「Macと標準ソフトだけ」で紙書籍を出版している舞台裏を紹介するよ!
せっかく「個人での紙書籍の出版」という珍しい仕事を進めているので、その舞台裏をちょっとだけご紹介することにします! ZINEとかを作ってみたい人にも参考になるかも。
※ 最近は書籍執筆と出版準備ばかりで3行日記以外のまとまったnoteを全然書けていないので、その罪滅ぼしです!
どうしてこうなったのか
実を言うと、私は紙の書籍を出版する際、おそらくは業界標準であろうAdobeのソフトは一切使っていません。
仕事とプライベート兼用のMacbook Air一台と、macOS向けの標準ソフト(Pages・Numbers・Keynote)のみで紙書籍と電子書籍の納入用データを作成しています。デザインやDTP関係の知識をお持ちの方には、かなり意外に思われるような気がしています。
Adobe製のソフトウェアとしては、写真を扱ったり絵を描いたりするときに使うPhotoshop、グラフィックデザインにはIllustratorがそれぞれ有名ですね。ただ、書籍や雑誌のような活字中心かつページ数の多い紙面レイアウトを組む場合には、一般的知名度としてはこれらより少しマイナーなInDesignというソフトを使用するのが一般的です。
とはいえ、InDesignのようなプロ向けのソフトを使うには毎月3〜4千円くらいの課金が必要で、私が最初に出した本の執筆に着手した段階では「執筆と出版を本業にするなんて本当に成り立つのか?」という疑いもあり、とりあえずなるべくお金をかけずに制作できる方法がないか模索してみよう、という流れになりました。それが2023年末〜2024年初くらいのことです。
この作戦は幸いにもうまくいって、「Macと標準ソフトだけで紙書籍の出版を行う(=印刷所で本にしてもらえるような形式の電子データを作成する)」ということは実現可能だとわかりました。やってみるものですね!
というわけで、今回はこの春に出版予定の「人生の意味のつくり方:正解が『ない』とき、私たちは何をすべきなのか」(試し読み版を先行公開中)の制作の舞台裏を覗いていただくことにします。
これまでデザイン業界などとはまったく無縁にエンジニアの仕事をしてきて、過去に趣味で勉強していたデザイン関係の知識でどうにか間に合わせているものですが、出版に興味のある方の参考になればと思います。
表紙デザインだよ!
まずは表紙から。以下はまだ微調整を行なっていない仮デザインなのですが、何パターンか草案を作ってみた上で「これで行くか」という感じに決まったものです。
印刷物のデザインというのは、刷ってみないと正直見えない部分もありますし、創作的な何かを行うときの常として「やってる最中には気づかなかったけど、時間を開けて(離れた距離から)見直してみたらめっちゃ歪んでいた」的なこともよくあるので、この段階で画面上のみで細かく詰めるということは行いません。
ひとまず校正刷り(テスト印刷)をかけてみて、頭の集中モードを拡散モードに切り替えてから現物をチェックして、2〜3回くらい微調整と刷り直しを往復した上で完成させます。
あと、本の厚み(つまり完成原稿のページ数)が確定しないとカバーデザインのサイズ自体が決まらないので、その辺もこれからです。完成品の本としては、上に載せた画像の背表紙の2倍くらいの厚みになっているかもしれません。なんせ執筆中の原稿が19万字くらいあるので……。(20万字に届く可能性すらある)
さて、使ってるソフトの話ですね。よくビジネスシーンで「なんでもパワポで作る」とか「エクセル方眼紙」と揶揄されるやつみたいな感じで気が引けるのですが、これは本来はプレゼンテーションのスライド作成用の標準ソフトであるKeynoteを使用しています。まさにWindowsで言うところのPowerPointです。
Illustrator的なベクタデザインはさすがにできないのですが、簡単な図形や画像の配置にテキストを乗せていく程度ならこれで十分なんですね。カーニング(文字間隔)の調整もちゃんとできるので、今回の例ではタイトルと副題の横幅を綺麗に揃えることができています。
こういう作業をする際、MacがWindowsよりも秀でている点として真っ先に挙げられるのは、標準でインストールされているフォントの素晴らしさです。今回の本の表紙では、フォントワークスの「筑紫A丸ゴシック」をメインに使用しています。
フォントというのもやはり安い商品ではないので(制作にかかる労力と技術を考えれば当然ですが)、私のように会社組織の資金力の後ろ盾がない身としては、追加コストなしにこれが使用できるというのは大変助かります。現実問題、本を売って生活していくというのはなかなかにハードな話なので……。
ここまでの表紙デザインについては、おそらく多くの人にとって「やろうと思えばなんとかできる」の範囲内かと思います。次はもっと難しそうな、書籍の中身の紙面レイアウトについて見てみましょう。
目次デザインだよ!
これもまだ仮レイアウトですが、目次のページから見てみましょう。ソフトとしては、Macの標準の文書作成ソフトであるPagesを使用する形になります。Windowsで言うところのWordですね。
ページ数なんかはまだ確定していないので「00」と入っていますが、正式版もだいたい同じようなレイアウトになるかなと思います。
右側のページはいわゆるエピグラフですね。10代の終わりの頃、私のバイブルだった本にバートランド・ラッセルの「幸福論」があるのですが、その本の冒頭にウォルト・ホイットマンの詩が載っていたのが印象に残っていて、自分で本を書くようになってからは「いつかやってみたいなあ」と思っていたんです。
今回の私の本の冒頭に掲げる引用があるとしたら何だろうか……と考えたとき、ほぼノータイムで浮かんだのがこの言葉です。西洋に禅を広めたことで有名な、仏教学者の鈴木大拙の本(ちくま文庫の「禅」)からの引用になります。マジでかっこいい。痺れる。
本文デザインだよ!
