後に暗黒期と呼ばれる事となる時
ヘカテー・ファミリアのホームと女神ガイアが運営する孤児院*1とを繋ぐ、一部の者しか知らない地下通路*2の中に在る一室にて
「ガイア、この者がそうですか?」
「ああ、二日前に私の所の孤児を唆そうとしていた不埒者さ」
私とガイアの視線の先には、椅子に縛られて固定され、口枷と目隠しを付けられた
「孤児達からこんな事を言われたと相談されたから発覚したが、ふざけた話しだよ」
「死んだ家族に再会する方法が有る………でしたか」
「生者が死者と会う方法は無い、再会なんて真っ当に死んだ時だけだよ、生まれ変わる先を決める魂の選別をしている神も居ないしね」
「私みたいに死者の魂が見えるならば兎も角、それ以外の人は無理ですよね、私でも死にたてで魂が現世に居る時限定ですし」
「つまり、孤児達に
私達の会話を聞いて何かを言いたげにしていたので、目隠しと口枷を外す
「はぁはぁ…………お前ら何を根拠に言ってやがる、こっちはいきなり言い掛かりで捕らえられてんだよ」
口枷を外してやった途端、元気に敵意剥き出しで吠えてくる
「言い掛かり……ですか」
「言い掛かり……ねぇ」
二人でそう呟き、ガイアが呆れながら私の方を見てくるので頷き、水晶型の魔導具を取り出して指を鳴らす
水晶が光り、神々が中継に使う【神の鏡】の様な物が男性の前に出現し、映し出されるのは第三者視点でこの男が孤児達を唆して丸め込もうとする映像、それも複数箇所からの物だ、姿が分かるだけでなく言葉もはっきりと聞こえている
「悪いですね、ヘカテーとガイアの両ファミリア周辺にはあらゆる場所に魔導具を設置していて、この通り、その周辺での出来事を記録して保存してるんですよ」
「は?………えっ…………嘘だろ…………」
文字通りの動かぬ証拠、言い逃れが出来る余地が一切ない、完全なる証拠だ
「現状はヘカテー・ファミリアの独占技術で、他には一切伝えとらんし、眷属にも秘密にするよう厳命しておる」
「何を企んでいるのか話してもらいましょうか」
「拷問でもする気かよ、正義のファミリア様が聞いて呆れるぜ」
兎人族の男がそう吐き捨てるが、私とガイアは首を傾げる
「私達が正義のファミリア…………ですか?」
「誰がそんな事を言ったんじゃ?」
私達の言葉を聞いて、男が『えっ』と驚く
「私達が正義を掲げたことなんて、ただの一度だって無いですよ」
「アストレア・ファミリアの事と勘違いしとらんか?」
「正義も大義も掲げた事なんて無い、やりたい事をやりたいように、好き勝手しているファミリアですよ」
「正義なんてそんな面倒臭い物を、好き好んで掲げるのはアストレアみたいな正義感が強い物好きぐらいだよ、少なくとも、私はそんなもんどうでも良い」
私達の言葉を聞いて、男は絶句している、正義のファミリアなんて、どう勘違いすればそうなるんだろ?
