灰色髪の少女が危険だと思った不知火は、〈
スキル〈神威〉発動時はユグドラシルの頃と同じく、身体から神々しい光を放っていることを確認しながら、隣にいる灰色髪の少女に害を与えないため魔法強化系スキル〈
ちなみに吹き飛ばす前に種族スキル〈神の眼〉で、オークのステータスを確認したところ、20.Lvにも満たない雑魚だということが判明し、心の中で落胆したのは内緒だ。
吹き飛んだオークは崩れた民家の中で気絶している。まぁ少ししたら目を覚ますだろう、と考えながら不知火は横で固まっている灰色髪の少女に話し掛ける。
出来るだけ安心させるために〈神威Ⅰ(安堵)〉も発動継続中だ。
「もう大丈夫だ、後は僕が君たちを守るよ」
「………………」
不知火が話し掛けると灰色髪の少女は現在の状況を理解したのか、緊張の糸が切れてしまい気絶してしまった。
「おっと!」
気絶して地面に倒れそうになった灰色髪の少女を支える。
いつまでも灰色髪の少女を支えているわけにもいかないため、不知火は灰色髪の少女を横抱き——つまりお姫様抱っこをして、白髪の少女のもとに向かう。
白髪の少女は不知火が魔法を使って、自分よりも二回りでかいオークを吹っ飛ばした事に余程驚いたのか未だに固まったままだ。
固まっているところ大変申し訳ないが、不知火は白髪の少女に話し掛けた。
「固まっているところ申し訳ないが、この子のこと頼めるかな?」
「……っえ、あっ!ご、ごめんなさい固まってしまって、お姉ちゃんのことは私に任せて、それと私たちを助けてくれてありがとう!」
「どういたしまして、それとこの子のこと任せるよ」
白髪の少女の感謝に対して不知火は感謝されるほどの事はしてないと、そう内心思いながらそう返答する。
そして不知火の腕の中で眠っている灰色髪の少女を起こさない様に優しく白髪の少女に渡す。
渡し終えると同時に不知火が魔法で吹っ飛ばしたオークが目を覚ましたのか物音を立てながら瓦礫の中から這いずり出てきた。
それを横目で確認した不知火は白髪の少女に視線を戻す。
白髪の少女はオークが這い出てきたのを知り不安そうな顔をしている。
今にも逃げたいほどの恐怖心を押さえつけてその場に立っている白髪の少女を安心させるため、再度〈神威Ⅰ(安堵)〉を発動させながらその綺麗な白髪の頭に手を乗せて言う。
「大丈夫だ、君たちの事は絶対に僕が守るから」
「で、でもっ、それじゃああなたが!」
白髪の少女は知らない、不知火がどれほど強いのか。だから白髪の少女は止める。
自分たちを助けるためにあの凶暴なモンスターと戦おうとしていることを。自分があのモンスターに恐怖していることを分かっていながらも、生まれながらに持つ『優しさ』で恐怖心を押し殺して、見ず知らずの不知火を死なせないために。
それに気づいた不知火は白髪の少女の持つ『優しさ』に少し驚いたが、その後には笑みを浮かべながら白髪の少女の頭を再度乗せて、さらに今度は撫でながら宣言する。
「安心してくれ、僕は最強だから、絶対に負けることはあり得ない」
そう不知火は最強だ、それ故に負ける事などあり得ない、例え世界が変わろうとも、その事実だけは何があっても変わることはあり得ない。
なんなら最強すぎて自分の力を封印してしまう程なのだから。
不知火の宣言を聞いた白髪の少女はいきなりの最強宣言に呆気に取られたため再度固まる。
それを見た不知火は高笑いを上げながら白髪の少女から視線を外し、完全に起き上がったオークを見ながら言う。
「刮目して見よ、勝負は一瞬も経たない内に決まる」
鞘に収まった日本刀——
すると次の瞬間、
不知火がやったことは簡単だ。職業スキル〈縮地〉を使用し、白髪の少女とオークが知覚できない圧倒的なスピードでオークとの距離を無くし、通り際にオークの首を斬った、ただそれだけだ。
「……やはり弱いな」
オークの弱さに落胆した不知火は、誰にも聞こえない程の声量でそう零した。
そこで不知火は村にこのオーク以外にもモンスターが居たことを思い出す。
自分で助けに行くのは少し面倒だと思った不知火は良いことを思いつく。
「〈
魔法を使い炎水風地の上位天使をそれぞれ三体ずつ召喚する。
眼と口、そして胸元の光っている色以外はほぼ同じ見た目の上位天使が合計十二体召喚される。
十二体の天使は召喚されるや否やその場で跪き首を垂れている。
