不知火が〈
不知火は〈
モンスターに殺された者もいるだろう、不知火は最高位の蘇生魔法が使えるため蘇生が可能だがそれはしない。
この世界で蘇生魔法がどういう認識か分からないためだ、もしこの世界で蘇生魔法が禁忌とされているのなら、不知火が使用した場合、超絶めんどくさいことになるのは目に見えているからだ。
(まぁ、自分の命が助かっただけでも、ありがたいと思ってくれ)
家族や友人、恋人を失い悲しんでいる者たちを見て不知火はそう考えた。
【
(……今はそんなことどうでもいいか)
今考えるべきことは集まった村人たちにこの後、どう行動してもらうかを考えなければ、と自身の精神の問題は一旦頭の片隅に置いておく。
そう考え村人たちに視線を向けると、村人たちの中に怪我をしている者が何人も居るのが目に入った。
(村人たちの怪我の治療が最優先か……なら)
「……この村の長が居るなら出てきてほしい」
不知火がそう言うと一人の老人が前に出てくる。
「私がこの村の村長をしております、バムルと申します!この度は村を救っていただき、誠にありがとうございます!」
「い、いえ、気にしないでください……それより村長さんには一つやって貰いたい事があるのですが、よろしいですか」
「や、やってもらいたいこと、ですか?そ、それは、いったい?」
この村の村長——バムルが元気な声で自身の名前と感謝を告げてくる。
それに対して不知火は(このじいさん元気だな)と内心思いながら、返答し、村長にあることをあることをお願いする。
バムルは不知火が自身に何を要求するのか、少しばかり動揺しながらその要求の内容を不知火に問うた。
そんなバムルの内心を見抜いた不知火は苦笑しながら、要求を口にした。
「そんなに構えなくても大丈夫ですよ。村長さんには怪我人を一箇所に集めて貰いたいんですよ」
「け、怪我人を、ですか?ど、どうして」
村長は不知火が回復魔法を使える事を知らないので、この反応も無理はないだろう。
だがいちいち説明するのもめんどくさいので、「集めて貰ったら分かりますよ」と、不知火が言うと村長は少し怪訝な表情を浮かべながらも、怪我をした村人を一箇所に集め始めた。
集められた村人たちは何故自分が集められたのか分からず不安な表情を浮かべている。
まぁ、モンスターに襲われたばかりなのだから、仕方ないだろう。
そう思考している内に怪我人を集め終えた村長が不知火の元に戻ってくる。
「し、不知火様、怪我をしている村人たちを集め終えました」
「わかりました…ありがとうございます」
村長に感謝を伝えつつ不知火は集められた、怪我をしている村人たちに視線を向ける。
視線を向けられた村人たちはその視線にビクッとして、不知火の視線に怯えている。
ひどい者の場合は顔を真っ青にし、足を生まれたての小鹿の様に震わせている。
(……困ったな、まさかここまで怯えられるとは思わなかった)
別にこの状態でも傷を癒すことは可能だが、せっかく手間をかけて救った村人たちに怯えられるのは今後の事も考えると面倒なため、仲良くとまではいかなくとも警戒心はなるべく持たれたくない。
そのため不知火はアルフィア達にもやったように〈神威Ⅰ(安堵)〉を発動させつつ、怯えている村人たちに一歩近づき優しく話し掛ける。
「安心してください、今から行うのは怪我の治療です」
「け、怪我の治療……?」
「そ、そうだったのか……」
「よ、よかった……」
不知火が安心させるように言うと村人たちも少しは安心したのか、体の震えが止まり、それぞれが安堵の声を口々に呟く。
「……〈
「こ、これは……」
「き、傷が一瞬で治ってる……」
不知火が魔法を唱えると、負傷している村人たちの足元にそれぞれ魔法陣が現れ、村人たちを淡い光で包むと傷が一瞬で塞がった。
村人たちはその光景に驚愕し、驚きの声を上げる。
不知火からしたら〈
「感謝いたします不知火様、この村をモンスターから救っていただくだけでなく、村人たちの治療まで、この御恩はいつか必ず返させていただきます」
そんな光景を見て、呆然としていた村長がハッと我に返り、不知火に感謝を伝えてくる。
不知火はそんな村長の感謝を聞き、礼儀正しい人だなと思いつつ返答する。
「気にしないでください………ですがそうですね、一つお願いしてもよろしいですか?」
「も、もちろんです」
