【やり取り全文・後編】トランプ氏 ゼレンスキー氏 なぜ口論に

アメリカのトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が28日、日本時間の1日未明に会談し、激しい口論となり、予定していた鉱物資源の権益をめぐる合意文書への署名が見送られました。首脳会談でかえって対立が深まる異例の事態となり、ウクライナでの停戦に向けた交渉への影響は避けられないものと見られます。

今回の会談(報道陣に公開されていた冒頭の50分ほど)のやり取りについて、トランプ大統領とゼレンスキー大統領、それぞれの発言の全文を前編・中編・後編で詳しくお伝えします

※この記事は後編です。

【激しい口論に】

記者
「ポーランドは第2次世界大戦後、何十年もロシアの支配を受けた。子どものころアメリカは世界で最も強く豊かな国で、すばらしい音楽や映画、スーパーカーがあるというだけでなく、世界のための力として見ていた。今ポーランドの友人たちと話すと、あなたがプーチン氏に肩入れしすぎていると心配している。友人たちにメッセージを」

トランプ大統領

「どちらにも寄らなければ、取り引きは成立しない。私がプーチン氏についてひどいことを言っておいて『やあウラジーミル、われわれの取り引きはうまくいっているか』と言うのを望んでいるようだが。それではうまくいかない。

プーチン氏に肩入れしてはいない。誰にも肩入れしていない。アメリカに肩入れしているのだ。世界のためになるように、世界に肩入れしている。

このこと(戦争)を終わらせたい。彼(ゼレンスキー大統領)がプーチン氏に抱く憎悪がわかるだろう。私がこうした憎悪を抱えて取り引きをするのは大変なことだ。彼の憎悪はとてつもない。理解はするが、相手方も彼のことが気に入らない。つまりこれは誰かに肩入れするという問題ではない。世界に肩入れし、このことを片づけたい。ヨーロッパにも肩入れしている。これを終わらせられないかと思う。

厳しくなってほしいのか?あなたがこれまで見たことのないような厳しい人間になることだってできる。しかし、それでは交渉を成立させられない。そういうものだ」

バンス副大統領

「少しいいだろうか。今のに答えたい。アメリカには4年間、記者会見に立ってウラジーミル・プーチンに厳しいことを言う大統領がいた。そしてプーチンはウクライナを侵略し、かなり破壊した。和平への道、繁栄への道とは、外交に取り組むことかもしれない。アメリカがいい国になるには外交に取り組むことだ。それこそトランプ大統領が取り組んでいることだ」

ゼレンスキー大統領

「聞きたいことがある」

バンス副大統領

「どうぞ」

ゼレンスキー大統領

「彼(プーチン)はウクライナの東部とクリミアという大きな部分を2014年に占領した。それから何年も。バイデン前大統領だけでなく、当時のオバマ大統領、トランプ大統領(1期目)、バイデン大統領、そしてトランプ大統領(2期目)。ありがたいことにトランプ大統領が彼(プーチン)を止めてくれるだろう。しかし2014年に止める者はなかった。彼はただ占領してわがものとした。人々を殺した。停戦ラインというのは…」

トランプ大統領

「2015年だ」

ゼレンスキー大統領

「2014年だ」

バンス副大統領

「2014年から2015年」

トランプ大統領

「2014年か。私はここ(ホワイトハウス)にいなかった」

バンス副大統領

「そのとおり」

ゼレンスキー大統領

「しかし、2014年から2022年まで状況は変わらなかった。人々は停戦ラインで亡くなり、誰も彼を止めなかった。ご存じのとおり彼とは大いに対話し、首脳会談も行い、署名もした。新しい大統領として2019年に彼(プーチン)とマクロン氏(フランス大統領)、メルケル氏(ドイツ前首相)と停戦合意に署名した。皆が、彼はもうしないだろうと言った。ガスの契約にも署名した。

しかしその後、彼は停戦を破り、ウクライナ国民を殺害し、捕虜交換に応じなかった。われわれは捕虜交換に署名したのに、彼は実行しなかった。

バンス副大統領、どういった外交の話をしているのか。どういった意味で言っているのか」

バンス副大統領

「あなたの国の破壊を終わらせるような外交の話をしている。(ゼレンスキー)大統領、おことばだが、大統領執務室に来て、アメリカメディアの前でそれを訴えるのは失礼だと思う。

