遊ぶか?オッタル」
オッタルも俺も、万全の装備では無い。であればこそ、お遊びで済む領域の勝負も可能だろう。
「…本気か?」
「聞きたいことは、今のベルの周囲のことか?全くずっと見てんのかよ…ほっとけ、と言うのが俺の返答だ。あれくらい自力で解決する」
「お見通しか…良いだろう。一撃を成した方の勝ちとしよう!」
レイは腰に提げた
俺はダンジョン帰り、オッタルも俺と会うだけあってそれなりに業物や防具を身につけてきたようだ。
お互い主兵装ではないが、手合わせには十分。
「フッ!」
神速とも見間違う斬撃に、オッタルは瞬時に大剣を盾に受け止め、弾く。
少しのけ反ったこちらを、斬り払うように大剣を振るう。
「“響け”」
高く跳躍することで回避し、その隙を突かれないように瞬時に
近くの壁を蹴って加速、そのまま斬りかかると見せ掛けて真横を通過。
背後を取って斬撃を放った。
しかしオッタルは超反応で正確に剣を弾く。超高速のフェイントにすら反応を違えず、受け止め切る。最高峰のステイタスにあぐらをかかず、ひたすらに磨かれた技量による正確無比な防御と反撃…頂点と呼ばれるたる所以。
「ッ、“響け”!」
再び
瞬時に大剣を振り下ろしてきたオッタル。レイはその攻撃を剣で受け止めた…しかし大剣と長剣、打ち合えば有利なのは決まっている。
剣が耐えられないと判断したレイは、刃を滑らすように受け流し、勢いのまま大剣を地面に叩きつけたオッタルの隙を見逃さずに返しの刃を振るおうとした…が、オッタルがいつの間にか大剣から離していた左手を伸ばしているのに気が付き、瞬時に距離を取った。
「技量も前とは比べ物にならんな。やはり貴様の成長は目覚しい」
「お前も、強くなってて何よりだ。張り合いが無くなるからな…っと、人が集まってくる、解散だな」
「ム…残念だな」
「まあ、所詮お遊びだ。熱くなる前に解散だ…フレイヤに伝えておけよ?」
「無論だ」
そうしてレイとオッタルは各々、人目につかぬように帰って行った。