「あぁ、正義は掲げてないですが、嫌いな物が腐れ外道なので、何度か叩き潰した事は有りますね」
「そう言えばそんな事もあったな」
「たかがそんな程度の事で正義のファミリア扱いって………………理解に苦しみますね」
私はそう言ってため息を付いて、首を横に振る
「なので、私達はこんな手段も普通に使います、二人とも、入って来て良いですよ」
私の言葉を聞いて、部屋の外に待機していた二人が入って来る
銀髪の少年と銀髪の少女の双子の兄妹だ、まぁ兄なのか姉なのか、当人達も理解していないのだが、互いを『兄様』『姉様』呼びだし
「この子達は私達が保護した、子供の殺し屋兄妹のヘンゼルとグレーテル*3です」
「孤児だった所を
と、私は親切にも2人の紹介をしてあげる、途中から顔を青褪めさせていたけど、なんでかな?(すっとぼけ)
「私達の元で普通の子供としての生活も楽しんでくれているのですが、それでも、先ほど言った価値観や、境遇のせいで殺人欲求を持ってしまっていて、出来るだけ我慢してもらったり、モンスター相手に発散してもらってるんですがね」
話している私の背後で、2人は楽しげにペンチや、釘とハンマーを取り出して男に見せ付けている、他にも近くのテーブルに次々と出て来る『拷問器具』の数々に、男は顔を引き攣らせて、過呼吸気味になっているし、必死に逃げようとしているが逃げられない
「お姉様、もう良いかしら?」
「お姉様、もう良いかな?」
2人が楽しげに笑いながら尋ねてくる
「何を企んでいたのか、ソレだけは吐かせたら好きにして良いですよ、エリクサーも3本までなら使って良いですが、自費で買った分が有るなら、ダンジョン探索に困らない程度には使っても良いですよ」
「「は~い」」
私の言葉に二人は素直に返事をする
後は2人に任せて私とガイアは、部屋を出て行く、早速爪を剥がしたようだ、暫くは今回のゴミの処理で満足してくれれば良いんだけど
20分後
執務室で書類処理をしている中、電話の機能を再現した魔導具に、尋問を任せた2人からの連絡が入った
『もしもしお姉様』
「グレーテルですか、情報を吐かせる事が出来ましたか?」
『ええ、なんでも鬱陶しいガネーシャやアストレアの眷属を殺すためらしいわ、孤児を保護した眷属を、孤児っていう爆弾で爆殺する、それに成功すれば大切な人と転生後に再会できるって言いくるめてるらしいわ、それで、作戦決行日は今日よ』
「仕事が出来る良い子達ですね、分かりました、ソレは好きに使い潰して構いません」
『分かったわ』
嬉しそうな返事を聞いてから通話を切る
「ガネーシャとアストレアの眷属狙いですか、それも今日に」
窓を開けて遠隔視と透視を発動し、ガネーシャ・ファミリア団長とアストレア・ファミリアの団長の姿を、魂の気配や魔力の波長を頼りにオラリオ全域から探し出す
そして見つけ出す、何処かの通路を走っているガネーシャ・ファミリアの面々の姿、その進行方向には【殺帝】と呼ばれる下品な女と、その配下と思わしき者達と、数人の孤児の姿があった
そして、孤児達の服の中に【火炎石】が有る事を見通す
「流石に距離が有りすぎて、今から行っても間に合わないですね」
仕方が無い、そう呟いて、部屋の中に在る弓立から梓弓を取り、矢が入った矢筒を窓の近くに持ってくる
「会敵しましたか」
ガネーシャ・ファミリアの面々が
「まず一射」
梓弓を用いた霊術の一つ、『顕現する破魔の矢』を用いて矢を放つ
放たれた矢は少し飛ぶと消え失せ、アーディに歩み寄っている孤児の目の前の床に矢が突き刺さる
床を砕く程の力で突き刺さった矢に孤児は驚き歩みを止める
孤児だけでなく、その場に居る全員が、突如として現れた矢に驚愕して動きを止める、戦闘者にはその矢の角度からして、その矢は『天井をすり抜けて』射ち込まれた物だと分かったからだ
「次は連射」
その隙を付いて、今度は威力を抑えた『顕現する破魔の矢』を連射する
放たれた矢は転移し、アーディの近くに居る孤児だけでなく、その場に居る全ての孤児に向かって矢は飛び、服を浅く切り裂き、身体に固定していた『火炎石』を縛る縄を断裂させて、孤児達の服の中から『火炎石』がずり落ちていく
「トドメ、ゲス………お前は死ね」
今度の矢は威力を抑えること無く放ち、霊術『顕現する破魔の矢』によって矢は空間転移し、周囲を警戒していた【殺帝】ヴァレッタ・グレーデの眼前に出現し、その胸のど真ん中を射ち貫き、胸部が丸々吹き飛ぶほどの風穴を開け、確実にヴァレッタ・グレーデの命を奪い、念の為に放った二射目で頭部を矢で撃ち抜く、蘇生レベルの回復魔法を使っても絶対に治療不可能になる様にする為の、念押しだ
その後は、ガネーシャ・ファミリアの面々は、天井に仕掛けられた火炎石の爆発によって崩落する通路からも、孤児達を抱えて危なげなく脱出していた
数本の矢を拾う余裕も会ったみたいだから、後で来るかな?
