人生3周目とか聞いてないけど、頑張って生き抜こう


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作:ディストピア
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ゼウスとヘラのオラリオ追放


 

 

ゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアが黒竜に敗北し、ロキとフレイヤが共謀してオラリオから追い出した、その数時間後のオラリオの外にて

 

 

 

オラリオから離れるように移動する一団、ゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアの進行方向上に、小さな人影が二つ在った

 

 

「やっと来ましたか、先回りしすぎましたかね?」

 

そう私は声を掛けながら近付いていく

 

 

「お前は【大御巫(おおみかんなぎ)】、何故此処に居る」

 

「何故って、敗残兵な貴方達に会うためですよ」

 

先頭に居た馬車の中から出て来た女神ヘラの問い掛けに、私はそう返す

 

 

「黒竜に返り討ちに遭っただけあって、生き残りも重傷者ばかりですね」

 

「【大御巫】を伴い儂等を笑いに来たのか、ヘカテーよ」

 

「いいえ、貴方方に死なれるのも困るからと、紫が言うから来ただけです」

 

 

「彼女が?」

 

持った錫杖に金属製の蛇を巻き付かせているヘカテーと相対しているゼウスが私に視線を向けるが気にしない

 

 

「まずは………と、『優しき癒しの風よ、傷付き倒れし者達に、癒しの祝福を与えよ』【ヒール・ウィンド】」

 

長く生きた中で解析して習得した広域回復魔法を発動して*1、ゼウスとヘラの両ファミリアの重症者を一気に治療する

 

 

「これで良し」

 

私が発動した回復魔法で、潰れていた目が、千切れかけていた手足が、内臓にまで届いていた傷が、その全てが癒やされて健康体にまで回復していた

 

失われていた手足はそのままではあるが

 

 

「次は…………【暴食】のザルドさんに、【静寂】のアルフィアさんとその妹のメーテリアさんは何処ですか〜?」

 

私のその言葉を聞き、3人の人間が困惑しながらも近付いてきた*2

 

「俺達の傷を治してくれた事には感謝するが、いったい俺達に何のようだ?」

 

「無駄な事は言わずに、要件だけを言え」

 

「私達に何のようでしょうか?」

 

3人の疑問も当然の事だが、格上相手にもアルフィアは偉そうな物言いなんだな〜……と思いつつ、疑問に答える

 

 

「さっきと同じ、治療ですよ」

 

私の言葉を聞き、は?と疑問に思う3人

 

 

「ザルドさんはちょっと乱暴に行きますね」

 

そう言ってザルドの右腕を左手で掴み、取り出したアゾット剣*3でザルドの手首を骨が見える程に切りつけ、アゾット剣を逆手に持って宝玉から治癒魔法の光を放出しながら心臓付近に翳し、翳したまま心臓付近から肩へ、肩から上腕へ、上腕から傷口までアゾット剣を移動させる

 

 

痛みに耐えながらザルドが疑問に思い、口を開こうとすると、手首の傷口の血が激しく泡立ち、流れていた赤い血と共に『毒々しい紫色の液体』が傷口から噴き出し、噴き出した紫色の液体は地面に落ちると、大地と草を腐食させている

 

 

10秒近く噴き出し続けた紫色の液体が出なくなると傷を癒やして塞ぎ、ザルドの全身を浄化の光で照らしてから手を離す

 

 

「体内に残留していたベヒモスの毒は全部体外に排出した上で浄化しましたから、コレで本当に健康体ですよ」

 

私のその言葉を聞き、ザルドの身体を蝕む【ベヒモスの毒】の事を知っていた全ての者が一瞬固まり、ザルドを一斉に見る

 

 

「マジか、嘘のように身体が軽い、本当にベヒモスの毒から解放されたのか」

 

そのザルド自身も、健康体となり、軽くなった身体に驚愕している中、アルフィアとメーテリアの2人に近付く

 

 

「次は2人の病気の治療をしますね」

 

「…………馬鹿を言うな、私達の病気はそんな簡単に治せるような物ではない」

 

「治せなかったら腕の一本や二本斬らせても構いませんよ、後で治しますけど」

 

自然体でそう言い切る私に言葉に詰まるアルフィア

 

 

「えっと……紫さん、一つ良いですか?」

 