その動作を確認した不知火は召喚した上位天使たちに命令を出す。
「村に蔓延るモンスターどもを殲滅せよ、そして村人を守れ」
不知火の命令を理解した上位天使たちはそれぞれ分かれてモンスターを倒しに向かった。
それを確認した不知火は少女たちのもとに向かう。
「お姉ちゃん!」
「……こ、ここは、私はたしか……」
どうやら灰色髪の少女が目覚めたようだ、そのことに気付いた白髪の少女が声を上げる。
灰色髪の少女は状況が理解しきれていないようなので、不知火は話しかける。
「目が覚めたようだね、よかったよ」
「お前は、たしか……」
不知火の姿とその後方で灰へと変わりつつあるオークの死体を見て状況を理解する。
自分たちがいきなり現れた正体不明の少年に助けられたことを。
そして警戒する、なぜ赤の他人である少年が自分たちを助けたのか。
灰色髪の少女がこちらを警戒していることに気づいた不知火はまぁ仕方ないか、と苦笑しながら納得する。
お互い無言の状況が続くが、このままの状況を続けていても意味はない。そのため不知火は自分から話しかける。
「どこか怪我しているところはない?」
「…………ない……いたっ!」
不知火が怪我はないか聞くと少女は無いと答えるが、立ち上がろうとすると声を上げ、顔を少し歪める。
灰色髪の少女の足を見ると右足首が少し腫れていた。おそらく、モンスターから逃げる際に出来た物だと考えられる。
「見せてくれ」
「なぜ私がお前に足を見せねばならんのだ」
「じゃないと治せないからね」
「治す必要などない、そもそも私は怪我なんてして、っ!」
そう言い再度立ち上がろうとして失敗する。
そんな灰色髪の少女を見て今まで黙っていた白髪の少女が声を出す。
「お姉ちゃんほんとは怪我してるんでしょ?嘘を吐いたらだめだよ!」
「そうは言ってもな」
「言い訳ばかりするお姉ちゃんなんて嫌いになるから」
「なん…だと」
突然のお姉ちゃん嫌いになる発言にこの世の終わりのような顔をする灰色髪の少女。
どうやら灰色髪の少女は白髪の少女には逆らえないらしい。
目の前の微笑ましい光景に不知火は微笑を浮かべる。
不知火が微笑を浮かべた事に気付いた灰色髪の少女は羞恥心で顔を赤くしながら不知火にキレる。
「何を笑っているっ!」
「ご、ごめんね、つい」
「………はぁ、もういい」
そういいながら灰色髪の少女は怪我をしている方の足を不知火に見せる。
不知火はそんな灰色髪の少女の様子に、これがツンデレというやつなのか?と、心の中で思った。
声に出して言ってしまうと、目の前の少女がまた怒り出すことなど、目に見えているのだから。
そんな事を考えながら不知火は怪我をしている少女の足を見ながら魔法を使う。
「〈
〈
不知火が権能の一つで
第三位階で、その効果は対象の怪我や毒、呪いなどの状態異常の種類を看破する魔法。
その魔法を使い、不知火は灰色髪の少女の怪我が、ただの捻挫だということを知る。
(捻挫か、これぐらいなら〈
「〈
「………何を言って、は?」
「こ、これって」
不知火が魔法を発動させると灰色髪の少女の怪我は一瞬で治っていく。
それを見た少女たちは信じられないものを見るように、治った足を見つめている。
どうやらこの少女たちはあまり魔法を見たことがないらしい。
ていうかこの世界にも魔法は存在しているんだろうか?と、そんな疑問を浮かべながら、未だ怪我のあった足を見て固まっている少女たちに話し掛ける。
「さて傷も治したことだし、君たちの名前を教えてくれるかな?」
「誰が貴様のような怪しい「メーテリアです!」奴に……」
「そしてこっちが姉のアルフィアです」
灰色髪の少女——アルフィアの警戒虚しく、白髪の少女——メーテリアが代わりに姉の分も名乗ってしまう。
「め、メーテリア、なぜ、こんな怪しい奴に名乗ったりしたんだ?」
「お姉ちゃん、怪しい奴なんて言い方してはいけませんよ、この人は私たちの命の恩人なのですから」
「た、確かにそうだが——」
「もうこれ以上駄々を捏ねるのであれば、私本気で怒りますよ」
「…すまなかった」
「私に謝ってどうするんですか、相手が違いますよ」
「わ、わかった……………すまなかった」
不知火を置き去りにして言い争う二人。
さっきから分かってはいたが、やはりアルフィアはメーテリアには逆らえないのだろう。
