おぼっ…///でッかぁ♡(恍惚)
空に向かってそそり立つ建造物を前に濁音オホ声をあげるのは他の誰でもないこの作品の主人公であるこの
てな訳でとぉ~ちゃ~くッ!!inオラリオ~
すげぇ~すげぇよマジで!
何かでっけえ建物あるし…エルフもドワーフも小人族もおるっ!あっ!今アマゾネスの姉ちゃんにウィンクされたっエッチ!エッチすぎますよ彼女っ!!
っと…落ち着け俺。冷静さを欠くな
ここは大都市オラリオだぞ…今までいた田舎町とは訳が違う…エッチな姉ちゃんに鼻の下伸ばしてたら『さっきチラチラ見てただろ』って怖い人連れて裏から出てくるかm…うわぁ!!またエッチなお姉さん!手振ってくれた!ばいばい~!!(脳死)
じゃねえッ!目を覚ませ俺…今しないと行けねぇ事はこんなことじゃないだろ!!
とりあえず宿の確保…それが第一優先。
次に今日の晩飯!オラリオまでの移動中…干し肉にパッサパサのビスケットだのまともな物腹に入れてないからな。ファミリア?んなの二の次、三の次だわ
って事でテクテクテクテク歩きます。
右を見ても左も見ても見慣れないものばっか…気分はまるで初めてのおつかい!
ドレミファソラシド~♪ドシラソファミレド~♪
未知の世界にウキウキのベル君っ。
鼻歌交じりで進みます!
ご機嫌のベル君。もうこのまま人の目気にせずスキップでもしようかと考えた矢先の事でした。
どンっ!
急に角道から出てきた人影とぶつかってしまいます
『ヴぉい!こらぁボケェ何処見て歩いとんじゃ!』
そんな台詞が喉元まで出てきていたベル君ですがぶつかった相手が華奢な女の子だと分かりすぐさま謝罪し手を差し伸べます。何と紳士的でしょう
閑話休題
手を貸し立ち上がった少女。名前をシルちゃんと言うらしい…薄鈍色の髪と瞳をした何処かおてんばっぽい雰囲気を醸し出した子。
おっと…ぶつかった拍子にシルちゃんが食べ歩きしていたコロッケを潰してしまったらしい
わりぃな…俺の上着がコロッケ食っちまったみたいだ。次は5段コロッケを買うと良い!
何てカッコつけてお金を渡そうとするも中々受け取ってくれないシルちゃん。
それ何処か服を汚してしまったので何かお詫びしたいと言い出す始末。…何て出来た子何だシルちゃん!
しかしこれからお仕事があるので、どうやら時間的に難しとの事『むむむむむ~』っと人差し指をこめかみに当て如何にも悩んでますよポーズを数秒とったあとピコんっ!と何か閃いた様子。
何でもこの近くにある『豊穣の女主人』という酒場でウエイトレスをしており今回のお詫びもかねて色々とサービスしてくれるので今晩どうかというお誘い。
うわぁ…ホントにすげぇなこの子。おてんばっぽいって言ったがめっちゃ頭良いじゃん…しかも愛嬌も良いと来た。こりゃ敵いませんわ…って事で降参ポーズ
それにピョンピョンと跳ねて喜ぶシルちゃん…可愛すぎんか?俺が長男じゃなきゃ耐えれなかったぞ。。
話を聞くとこによるとこのオラリオにある酒場でも一番治安が良く味も保証するとの事…正直な所、シルちゃんがフリフリエプロンをつけて働いてるのを見れる時点で多少味が悪くても目を瞑れるのだが…保証するとまで言ったのだ楽しみにしておこう!
ってな感じで今晩行くね~っとここでシルちゃんとお別れ。日も傾いてきてたので近場の宿を探す。
ってかシルちゃんにおすすめの宿でも聞いとくんだったな…。
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第一印象は『綺麗』の一言。
お仕事が始まるまで街ブラをしていた時だった。食べ歩きに気を取られ彼とぶつかってしまったのだ。
大木にぶつかったのかと錯覚する程の衝撃に尻餅を付いてしまった私に片ひざを付いて手を差し伸べてくれた彼の姿を目に写して。写して…
世界が止まった。
処女雪のよう穢れを知らない真っ白な長髪を後ろでまとめて留め。深紅の鋭い瞳に上に跳ねた長い睫。
息を飲むような綺麗な顔だった。あまりの衝撃に放心していた私に『コロッケを潰してしまって悪かった』と財布からお金を取り出す彼を必死に止め…よそ見をしてぶつかってしまった事、服を汚してしまった事の謝罪と軽い自己紹介をする。
ベルと名乗り返してくれた彼にもう一度謝罪し…そしてお詫びと兼ねて今晩、うちのお店はどうかと誘ってみる。正直に言おう…下心がないと言えば嘘になる
そう。そうなのだ…認めてしまおう。
この私、シル・フローヴァはあって間もない彼に一目惚れにも似た感情を抱いてきたのだ…まるで生娘のように。何処にでもいる只の街娘のように。
夕暮れに照らされる彼の横顔に…彼の発する鈴を転がしたような凛とした一言一言が私の鼓動を早め…大事な何か雪のように溶かされていく。
動悸がうるさい…顔が火照り。
その異変を彼に見抜かれそうな気がして会話もそこそこに切り。その場から速足で駆ける。
裏路地に入って顔を両手で抑え座り込む。
暑い…暑すぎる。額から汗がしたたる。
この汗が駆ける時の物なのか…先ほどの彼のせいなのかそんな事今はどうだって良かった。
「ベル」
彼の名前を口に出してみる。
もちろん返事を返してくれる人はいない
「ベル」
もう一度。
「ベル」
もう一度。
彼の声を。彼の姿を瞳の裏に写して
名前を呼ぶ。
「ベル」
彼の名前を呼ぶ声が妙に色っぽく妖艶に変わる。
「ベル」
彼の名前を呼ぶたびにビクッと身体が跳ねる。
「ベル」
その声は誰にも聞かれずに路地裏の闇に溶けていく