伊方原子力発電所3号機 運転差し止め裁判 きょう判決 広島地裁

愛媛県にある伊方原子力発電所3号機について広島県の住民などが運転の差し止めなどを求めている裁判で、広島地方裁判所が5日判決を言い渡します。3号機をめぐっては、過去に高等裁判所で2度、運転しないよう命じる仮処分の決定が出されましたが、いずれも取り消されていて、広島地裁の判断が注目されます。

愛媛県にある伊方原発3号機について、広島県の住民などは9年前の2016年、四国電力に対して運転の差し止めなどを求める訴えを起こしました。

長期に及んだ審理では、地震や火山に対する安全性が十分かどうかが主な争点となりました。

住民側は「原発の近くに活断層が存在する可能性があるのに、十分な調査が行われていない。熊本県の阿蘇山で巨大噴火が起きる可能性があるのに対策が不十分だ」などと主張しました。

一方、四国電力は「音波探査などを行った結果、原発に隣接した地点に活断層がないことを確認している。運用期間中に阿蘇山が巨大噴火する可能性は十分に小さい」などと反論しました。

3号機をめぐっては、広島高等裁判所が2017年と2020年の2度にわたり、運転しないよう命じる仮処分の決定を出しましたが、四国電力の異議申し立てを受けて、いずれも取り消されています。

安全性について異なる司法判断が相次ぐ中、広島地裁が双方の主張を踏まえてどのような判断を示すのか注目されます。

3号機をめぐる司法判断の経緯

四国電力の伊方原子力発電所は、愛媛県伊方町の佐田岬半島にあり、広島市の中心部からは100キロほど離れています。

以前は1号機から3号機まで稼働していましたが、現在、1号機と2号機は廃炉作業が進められていて、3号機だけが運転しています。

3号機をめぐっては、東京電力の福島第一原発の事故のあと、愛媛や広島、山口、大分の住民などが、運転の差し止めを求めて仮処分の申し立てを相次いで行いました。

このうち広島高等裁判所は2017年、阿蘇山で巨大噴火が起きる危険性を指摘し、原発の立地は不適切だとして運転の停止を命じる決定を出し、3号機は運転できなくなりました。

四国電力が異議を申し立てた結果、2018年に広島高裁の別の裁判長が「巨大な噴火の可能性が根拠をもって示されているとはいえない」として決定を取り消し、運転を認めました。

2020年には別の仮処分の申し立てで、広島高裁が原発の近くに活断層がある可能性や、阿蘇山の噴火の危険性を指摘し、再び運転を認めない決定を出しましたが、2021年に別の裁判長が取り消し、運転を認めました。

このように安全性をめぐって異なる司法判断が相次ぎ、運転の停止と再開が繰り返されてきました。

3号機については各地で裁判も起こされていて、2024年3月、一連の集団訴訟で初めてとなる判決で、大分地方裁判所は「住民の生命などを侵害する具体的な危険があるとは認められない」として訴えを退けました。

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