『ユグドラシル<Yggdrasil>』
西暦2126年に日本のゲームメーカーが発売した大人気のDMMO-RPGである。
人間種、亜人種、異形種と実に700種類にもなる豊富な種族と基本や上級職業等を合わせた2000を超える
そしてマップは九つの世界からなる広大なフィールドが広がっている。その為、ユグドラシルは無限の楽しみを追求できるDMMO-RPGとして、他のDMMO-RPGとは一線を画す程の人気を誇ってきた。
だが、そんな絶大な人気を誇ってきたゲームである『ユグドラシル<Yggdrasil>』も、サービス開始から12年経った今日終わりを迎えようとしていた。
そんな終わりを迎えようとしているゲームに、ある一人のプレイヤーがログインしていた。
「はぁ……このゲームもサ終か……」
ユグドラシルに存在する九つの世界の内の一つである、ミズガルズにある一つの拠点で一人のプレイヤーが哀愁漂う声でそうこぼした。
そのプレイヤーの姿は黒髪赤眼の
彼のプレイヤーネームは『
数年前に行われたワールドチャンピオンのみの公式大会では二人ほどチートを使用していたらしいのだが、不知火はその二人に勝利したことで圧倒的な実力を見せつけた。
それにより彼は全プレイヤーからその強さを称えて、『チートにすら勝ってしまう本当の最強』と呼ばれている。
そんな彼は自分のアバターのことを『第二の自分』のように思っている。だがそんな彼も所詮は一人のプレイヤーでしかない為、このゲームの終わりを止めることは出来ない。
「まぁ仕方ないか、最近はプレイヤーのログイン数も減っているし、新規のプレイヤーなんて全く入ってこないし」
一昔前はこのゲームも大量のプレイヤーがログインしていたし、新規のプレイヤーもそれなりに入ってきてくれていた。
それが今では見る見るうちに減少していった。
そのためGMがサ終をする理由も理解できるが、納得できるかと言われたら別の話だ。
どうにかしてサ終を回避したいところだが——
「………今更考えても遅いか」
——なにをしたところでもう遅い、このゲームは日付が変わると同時に終わってしまうのがから。
不知火は視界の端にある現在時刻を確認する。
23:45:48
「……サ終まで15分もないのか」
最後くらいド派手な事をしようと思ったがそれも時間が足りないらしい。
それなら、と不知火はカーソルを操作して自分のステータス画面などを開く。
「最後だし思い出といて写真でも撮っておくか」
そういいながら不知火は自分のステータスを確認すると、ステータスの可笑しさから苦笑が漏れる。
「ははっ…やっぱ強すぎだろ、俺」
そこに映し出されたステータスは以下の通りだ。
ステータス
プレイヤーネーム:不知火
種族:異形種(神人)
属性:中立・善 カルマ値100
種族レベル:神人15.Lv
職業レベル:ソードマン10.Lv
ソードマスター15.Lv
サムライ10.Lv
ケンゴウ15.Lv
ワールドチャンピオン5.Lv
マジックソードマン10.Lv
ウィザード10.Lv
ハイ・ウィザード10.Lv
合計レベル:種族レベル15.Lv 職業レベル85.Lv 合計100.Lv
能力値:HP102.Lv
MP113.Lv
攻撃124.Lv
防御116.Lv
素早121.Lv
魔攻116.Lv
魔防110.Lv
総耐115.Lv
特殊100.Lv
合計1017.Lv
能力値が高すぎると思うかもしれないが、これはバグやチートなどではなく種族『神人』が持つスキルが原因だ。
種族『神人』になるにはワールドアイテムである『神の血』が必要なのだが、それの入手難易度がほぼ不可能レベルなのだ。まぁ、『神の血』に関することはまた今度にさせてもらおう。
(まぁ、今の能力値は本来の能力値を封印している状態なんだけどな)
そう思いながら、右手のそれぞれの指に嵌めている五つの指輪を見る。
不知火の指に嵌めている指輪は『能力値封印の指輪』というもので、不知火は自身の力が強すぎるため、それを封印するために着用している。
装備欄で『能力値封印の指輪』を全て外す。
全て外すと以下の能力値になる。
能力値:HP1020.Lv
MP1130.Lv
攻撃1235.Lv
防御1160.Lv
素早1205.Lv
魔攻1155.Lv
魔防1100.Lv
総耐1145.Lv
特殊1000.Lv
合計10150.Lv
(………やっぱ化け物だな)
自身の化け物能力値に若干引きながらカーソルを操作し装備を元に戻す。