「良いですよメーテリアさん、まぁ聞きたい事は分かっているので先に答えますが、今迄治そうとすらしなかったのは、頼まれなかったからですね、出来ると思われていなかったから話しを私に持ってきていなかったので、今迄私も動かなかった、これから先会う事があるか分からないのでお節介ながらも治療すると決めた、それが理由です」

 

 

「頼まれなかったからしなかったけれど、見殺しにするのも心苦しいから治療する、分かりやすいですね」

 

苦笑しているが優しげに微笑むメーテリア

 

 

「治せる確証を得る為に、先にアルフィアが治療されますか?それとも同時に?」

 

 

「貴様は、本当に…………治せるのか、ならばメーテリアだけでも治してくれ」

 

疑いながらも、最愛の妹を病から解放できる、アルフィアはその可能性に手を伸ばす

 

 

「いや……………2人とも治せますよ、何度か至近距離で2人をこの目ではっきり見ましたから、治せる確証も得てましたし」

 

この期に及んで妹を優先する姿勢に、少し呆れながらも、そう断言する

 

 

「【大御巫】よ、カブラギ・紫よ、この2人を本当に治せるならば治してほしい、このとおりだ」

 

話を聞いていた女神ヘラが、普段の尊大さを捨てて、頭を下げて頼んでくる、その姿を見ただけで来たかいがあったと思う

 

 

普段のアレ具合を知っている者達も息を呑む、2人を治すために奔走している事は知っていたが、敵愾心を抱いていた相手にすら迷わず頭を下げるほどに2人を大切に思っていた、それが良く分かる行いだ

 

 

「じゃあ私の方を向いて2人並んで立っていてください、ちょっと血を吐くかもしれませんが、悪い物を血と共に吐き出させてるだけなので」

 

「分かった」

「分かりました」

 

私の言葉を聞き、2人も頷く

 

 

「では…………始めます」

 

私が2人に向かってアゾット剣の宝玉を翳す、翳したアゾット剣から強く激しくも温かく清らかな光が放たれて2人を照らす

 

 

照らされた2人の身体から黒い靄のような物が身体から離れるように噴き出し始める、そして、2人が大きく咳き込み、大量の赤黒い血を吐き出す

 

 

 

吐き出された赤黒い血が、私の放つ光に照らされると蒸発する様に黒い靄へと姿を変え、そのまま散って霧散し、赤い血だけが残る

 

 

 

「終わりましたよ」

 

 

「「えっ」」

 

私の言葉にアルフィアとメーテリアの2人が呆ける、もっと時間が掛かる、そう思っていたのが良く分かる

 

 

「確かに、全身に鉛を纏っていたかのような重みが消えて体が軽い、それに力が湧いてくるかのようだ」

 

「身体がこんなに軽いのは初めてな気がします、本当に治ったのですね」

 

感覚の鈍さや重みが消えた身体の調子を確認するように、手を握って開いたり、身体のあちこちを触ったり、深呼吸を行う2人

 

 

見るからに活力が増した2人の姿に、ヘラが静かに涙を流して喜ぶ

 

 

「治療感謝するが、【大御巫】よ、お主のそれは病に特化した回復魔法…………ではないな、魔法技術を応用しているのは間違いないが…………いったい」

 

 

ゼウスがそう問いかけてくる

 

 

「極東の考え方の一つですね、人が病気になるのは『病魔』と言う『呪い(カース)』に近い力が人に悪さをしているからだ、だから『病魔』を祓い・浄化し・身体を浄めれば病が治る…………と、その考えを実現しているだけですよ」

 

 

「極東の考え方か、確かに儂等には無縁故にその発想は出てこぬか」

 

「極東は発想や価値観が独特だったりしますが、このような事も出来るのですね」

 

私の言葉にゼウスが笑いながら納得し、ヘラも涙を拭いながら納得する

 

 

「極東出身者だからといって誰でも出来ることじゃないですけどね、『病魔』に対する考え方を実現できるのが私だったってだけで」

 

「この治療法が一般的であればそれはそれで面白いがの、机上の空論に近い物を、実践できる力と技術がお主には有ったという事か」

 

 

「極東の神々が貴女の存在を誇らしげにしているのには相応の理由があったのですね、強いということ以外の理由が」

 

ゼウスとヘラの言葉に笑顔を返す

 

 