その証拠にアルフィアは苦虫を嚙み潰したような表情をしながら不知火に謝罪をしてきた。
「大丈夫だよ、気にしてないから」
「そうですか、ところでお兄さんは何者なんですか?」
アルフィアの謝罪に気にしていないと返すと、今度はメーテリアが不知火に対して質問を投げかける。
その質問を受けた不知火はどのように返答すべきか悩む。
嘘偽りなく異世界から来た神と言うか、それとも嘘を吐くか。
今後のことを考えた結果、不知火は返答する。
「ただの旅人をしている、不知火という、よろしく頼む」
「不知火さんですね!よろしくお願いします!ほら、お姉ちゃんも」
「………ちっ!よろしく頼む」
お互いの自己紹介を終わらせると、突然不知火が表情を変え、視線の方向を変える。
(上位天使の一体がやられた?)
不知火が先ほど召喚した十二体の上位天使の内の一体が何者かにやられた。
だがそれはおかしい、アルフィアたちを助けに入る前、村の上空にいた時に村の中にいたモンスターのステータスは〈神の眼〉で確認済みで、上位天使を倒せるモンスターは居なかったはずだ。
この事から考えられる可能性はたった一つ。
(………新手か)
不知火が〈
このままそのモンスターを放置していては折角、魔法を使い助けた村人が、モンスターに殺されてしまうだろう。
それが分かったなら対処は簡単だ、更に強い天使を召喚すればいい。
だがそれでは面白くない、ならどうするか。
(……僕が行こう)
「……あの、なにかあったんですか?」
二人が不知火の雰囲気が変わったことに気付き、メーテリアがそう聞いてくる。
それに対して不知火は起こったことを説明し、自分がその場に向かうため、二人にはここで待っていてほしい、ということを二人に簡単に伝える。
「……わ、わかりました、不知火さんも、気を付けてくださいね」
メーテリアは不知火に対してそう言うが震えている。アルフィアもメーテリアよりかはマシだがそれでも震えている。
先程まで二人を襲っていたオークは不知火が倒したとはいえ、この村には未だモンスターが存在しており、さらに不知火によるとオークより強いモンスターがこの村にいるという状況で、不知火にこの場に置いて行かれるということは、二人にとっては恐怖でしかないのだ。
本当であれば行って欲しくないが、不知火がモンスターを倒さねば自分たち以外の村人は全員死んでしまうため、二人は恐怖を押し殺して我慢している。
まぁ震えてしまっているため、不知火にはバレてしまっているのだが。
(どうしよう……………………仕方ない、連れていくか)
震えている二人をどうしようか悩む不知火は少しの思考の末、連れていくことにした。
「やっぱり二人も一緒に行こうか」
「え、でも大丈夫なんですか?」
不知火が一緒に行こうと二人に伝えると、メーテリアの方は自分たちが行っても大丈夫なのかと聞いてくる。アルフィアも何も言わないが、目線ではメーテリアと同じ疑問を不知火にぶつけている。
そんな二人に不知火は苦笑しながら問題ないと伝えると、それならば、と二人も納得したようだ。
置いて行かれずに済むと分かったの恐怖の震えも止まったようだ。
「じゃあ失礼して……よいっしょ」
「し、不知火さん!?」
「お前、何をする!?」
不知火は断りを入れてから二人を抱き抱える。
二人は生まれて初めて異性に抱きかかえられて、少し混乱しているようだ。
『
「二人ともしっかりと僕に掴まっていてね「「え?」」…〈
「「……と、飛んでる」」
不知火が落ちたら危ないので二人にそう注意してから飛行魔法を発動すると、二人を抱きかかえている不知火の身体は(二人の安全を考えて)ゆっくりと上昇していく。
そのことに二人は先ほどまでの混乱を忘れ呆然と固まってしまっている。
自分たちが飛んでいることが信じられないのだろう。
「この位の高さでいいか」
「た、高い」
「こ、この程度の高さ怖くも、な、なんともない」
村全体が眺める高さ(三十メドルくらい)まで上昇すると止まる。
二人はこの高さにビビり不知火にしがみ付いている。
その二人の様子に不知火は苦笑しながら、新手のモンスターを探すために村一帯を見渡す。
すると先ほどまでいなかったモンスターを見つけたため、そのモンスターのステータスを〈神の眼〉を使い確認する。
(……よっわ!)