現在あなたたちは兵力の問題を抱えているせいで、次々と前線への徴兵を強いている。

(トランプ)大統領がこの紛争を終わらせようとしていることに礼のひと言でもあってしかるべきだ」

ゼレンスキー大統領

「ウクライナに来たことはあるのか。どんな問題があるというのか」

バンス副大統領

※「行ったことがあるのは…」

ゼレンスキー大統領

※「一度来てほしい」

※この記事を当初公開した際、バンス副大統領の発言を「行ったことはある」とお伝えしましたが、正確なやり取りは、(バンス副大統領)「行ったことがあるのは…」(ゼレンスキー大統領)「一度来てほしい」でした。失礼しました。

バンス副大統領

「実際はニュースを見て何が起きているか知っている。あなたは人々をプロパガンダツアーに連れて行く。人々を軍に入れるのに苦労しているという点には同意しないのか。そして、アメリカ合衆国の大統領執務室まで来て、あなたの国の破壊を阻止しようとしている政権を攻撃するのが、礼儀正しいことだと思うのか」

ゼレンスキー大統領

「質問が多い。1から始めよう。まず、戦時中なら誰しも問題を抱える。あなたたち(アメリカ)でさえそうだ。いい海(大西洋)があって今は実感がないだろうが、やがて感じることになるだろう」

トランプ大統領

「それはわからないだろう。われわれがこの先何を感じるかなど言わなくていい。問題を解決しようとしている。あなたはそれを押しつける立場にはない。覚えておいてほしい。この先何を感じるかを押しつけるような立場にはない。われわれはいい気分、強い気持ちになるだろう」

ゼレンスキー大統領

「影響を感じることになると言っているんだ」

トランプ大統領

「今あなたはあまりいい立場にない。あなたはみずからかなり悪い立場に陥り、彼(バンス副大統領)が正しいようだ」

ゼレンスキー大統領

「戦争の当初から…」

トランプ大統領

「いい立場にはない。カードを持っていない。われわれがいて初めて手札を手にできる」

ゼレンスキー大統領

「トランプゲームをしているわけではない」

トランプ大統領

「している」

ゼレンスキー大統領

「私は真剣だ。(トランプ)大統領、私は至って真剣だ。戦時下の大統領として」

トランプ大統領

「あなたは何百万という人々の命を賭けの対象にしている。第3次世界大戦が起きるかどうかを賭けたギャンブルをしている。そしてあなたがしていることは、あなたたちを多すぎるほど支援してきたこの国に対してとても失礼だ」

バンス副大統領

「この会談を通じて1度でも礼を言ったか」

ゼレンスキー大統領

「何度も言った」

バンス副大統領

「違う。この会談の場で『ありがとう』と言ったか。

あなたは(去年)10月、ペンシルベニア州に行って、対立候補の選挙運動に加わった。あなたの国を救おうとしているアメリカ合衆国大統領に感謝を示しなさい」

ゼレンスキー大統領

「お願いだ、戦争のことで声を荒らげるなら…」

トランプ大統領

「声を荒らげてはいない。ウクライナはとても困っている。あなたはたくさん話した。あなたの国はとても困っている。勝ちそうにない。われわれのおかげでなんとかなる見込みが出てきた」

ゼレンスキー大統領

「(トランプ)大統領、われわれは国にとどまり、強くあり続けている。戦争の初めから、自分たちだけでだ。そして感謝の気持ちがある。この執務室で礼を言った」

トランプ大統領

「あなたたちは孤独になったことはない。われわれは愚かな(前)大統領を通じて3500億ドルを与えた。ウクライナの装備品はみなアメリカが与えたものだ。兵士たちは勇敢だ。しかし、アメリカの装備品を使うしかない。もし、アメリカの装備品がなかったら、この戦争は2週間で終わっていただろう」

