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サンリオ「クロミ」著作権侵害訴訟について現時点でわかっていること

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:つのだよしお/アフロ)

デイリー新潮の「サンリオの人気キャラ"クロミ"を巡って裁判が勃発…異色キャラの“生みの親”は誰なのか?」という記事が波紋を呼んでいます。デザイン会社の株式会社スタジオコメットが、クロミを創作したのは自社のデザイナーであるとして、サンリオを訴えたという話です。これに応じて、サンリオも公式声明を出しています。

デイリー新潮の記事もサンリオの声明も断片的な情報しかありませんが、少なくともそこからほぼ明らかな事実だけを以下にまとめておきます。「企業ではなくデザイナー個人の権利を尊重すべきだ」と言った意見は、今回のケースについてはあまり関係ないことがわかります(もちろん広く一般的な論点としては重要です)。

① 「クロミ」(の絵)は職務著作である

一般に企業の従業員が仕事で著作物を創作した場合には特別な取り決めがない限り、雇用主である企業が創作を行ったものとして扱われます(著作権法15条)。つまり、企業が著作者であり、かつ、著作権者ということになります。スタジオコメット社によれば「(当社所属の)アニメーターが生み出したものは所属先である当社の著作物にあたります」ということなので、職務著作であることが大前提で話が進んでいます。

ついでに書いておくと、細かい話ですが、映画の著作物の場合は、著作者は監督・脚本家等々になり、著作権者は映画製作者(映画会社等)になります。特許における職務発明の場合は、発明した本人が発明者となり、発明者の特許を受ける権利が雇用者に自動的に移転するという建て付けです。「法人が創作する」というちょっと変な建て付けになっているのは職務著作のみです。

②著作財産権と著作者人格権の両方がからんでいる

サンリオの公式声明からは著作権(=著作財産権)と著作者人格権の両方が関連した訴訟であることがわかります(デイリー新潮の記事では、「著作者人格権に関する裁判」となっており食い違いがありますが、サンリオ自身による声明の方が正しいと考えるべきでしょう)。

前述のとおり、このケースは職務著作なので実際にクロミを作ったデザイナーさん(スタジオコメット社の社員)の著作者人格権ではなく、スタジオコメット社の著作者人格権ということになります("法人の人格権"というのはちょっと変ですが存在します)。

著作者人格権は主に公表権、同一性保持権、氏名表示権から成りますが、デイリー新潮の記事によれば、スタジオコメット社は「サンリオ側はいま、別の人物(栗原注:前述のスタジオコメット社の社員ではない人物)が作ったと説明しています。現在発売されているクロミのグッズを見ても、タグに“著作・発売元 株式会社サンリオ”と記されているだけで、当社の名前はどこにも見当たらないのです」という点を問題としていることから、少なくとも氏名表示権の侵害が問題とされていることが推測されます。また、公表権はおそらく関係ないとして、同一性保持権が問題とされている可能性もあります。

③「クロミ」の著作者がスタジオコメット社であることに争いはなさそうである

サンリオの公式声明を見ると、クロミの著作権は「関連する契約等によって明確に当社に帰属」と書かれています。つまり、創作者(著作者かつ最初の著作権者)がスタジオコメット社であることについては争われていません。過去に創作された著作物について「いや実はあれは私が作ったんだ」という、いわゆる「アレ俺」の主張がなされることがありますが、今回はそういう問題ではなく、あくまでも、サンリオ社とスタジオコメット社の間の著作権譲渡契約がどうであったかという話に帰着します。企業間の契約の話なので外部からは推測しにくいですが、サンリオ社がキャラクターの権利に関していい加減な処理をすることはちょっと想定し難いです。

ところで、前述の著作者人格権について言うと、当然ながら、著作者人格権は"人格権"なので、譲渡やライセンスはできません。しかし、著作者人格権を自由に行使できてしまうと現実のビジネスではやっかいなケースがあるので、著作権譲渡契約では著作者人格権の不行使条項を入れることが一般的になっています。

これについては、そもそも人格権の全面的な不行使を約束させるのは、人格権をライセンスするのと実質同じなので無効なのではという識者の見解がありました。もし、この訴訟で、この点が争われているのだとすると、一般的な視点からもかなり興味深い争点になります。

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この事件が明るみになってから、サンリオ社の株価は3日連続で下落しているとのことです(参照記事)。訴訟に関する情報があまりにも断片的であり、そもそも何が請求されているのか(クロミの使用の差し止めか、ライセンス料支払いか、それとも単にスタジオコメット社が著作者であることを認めればよいのか)すらはっきりしないので、市場が疑心暗鬼になってしまうのは仕方ないでしょう。

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ありがとうございます。
弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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