上位天使を倒したことでそれなりに期待していたのだが、現実とは無情である36.Lvの雑魚モンスターであった。種族はミノタウロスというユグドラシルでは見たことがないモンスターだが、今はどうでもいいのでさっさと倒してしまおう。
そう不知火は考え魔法を発動させる。
Side:ミノタウロス
自分は最強だ。誰であろうと自分を止めることなど出来るはずがない。
自分の強さは大量の魔石を喰らった事で強化され、今では村や小さな国程度であれば単身で滅ぼすことが可能だ。
過去に幾つもの村や小国を滅ぼしてきた。
その時に人間どもの泣き顔や叫び声を見たり聞いたりするのが自分の大好物だ。
さて今日も今日とて自分は村を襲う。
先に村を襲っているモンスターどもが居るがそれは自分の配下だ。
最強すぎる自分には勝手に配下が出来てしまうのだ。
白い炎の剣を持ったモンスター?が襲ってきた。
配下のモンスターたちのほとんどはこのモンスター?にやられた様だ。
最強である自分は勿論返り討ちにしたが。
そこで自分は一度目を瞑り考える。
今までの村や小国にあんなモンスター?はいなかったはずだが。
まぁ、何があっても最強である自分がやられるはずがないので、気にする必要はないだろう。
悩みも解決したところで人間を襲うとするか。
そう考え目を開けると、目の前に先程まで無かった刃先が自分に向いている一本の雷の槍が存在しており、次の瞬間自分に突き刺さった。
そこで自分は理解した。
自分は死ぬのだと。
自分を倒した相手の顔すら見ることが出来ずに。
Side:out
「……〈
不知火がそう言うと目の前に魔法陣が現れ、そこから雷の槍が放たれる。
勿論魔法の放った先はミノタウロスだ。
〈
そんな魔法を不知火はミノタウロスに放った。
能力値が封印されているのだから、これ位は耐えてほしい所だが。
そんな不知火の期待を裏切り、〈
それを見た不知火は、ステータスを見て分かっていたことだが、それでも不知火は心の中でため息を吐かずにはいられない。
ちなみにアルフィアたちは不知火の〈
(……さて、モンスターも片付けたことだし、村人たちを集めようか)
そう思った不知火は一度地上に降りて、未だ驚きで固まっている二人を下ろし、再度飛行魔法を使い先程と同じくらいの高さまで上昇し、魔法を使う。
「……〈
〈
不知火が権能の一つで作り出した魔法の一つだ。
第二位階で、その効果は自身の声を拡大させる魔法。
〈
村人たちが安心できるように〈神威Ⅰ(安堵)〉を使いながら優しい声で。
『……初めまして村人の皆さん。僕の名前は不知火、旅をしている者です』
『村を襲っていたモンスターたちは僕と僕が使役するモンスターで倒しました』
『ですが一応の安全のため、皆さんには僕の元に集まっていただきたい』
『目印の為にこの後、僕が旗を立てます、なので旗が立っている場所まで来ていただきます』
『道中は僕が使役するモンスターが責任を以って皆さんを護衛しますので、安心してください』
『皆さんの安全のために協力をよろしくお願いします、それでは旗のある場所でまたお会いしましょう』
そういうと不知火は、〈
「……〈
〈
それを見た不知火は、アルフィアたちの場所に下降する。
またもや不知火の魔法に驚いて固まっている二人に苦笑しながら。