ゼレンスキー大統領

「3日だ。プーチンの発言を聞いた」

トランプ大統領

「もっと短かったかもしれない」

ゼレンスキー大統領

「2週間。もちろんそうだ」

トランプ大統領

「こうした問題は非常に大変だ」

バンス副大統領

「とにかく礼を言って……」

ゼレンスキー大統領

「何度もアメリカの皆さんに言っている」

バンス副大統領

「見解の不一致があると認めなさい。こうした不一致について議論しよう。あなたが間違っている以上、アメリカのメディアの面前で決着をつけようとしなくていい」

トランプ大統領

「しかし、アメリカの人々に起きていることを見てもらうのもいいと思う。とても大事なことだ。だからずっと続けさせたんだ。あなたは感謝しなければならない」

ゼレンスキー大統領

「感謝している」

トランプ大統領

「あなたにはカードがない。あなたは簡単に負ける。ウクライナの人たちは死んでいく」

ゼレンスキー大統領

「やめてほしい」

トランプ大統領

「ウクライナは兵力が不足している。いいことかもしれない。あなたは『停戦はいらない、停戦はしたくない。まだやりたい。あんなものがほしい』と言う。もし今すぐ停戦できるなら、銃弾を止め、兵士が殺されるのを止められるよう、受け入れるべきだ」

ゼレンスキー大統領

「もちろん戦争を止めたいと思っている」

トランプ大統領

「だが、停戦はいやだと言うのか」

ゼレンスキー大統領

「保証込みの停戦が必要だと言っている」

トランプ大統領

「いかなる合意よりも停戦が早い」

ゼレンスキー大統領

「ウクライナの人たちに停戦についてどう思うか尋ねてみてはどうか」

トランプ大統領

「それは私の話ではない、バイデンという賢くない男の話だ。オバマの話だ」

ゼレンスキー大統領

「おたくの大統領の話だ」

トランプ大統領

「何だって。オバマはシーツをあげて、私はジャベリン(携行型対戦車ミサイル)をあげた。戦車を倒すためにジャベリンを送ったんだ。オバマはシーツを送った。もっと感謝すべきだ。あなたは手札がないんだから。われわれがいれば、カードを手にする。われわれがいなければ、カードはない。態度を変えなければならないとなると、大変そうだ」

記者
「もしロシアが停戦を破ったら、和平交渉を中断したらどうなるのか、どうするのか」

トランプ大統領

「どうするも何も、今あなたの頭に爆弾が落ちたらどうするのか。彼ら(ロシア)が破ったらどうなるのかなど、知ったことではない。バイデンと(の合意)なら破るだろう。バイデンへの敬意はなかった。オバマにも敬意はなかった。

私のことは尊敬している。プーチン氏は私と一緒に多くの苦難を経験した。うそっぱちの魔女狩りに遭って、彼とロシアは利用された。ロシア、ロシアと。聞いたことがあるか。詐欺師のハンター・バイデン、ジョー・バイデンのぺてんだった。ヒラリー・クリントン、ずるいアダム・シフ、民主党のぺてんだった。彼(プーチン氏)はそんな目に遭った。われわれは戦争に至らなかった。彼はそんな目に遭った。彼はそんなことで非難を受けた。彼は関係なかった。

ハンター・バイデンのトイレから出てきた。ハンター・バイデンの寝室から出てきた。不愉快だった。後になって『この最悪なノートパソコンはロシア製だった』などと言うんだ。51人のエージェントも出てきた。すべてがぺてんだった。彼はそれに耐えねばならかった。こうしたことで非難されていた。

私が言えるのは、彼はオバマやブッシュとの取り決めなら破っていたかもしれないということだ。バイデンとの合意でも破っていたかもしれない。破らなかったかもしれない。どうなったかはわからない。だが、私との間では破らなかった。彼は取り決めをしたがっている。できるかはわからない。問題は、私があなたを強くしたということだ。アメリカがいなければあなたは強くなれないと思う。ウクライナの人々はとても勇敢だ」

ゼレンスキー大統領

「ありがとう」

トランプ大統領

「しかし、あなたが取り引きに応じなければ、われわれは手を引く。われわれが手を引いたら、あなたたちで決着をつけることになる。気持ちのいいことではないと思うが、あなたたちで決着をつけることになる。

手札がないから。

もしわれわれが取り引きに署名すれば、あなたはずいぶんいい立場になる。しかし、あなたは全く感謝しているような態度ではなく、いいことではない。正直言って、いいことではない。

さあ、もう十分ではないか。すばらしいテレビの撮れ高になるだろう」

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