次に、目次が終わっていよいよ本文が始まるページです。これも仮デザインで、校正刷りで実物の印象を見てから再調整するつもりです。
見出しは表紙と同じ「筑紫A丸ゴシック」、本文のフォントはモリサワの「凸版文久明朝」で組んでみました。ちゃんとした書籍っぽくなっていますね!
私が過去に出した2冊の本では、それぞれ「ヒラギノ角ゴ」(明るめで軽快な印象)と「ヒラギノ明朝」(格調ある感じ)を使用していたのですが、今回はもう少し柔らかさのある明朝体を使った形です。3冊目ともなるとこういう作業にも慣れてくるので、前回・前々回の本よりも書籍としての読みやすさはパワーアップできそうな気がしています。
普通に仕事中に目にするA4ビジネス文書みたいなものと比べて、特に書籍っぽい部分としては、ページ下部(フッタ部分)に並んでいるページ数と章題などが並んでいるところでしょう。400ページ以上になりそうな本に手作業でこれを入力するということは現実的でないので(手直し時に内容が1ページでも増えたら、それ以降全部振り直しになります)、これは自動的に配置されるような機能を使う必要があります。
おそらくWordにも同等の機能があると思うのですが、Pagesではセクションという概念があって、第○章の第○節といったまとまりをひとつのセクションとして設定することができます。
ここで、「このセクションには左ページの下部に『はじめに:疑問と目的』という章題を、右ページの下部に『今から考えようとしていること』という節題を入れる」といった感じで入力すると、その章のその節の十数ページくらいのフッタレイアウトがまとめて設定できるというわけです。やったね。
もっと本文デザインだよ!
さらに細かい点を見ていきましょう。PagesはAdobe InDesignほどに活字を組むことに特化していないので、よく見ると痒いところに手が届いていない部分があったりします。
たとえば、以下のように鍵カッコの閉じと開きが並んだ場合、正方形の輪郭を持つ全角文字がそのまま2つ並べられたような形になってしまい(すぐ右側の「のも」の並びと一致していることに注目)、見た目としては余計な空間が生まれてしまっているように感じられます。これは手作業で文字間隔を詰めて調整する必要があります。
今みなさんがご覧のnoteでも、実はこういう調整が勝手に働いてくれています(noteというよりはブラウザの力なのかな?)。試しに「)、」といった並びを入力してみると、見てのとおりカッコを閉じたあとの空間がちゃんと詰めて表示されていることがわかると思います。(追記:これ書いたあとにiPhoneのChromeから開いたら全然詰められてなかったので、PCのブラウザのレンダリングでそうしてくれてるっぽいです)
こういうことは普通は意識されていなくて、あまり綺麗になっていないときだけ意識されるので、「普通に綺麗に見える」っていうのは実はすごいことなのですね。
他にも面倒な手作業はいくつか発生するのですが、まあ細かいことなので今回は省略します。「Pagesが自動でやってくれることもあるけど、やってくれないこともあるね」という感じです。
さらに、今回の本には章末コラムというのが配置されているのですが、ここだけ別のフォントで組んでみたりしています。ここのフォントは「ヒラギノ角ゴ」で、さきほど「明るめ」と表現したものです。
……という感じで、以上がもうすぐ出る本の制作の舞台裏でした!
私の書籍はAmazonのKDP(Kindle Direct Publishing)というサービスによってオンデマンド印刷で販売しているので、これらのデータのPDFファイルをKDPの管理画面から登録して、著者情報や商品紹介文といったその他諸々のデータも入力すれば、めでたく販売開始になります。
あのよく見慣れたAmazonの商品ページが作られて、誰でもご購入いただけるような形になるわけですね!
おしまい!
よく考えてみれば、「やろうと思えば個人でも紙の本が出せる」というのはなかなかすごいことです。技術の進歩さまさまです。
まあ、自分で執筆して紙面デザインも電子データ作成も全部自分でやっているという人は少数派だとは思いますが、これを読んでくれたあなたとかが「自分もチャレンジしてみようかな」と思い立ってくれたとしたら、私もこの記事をまとめた甲斐があるというものです。
宣伝半分にはなりますが、今回の本「人生の意味のつくり方:正解が『ない』とき、私たちは何をすべきなのか」は、難しい人生をなんとか幸せにしていく方法について、自己の内面から仕事や人間関係といった具体的な課題まで、めちゃくちゃ真剣に考えるという内容の本になっています。
根本的には、私が本を書く動機というのは「いろいろ大変だけど、みんなも頑張っていこうぜ」というメッセージを伝えることにあるので、一般読者だけでなくて、これを読んだnoterさんにも「創作活動を頑張っていくか」と感じていただけたら嬉しいな、というわけですね。
この春に出版が完了したら、またnoteでも告知するので、よかったら読んでみてくださいね! 電子書籍も並行して出しますが、手をかけて制作した紙書籍をご購入いただけると作者としては本当に嬉しいです。
では、今回の記事はこの辺で。
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