「まぁ極東の神の眷属ではない事は嘆かれてますがね、極東の神の眷属だったならば名実共に極東の誇りだったのに…………とよく言われますし」

 

極東の誇りだと言って、極東のお酒やお米等の物資を融通してくれるのは嬉しいが、顔を合わせる度に挨拶のように言われるのには少しうんざりしている

 

 

「身体は健康体になったと言っても、先程まで病に蝕まれて衰弱していたのには変わりないので、体力が低かったり、内臓が弱っていたりと、虚弱体質な状態かもしれないので、その辺は気を付けてください」

 

 

「病で弱った身体はそのままという事か、流石に病気が治った瞬間から万全な健康体に成る程都合良くはいかないか、当然の話だがな」

 

 

「ですが、病が治って寿命が延びたのは間違いないですね、子供を授かっても問題無いかもしれませんし」

「子供だと!! 誰が相手だ!!」

 

メーテリアの言葉に即座に反応するアルフィア、そんな姉の姿に一瞬固まるメーテリア

 

「もしも……の話ですよ、お姉様」

 

「そうか、もしもの話か、ビックリさせるな、だが、健康体になったのならば相手が居れば子を授かる余裕も出来たという事だな」

 

そう言って頷き納得するアルフィア、その姿を見て微笑むメーテリア*4

 

 

それを離れた場所から、けれど言葉が聞こえる位置に居るゼウス・ファミリアに所属する一人の男が顔を青ざめさせて冷や汗を流している事には誰も気付かなかった

 

 

 

しかし、紫だけはそんな挙動不審になっている『赤目の男』を視界の端に捉えていた

 

 

 

「しかし【大御巫】よ、Lv12もの力を持ちながら何故儂等に協力して黒竜と戦わなんだ」

 

「それを聞いちゃいますか、現状を考えれば理解できる事だと思いますが、言われたいのですか?」

 

ゼウスからの言葉へ返答した私の言葉を聞いて一瞬呆けるゼウスとヘラ、しかし、数秒もすれば苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる

 

 

 

「ゼウスのLv8のマキシム、私の所のLv9のレグナイトですら、まともな戦力にならず敗走している…………それが理由か」

 

悔しげに口元を歪ませながらも答えにしっかり行き着いたヘラに頷く、ゼウスも落ち込んだ様に顔を伏せている為に、同じタイミングで同じ答えに行き着いたのだろう

 

 

「Lv8や9程度(・・)では黒竜相手にするには脆弱過ぎる、貴方達と今回協力して戦ったとしても、私が単独(・・)で戦うのと何ら変わらない状況になると分かりきっていた、それが答えです」

 

ゼウスとヘラを、その奥に居るファミリアを真っ直ぐに見ながら断言する

 

 

その私の言葉を聞き、多くの者が項垂れる、事実であると、自分達の今の状況が証明しているから、否定できる要素が一切無いことが理解できてしまう

 

 

「忠告すらしなかったのは、戦いもせずに戦力外通告されても信じなかったと、ベヒモスとリヴァイアサンの討伐に成功し、勢いがある状態でそんな事を言われても、プライドが邪魔をして絶対に聞き入れないと、分かりきっていたからですね」

 

そう言い切る私の言葉に誰一人として反論できない、間違いなくソレは事実だからだ

 

 

「黒竜と1回戦った程度で心折れるならば、そもそも戦力として期待出来ない…………というのもありますよ」

 

己の眷属が用があるとゼウスに返答してから無言を貫いていたヘカテーが口を開く

 

 

 

「公にしていないだけで、紫は何度か黒竜と小競り合いをしています、封印の中の黒竜の力を弱らせる為ですが、それでも300年の間に何度も戦っています」

 

自分達がほぼ何も出来ずに壊滅した相手と何度も戦っている、その上で五体満足だと言われ、誰もが息を呑む

 

 

「黒竜の力を知っている、それでも尚心折れずに立ち上がれる者、己を奮い立たせる事が出来る者、レベル以前にソレこそが黒竜と戦う上での最低条件(・・・・)だと私は思っています」

 

私はヘカテーから引き継ぐ様に言葉を口にして、ゼウスとヘラのファミリアの人員を見詰める

 

 

「レベルが高くとも、心が折れて、悲鳴を上げて逃げだしたレグナイトはその最低条件すら満たせなかったという事か」

 

 

