第9話 幼馴染は◯◯ビッチ

 だから僕は……。


 姫華に群がる影を振り払いたくて、目の前の唇を貪ると同時に、胸をざわつかせる苛立ちと欲望のままに姫華を貫いた。


 そこに感じたのは強い抵抗と、痛いくらいに締め付ける感触。


「ンングッンんっ」


 叫びをあげまいとして我慢する姫華のくぐもった声。


 僕はようやくそこで姫華の異変に気付いた。


 涙を流して苦しそうにしながらも、何故か微笑みだけは崩さないようにしている姿に。


「なんで?」


 思わず呟いた言葉。

 言葉の通り意味が分からなかった。 

 なんで経験豊富なはずの姫華がそんな表情をしているのかを理解しようとしなかった。


 でも姫華が痛がって苦しんでる。

 そのことだけは理解でき、咄嗟に姫華から離れようとする。


 でも姫華はそんな僕にしがみついて離さないようにすると、耳元で囁いた。


「言ったよね。好きにして良いってさ。だからお願い、止めないで」


 姫華は涙をこぼしながら、離れようとする僕を繋ぎ止めるため深くキスをする。

 それは最初にしてくれたキスとは違って、僕がしたのと同じ、強引に求めるためのキス。

 欲望のままに、ただ相手と繋がろうとする口で交わる口接セックス


 僕はそんな姫華の求めに抗うことが出来なかった。

 湧き上がる男の欲望に逆らうことが出来ず、姫華が痛みで辛いと分かっているのに、欲望のまま姫華に自身の楔を打ち込む。


 そのたびに我慢できず苦しそうな声を上げ、そのたびに微笑んで誤魔化す。

 そして僕は欲望のまま姫華を求め続ける。

 でも……。


「……姫華、これ以上無理をしなくても」


 罪悪感が勝り、浅ましく気遣うフリして動きを止める。


 そんな僕の言葉に、姫華は一瞬悲しそうな表情をすると、すぐに首を振って否定する。


「ううん、今ね嬉しいの、私は嬉しいんだよ。やっとケンセイの事を感じることが出来たから」


 痛みに耐えながら姫華はそう言って笑ってくれた。その笑顔はどう見ても作り物には見えなくて。


「なんでそこまで……」


 姫華は痛みに耐えながらも、決して自分から拒絶しようとしない。

 それはどうして?

 頭では分かっているのに答えは口から出てこない。

 姫華はそんな僕を見越していたのか。


「……違うの、だってこれは私がケンセイに抱かれたかっただけだからっ……だからこれはぁ……私の欲望なの。失恋したケンセイに付け込んで、ただヤリたかっただけの性悪ビッチなのよ私はっ……だからケンセイは気にしないで、ただ気持ちよくなってくれたらいいからさっ、んっぐぅ」


 姫華はそう言うと、目一杯強がって自分から動こうとする。

 僕の罪悪感を無くすために。

 そんな姫華の姿に胸の奥で燻って蠢いていた真っ黒な澱みが消えて行く。


 僕は動こうとする姫華の動きを止めると、ゆっくりと抱き上げる。

 膝の上に乗せ、向かい合う体勢のまま姫華だけを見詰める。


 僕の意図が分からず戸惑う姫華を、優しく抱き寄せそっと触れるだけの口付けをする。


「えっ?!」


 ますます意味が分からず戸惑い続ける姫華にまたキスをする。


 今度はついばむようなバードキス。

 頑張ってくれた姫華を労わるように優しく、親愛を込めて。


「姫華、ありがとう。でも姫華だけが無理する必要なんてないんだよ、最初の方に言ってたじゃないか。一緒にステップアップして行こうって」


 あの時の言葉の意味をようやく理解した僕は、そう諭しながら、綺麗に染められたシルバーアッシュの髪を撫でる。

 指通りの良い輝く銀色の髪は、染めてるのにも関わらず良く手入れされていて、サラサラで気持ち良い。

 僕はそんな事も気付かないままに姫華を抱いたんだ。ハッキリ言わなくてもバカである。


「ふっふ、どうしたのよ、急に優しくなって」


 姫華も、僕の変化に合わせて、先程までの無理をしていた表情から少しだけ穏やかな表情に戻る。


「ごめん。最初からこうすべきだった」


 そう姫華がビッチだろうが処女だろうが関係なかった。

 女の子には優しくする。そんな当たり前の事が出来ていなかった。

 それなのに僕は一体何と張り合おうとしていたんだろう。

 

「別に良いよ、好きにしてって言ったのはこっちだしさ」


 そう言って微笑む姫華。

 彼女はこんな情けない僕を分かってて受け入れてくれたのだろう。


 だから辛くても笑ってくれた。


 でも、それじゃあ余りに情けなさすぎるから。


「うん。だから好きにさせてもらう。今更だけどさ、僕なりのやり方で姫華の事を抱きたいけど、良いかな」


「もう、いちいち断り入れる必要なんてないよ、何度も言ってるじゃん好きにしてって」


 そう言いつつ、どこか嬉しそう顔をして、姫華から柔らかなキスをしてくれた。


 僕も優しくキスを返すと、しばらくというより、かなり長い時間キスに夢中になって、お互いを求めあった。


 その後は、ひたすらキスを織り交ぜながら愛撫を繰り返し、まず慣らす事を心掛けた。

 最後は姫華が体力的に力尽きた所で、ようやく繋がりを解いた。


 ――つまり。


 僕と姫華は最後までイク事は出来なかった。


 正直、姫華からすれば最悪な初体験だろう。


 気遣われる事なく好き勝手に動かれ、あげくには、最後までイクことなく中途半端に終わっただけなのだから。


 いや、本当に穴があったら入りたかった。


 完全に力尽きて寝息を立てる姫華の横で、情けなさ過ぎる自分の行動を振り返り猛省する。


 そんな情けない僕だから、当然と言えば当然だった。

 冷ややかな目で見る二つの視線に気付くのに遅れてしまったのは。




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読んで頂きありがとうございます。

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続きを書くモチベーションにも繋がりますので

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