まぁ、『神人』という種族の本当の強さは能力値などではない、なんならこの能力値すら可愛く思えてくるのだが。
「まぁ、どうでもいいか、とりあえずスクショしよ」
パシャ!という写真特有の甲高い音を何度も響かせながら、種族・職業レベルや能力値の写真を何枚も撮っていく。
「よしっ…完璧だな、さて次は
十数枚写真を撮ると満足したので次はスキルを確認するためにカーソルを操作する。
「……うん、やっぱ強すぎるな」
スキルを一通り確認して能力値を確認した時と同じような感想が出てくる。
人間上手すぎる料理を食べるとよい感想が出てこないと聞くが、それと似たような感覚を不知火は今味わっている。
スキル一覧は以下の通りだ。
種族スキル
・限界破壊
・上位エンジェル創造
・中位エンジェル創造
・下位エンジェル創造
・最上位エンジェル創造
・神の僕(主従召喚、能力値上昇、不老獲得)
・聖属性攻撃強化(魔法の場合一位階分、物理の場合二割分upする)
・神威Ⅰ(安堵)
・神威Ⅱ(狂喜)
・神威Ⅲ(崇拝)
・神威Ⅳ(狂信)
・神威Ⅴ(即死)
・エンジェル作成
・エンジェル支配
・エンジェル強化
・聖属性耐性Ⅴ(パッシブ)(完全耐性)
・最上位攻撃無効化(パッシブ)
・状態異常無効化Ⅴ(パッシブ)(完全耐性)
・空間掌握(空間内の無生物を全て操ることが可能)
・神の眼(相手のステータス看破)
・神眼(動体視力を超向上させる)(超光速を視認可能)
・神人の逆鱗(最大威力は不明)(威力調整可能)
職業スキル
・重撃(威力五倍)
・飛斬(飛ぶ斬撃)
・縮地
・縮地・神速
・縮地・超神速
・九頭龍閃
・魔法剣/エンチャント
・次元断層/ワールドシールド
・次元断切/ワールドブレイク
どう見ても強すぎるスキルたちだが、その中でも一際異常なやつが二つある。
一つは種族スキルの一番上にある『限界破壊』だ。
このスキルは能力値を限界なく成長させるという上記にあった異常な能力値の原因だ。
もう一つは、種族スキル『神人の逆鱗』、こいつは最大威力不明というヤバすぎるスキルだ、昔一度だけユグドラシルの運営と会話する機会があった時にこのスキルについて聞いてみたのだが、運営曰く「『神人の逆鱗』を本気で使用すると、そのデータ量に耐えきれずサーバーがダウンします」らしい。
その話が本当かどうかは本気で使ったことがないので分からない、勘違いしてほしくないが、断じて怖くてできなかった訳ではない、断じてだ。
ということでスキルの写真も複数枚撮っていく。
ふとここで不知火は現在時刻を確認する。
23:59:30
…( ゚д゚)ポカーン …( ⊃д⊂)ゴシゴシ …(*゚д゚)エッ?!
………………
………
…
「……ふぁっ!?」
不知火はやってしまったのだ。
能力値とスキルを見たり撮ったりしている間に気づけば残り三十秒もない。いや、あまりの時間の速さに驚いたことでボーっとしていたため、もう十秒もない。
「………終わった」
本来なら能力値やスキル以外にも写真を撮りたいものがいっぱいあったのだ。
位階魔法や超位魔法、権能、神域魔法、装備、インベントリなど。
だが、そんな時間はもうない、こんなことなら内容を確認せずに先にスクショだけでもしておけば良かった。
だが、後悔したところでもう後の祭り、意味がないのだ。
「さっき、ド派手なことは辞めるといったな、あれは嘘だ」
そう独り言のように呟いてから不知火はスキルを使用する。
『神人の逆鱗』
そのスキルを手加減しながら発動させる。
スキルを発動させると不知火のアバターは神々しい破壊の光を放ち、周囲の悉く破壊する。
それを不知火は光の中心から見て、目を閉じながら呟く。
「やっぱ強すぎだろこのスキル」
24:00:00
その言葉を最後に『第二の自分』である『不知火』は終わりを迎える。
————はずだった。
(はぁ、終わったか)
目を閉じてユグドラシルのサ終した現実を受け止めようとしている不知火。そんな不知火を
(……ん?眩しい?)
ユグドラシルを始める前に自室の部屋の明かりは消したはず、というか仮に明かりが付いていたとしてもここまで眩しいなんてありえない。
そう考えながら不知火は目を開く。すると次の瞬間にはその瞳を有らん限り見開くことになった。なぜなら————
「…………は?」
————不知火の視界に広がったのは見慣れた自室の天井、などではなく。
地平線まで広がる平原と綺麗に澄み切った青空が広がっていた。