ヘンゼルとグレーテルの所に向かうと、大変満足そうに笑っていたので、頭を撫でておく、2人は嬉しそうに撫でられた後、地下通路から出てガイア・ファミリアのホームへと向かった、それを見届けた後
惨殺されている兎人族の男に『リカーム』を発動して蘇生させ、死の淵から蘇った事にすら気付かない程に精神が壊れているのを確認し、念の為に魔力を撃ち込んで脳機能の一部を破壊して、万が一にも自我が復活しないように処置を施し、適当に身体にアザを幾つか作ってから、『ポイズマ』を発動して魔法の毒で毒殺する
回収した矢だけを頼りに調べ上げて、その矢が私が使っている物だと突き止めたガネーシャ・ファミリアの団長、シャクティ・ヴァルマが4時間後に訪れたので
ガイアが運営する孤児院の孤児達を誑かしていた者が二日前に居たこと、その男を今日見付け出して確保し、尋問したら今日の作戦でガネーシャやアストレアの眷属を孤児を爆弾にして殺す計画だったと発覚したので、空間転移する矢で援護射撃を行い、発案者の【殺帝】ヴァレッタ・グレーデを確実に殺したと伝えた、改心の余地が一切無いから、被害が拡大する前に確実に仕留めただけだと伝える
下手人の男は事前に毒でも飲んでいたのか、尋問中に死んだと伝え、死体を引き渡した
後でディアンケヒト・ファミリアの者の手で検死が行われ、暴行の跡は有るが死に至る危険がある物は一切無く、毒による死だが、普通の毒ではなく、
転移矢に関しては騒がれたが、オラリオの状況が状況なので長くは続かなかった、神の前で『極まった弓の業です』と言い切り、嘘ではないと神に判別させたのも理由だが
【悪神】エレボスが半ば精神崩壊気味のLv9を連れて絶対悪と名乗り暴れたが、8年近く戦いから遠ざかり、無くした腕の片方を、利き腕だけを義手で補い、身体は衰え、技は鈍り、精神は異常をきたしていると、弱体化が激しかったので、戦う度に相手を叩き潰していたが、何度目かの戦闘時に、闇派閥の幹部と戦っていた者以外の者
オッタル、ガレス、リヴェリア、アイズ、アストレア・ファミリアの面々といった者達による総力戦で辛うじて撃破に成功している
「Lv9の私ですら黒竜には何も出来ずにこの有り様だ、黒竜の恐怖を知らない貴様達が、私にすら勝てぬ有り様では、黒竜には絶対に勝つことは出来ない」
などと、半狂乱な様子であり、弱体化していてもLv9の能力をオラリオに見せ付け、それを容易く打倒した黒竜の力をオラリオに知らしめた
その時と言うか、暗黒期の大半を、ヘカテー・ファミリア団長の【大御巫】鏑木紫は
『300歳超えのお婆ちゃんに頼り切らないとオラリオの治安維持すらまともに出来ないんですか?頼り甲斐の無い若人達ですね、そんなに言うなら動いても良いですよ』
『自分達では治安維持すら満足に出来ないから、お婆ちゃんの力を貸して下さいって言っているんですよね?』
といった、挑発で発破をかけて、若者を張り切らせていた