「……この世界について教えてもらえますか?」
「こ、この世界について、ですか?」
「はい、僕は旅人ですので、余りここら辺についての情報を持っていないのですよ、なので村長さんにはその情報を出来る限りで良いので、提供して頂きたいのです。」
「………………そ、それだけでよろしいのですか?」
不知火の要求を聞いた村長は少しの間ぽかんと気が抜けた表情を浮かべた後、その程度の事でいいのか?と聞き返してきた。
村長からしたら、もっと凄い要求をされると思ったのだろう。だが、不知火からすればこの世界は未知の世界だ、そのためこの世界の情報の価値は不知火からしたらとても重要な物になる。
「ええ、情報は宝だと、僕は思っていますから」
「………分かりました、後ほど私の家で話させていただきます」
その後村長との会話を終えた不知火は集まった村人たちをどうするか考えた、家に帰すのも良いが、先程のモンスター襲撃で家を無くした者もいる事に気づき、第十位階魔法〈
ついでに魔法で【
ちなみにこの二つの魔法を見た村人たちは驚愕で顎が外れるんじゃないか?と、思ってしまうぐらい口を大きく開けて固まってしまった。まぁ、何人かは実際に顎が外れていたので、魔法で治療することになったが。
村人たちの問題がどうにかなったので、不知火は村長と共に村長の家へと来ていた。
村長の家は特にモンスターに崩壊された跡などは無かった。
そんな村長の家のリビングで机を挟み二人は対面に座っていた。
「さて、ではこの世界について知っていることを話してくれ」
「分かりました、ではまず———
そこからこの世界の様々な事について不知火は村長から聞いた。
・数千年前に娯楽を求め天界から降臨した神々。
・『世界の中心』もしくは『英雄の都』と呼ばれている迷宮都市『オラリオ』。
・オラリオに存在する『世界三大秘境』の一つである『|迷宮(ダンジョン)』。
・神々から恩恵を授けられた神の眷属。
・主神とその眷属で構成されるファミリアという名の
・オラリオに存在するダンジョンを潜り生計を立てる冒険者。
など他にも様々な情報を村長から知ることが出来た。
不知火が特に気になっているのは“下界に降臨した神々”と“ダンジョンを有している英雄の都『オラリオ』”の二つだ。
神々は単純に
(……それにしても、少し情報を貰いすぎたな)
そう思った不知火は謝礼として何か渡すべきだと考えた。
謝礼なら金を渡すのが一番楽なのだが、残念ながら今の不知火はこの世界の金を一切持っていない。そのため、金以外の何かを渡したいのだが——
(——ユグドラシル産のアイテムで良いか)
もし、またこの村がモンスターに襲われても自分たちで対処できるように、アイテムを幾つか渡しておこう、と考えた不知火はアイテムボックスに手を突っ込み、角笛と三つの巻物を取り出し、机に置いた。
「村長、こちらを受け取ってください」
「し、不知火様、こ、これはいったい?」
「この角笛は【ゴブリン将軍の角笛】と言って、吹くと19体のゴブリンが召喚され、あなたに仕えてくれます」
「………え?」
【ゴブリン将軍の角笛】の効果を説明すると村長は固まってしまった。
そんな村長に構うことなく不知火は巻物の方も説明する。
「この三つの結晶は【
「…………………………はっ!だ、だめですよ、もらえません!」
不知火が〈
不知火から渡された物の効果のヤバさが村長の小さな脳みその許容限界を超えてしまったのだろう。
まぁ、この世界の魔導士が見たら、アイテムに内包されている魔力を見て発狂してしまうかもしれないが。
数秒後、漸く現実に戻ってきた村長は、慌ててアイテムたちを不知火へと返そうとする。
だが不知火がどうしても受け取ってほしいと伝えると、村長は渋々ながら受け取った。
その後、特にやることも無くなったので村長と軽い雑談をしていると、村の周辺を見回りさせている【
どうやらこの村に向かって馬に乗った集団が向かってきているとのこと。
その集団の特徴は“全員が女性である”ことと、“女性の横顔と杖のエンブレム”が描かれた旗を掲げているらしい。
とにかくその事を村長に伝え、何者か知っているか聞くと村長は、恐怖で少し顔を青くしながら答えてくれた。
そのファミリアは、英雄の都『オラリオ』の都市最強のファミリアとしての片翼を担っている最恐のファミリア——
——『ヘラ・ファミリア』だと。