吐き捨てる様に、そう口にするのはアルフィアだ

 

 

そんな中、一人の隻腕となった男が近付いてくる

 

「【大御巫】よ、カブラギ・紫よ、貴女の力が有れば、もしや…………俺のこの失った腕もどうにか出来るのか」

 

「ゼウス・ファミリア団長マキシムですね、何故そう思うのですか?」

 

「俺達は確かに黒竜に何も出来ずに叩き潰されて敗走した、だが、それでも言えることが一つ有る」

 

そこまで言って真っ直ぐに私を見詰めるマキシム

 

 

「あの黒竜と何度も戦いながらも、五体満足で居られる筈がない、だが貴女は五体満足だ、だが、失った手足を治せるならば理解出来る」

 

マキシムの力強く断言したその言葉を聞き、誰もが私を見る

 

 

 

その視線を無視して私はマキシムの包帯が巻かれた失った腕に触れて魔法を発動する

 

 

「答えは、正解です」

 

私が発動した魔法によって失われていたマキシムの腕が元に戻ったのを見て誰もが絶句する、絶句しながらも多くの者が縋るように見てくる

 

 

「余命僅かだと思っていたが、傷だけでなく腕まで治るとは、今迄思っても居なかったな」

 

ハハッと、生えて来た腕を叩きながら豪快に笑うマキシム

 

 

 

「気付かなければ放置でしたが、マキシムが気付いたので希望者は手足を再生させますから、人の手を借りてでも並んでください」

 

 

私のその言葉を聞いて、手足を失っていた者全員が並んだのは言うまでもない

 

 

 

治療が終わってからゼウスとヘラの両ファミリア人員を見渡して口を開く

 

「辺境に追いやられようとも技術を高めることは出来るはずです、後継者を育てることも出来ます、10年か20年かは分かりませんが、次代の英雄候補が育つその時まで現役を維持していたならば、後継者を育成できていたならば、ソレは黒竜を討つ力となります」

 

 

だから頑張ってください、そう締めくくって別れ、ヘカテーと共に見送った

 

 

 

 

別れ際に、眷属を先に行かせたゼウスとヘラに話し掛けられた

 

 

「【大御巫】よ、そなたならば『神の火』を、オリンピアの『原初の火』の問題も解決できるやもしれん」

「あっソレは無理です」

 

オリンピアの『原初の火』の問題を然りげ無く押し付けてきそうになっていたゼウスの言葉を速攻で否定する

 

 

「遠隔視でオリンピアの『原初の火』を見て解析しましたけど、アレ…………私が関わると駄目なヤツです、最悪全能状態の神が顕現するに等しい事態になります、絶対に下界は灼き尽くされて滅びますから、関われません」

 

 

「何故そう言い切れる」

 

「紫は神の力を、制限を受けていない状態の上位神の力を理解しています、理解しているからこそ、相対する者の『恐れ』を具現化する力を得てしまった『原初の火』には関われないのです」

 

 

「あ〜〜………………ソレは確かに無理じゃな」

 

 

「最悪は【破壊神】シヴァや【雷神】インドラ、テュポーンとかが暴走状態で具現化しちゃいますからね」

 

ゼウスが考えていた最悪を、遥かに上回る最悪を口にすると、ゼウスとヘラが絶句する

 

 

何故テュポーンの事を知っているのかという疑問も有るが、それでも大神クラスが暴走状態で顕現する危険性なぞ想像の外だったのだ

 

 

「「関わるな、そなたは絶対に関わるな!!!!」」

 

 

本気で念押しされた後、本当に別れた

 

 

 

ヘカテーと共にオラリオに帰還する

 

 

 

ついでに、ヘカテーの持つ錫杖に巻き付いている金属製の蛇の目は魔道具で、蛇の視点で対となっている魔道具から投影される映像をガイアはオラリオで観ながら笑っていた

 

 

*1
まぁこの程度なら古代魔法枠で自作できますが

*2
アルフィアとメーテリアは馬車の中にヘラと一緒に居た、つまり目の前

*3
短剣が付いた杖

杖が付いた短剣ではない

*4
何かを隠しながら




鏑木紫的に、具現化する最低最悪の相手は暴走状態のショタおじである

ショタおじの得意属性が火炎なので相性が良く、その可能性が有る時点で関わりたくない案件である

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