「ジョブ型人事を口実にした人事権の濫用」 降格処分や配置転換は不当として、オリンパスと子会社を社員が提訴
地位確認や慰謝料275万円を請求
訴訟は、オリンパス株式会社およびオリンパスマーケティング株式会社を被告として、東京地裁立川支部に提起された。 請求の内容は、A氏が「G9」の等級を有する地位にあることの確認、配置転換が無効であることの確認、「G9」に格付けすればなされていたはずの昇給分の差額賃金、および複数の人格権侵害に対する慰謝料275万円。慰謝料の内訳は、降格処分に関して(110万円)、配置転換に関して(110万円)、協議の場における代表からのA氏に対するハラスメントに関して(55万円)。 原告側は、新人事制度で「G11」に格付けされることは実質的な降格処分であり、処分の根拠にも乏しいため人事権の濫用にあたる、と訴える。また、A氏を専門性のある業務から未経験の運搬業務(単純作業)に配置転換することも、必要性を欠く違法なものであると主張。 そして、A氏に限らず多数の出向社員が、新人事制度によって降格処分と配置転換を受けた。これらと併せて「社外転進制度」が実施されたのは実質的な退職勧奨であり、実態は「大企業が人事制度の名を借りて行った大量リストラである」と、原告側は言う。 原告代理人の伊久間勇星弁護士は、新人事制度によってA氏は「結論ありきでの降格処分」を受けた、と指摘。 「A氏は、運搬業務もまったく未経験。高齢であり、力仕事に向いているわけではない。キャリアにおける不利益を著しく与える配置転換だ」(伊久間弁護士)
「ジョブ型人事」の模範例とされているが…
新人事制度については、労使交渉を重ねた末、労働組合も合意していた。しかし、当初は、新人事制度によって格付けが変更された後にも給与が下がらないことなどが前提となっていたという。だが、前記した通り、A氏を含む多数の社員が「原則として『G9』に移行する」とされていたところ、実際には「原則外」として「G11」に格付けされた。 笹山尚人弁護士は「『前提』を会社が破った」と語る。 昨今では「ジョブ型人事制度」の導入に向け、労働法の改正が検討されている。2023年12月に内閣府が開催した「第4回三位一体労働市場改革分科会」では、KDDI株式会社や富士通株式会社と並んでオリンパスの人事制度も模範例として取り上げられた。 検討案では、各企業でジョブ型人事を導入する際には労使で協議を行うことで条件を定めるものとされている。しかし、笹山弁護士は「実際の企業で行われている協議の内容とは、本件のようなもの。労働者代表を選出したところで、公平に条件が決められるものだろうか」と疑念を呈する。