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私(21号)との対話

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冷凍ブルーベリーを食べたあとの歯磨きで吐き出した青が今日見た中で1番綺麗な色だった。

アルバイト中に手間隙かけて書いた記念日プレートのチョコを一瞬で洗い流す瞬間が今日一番楽しい時間だった。

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なんて、つい一年前のメモに書かれていた。歯磨き粉の種類も、アルバイト先も、居場所も、交友関係も、聴く音楽も、不幸せと思う時間の感じ方も、幸せと思う時間の感じ方も、私(21号)と私(22号)ではまるで違う。

生活の大半が1年でガラリと変わり、感性も環境も全て変わった。

私(22号)が今日見た中で一番綺麗だった色は祖父の家から見た夕焼けのピンクで、楽しかった時間はここに書くまでもない平凡な日常。

平凡が何よりも嫌いだった過去の私達が、私(22号)を見たら何を思うのだろうか。

吐き出した歯磨き粉の色に対して感じた気持ちも、チョコの溶ける感覚に感じた気持ちも、私(21号)の日記を見返すまでは忘れていたし、見た今も鮮明に思い出せるものでは無い。

でも確かに覚えていることは、家に引きこもって孤独な時の歯磨きであった事と、アルバイトに出勤しても誰とも話す気力がなく永遠に洗い物を端でし続けていた時の感情であった事。

どうしようも無い脱力感と孤独をどうにか可愛い言葉でまとめようと、ブルーベリーとチョコに頼っていた。

私(21号)と私(22号)は地続きだけど、違う人なのだと思う。

私(22号)はいい意味で言えば落ち込む頻度が減り、悪い意味で言えば感性が鈍くなった。
私(22号)はいい意味で言えば穏やかになり、悪い意味で言えば自分自身や取り巻く環境に期待する事を辞めた。

本題に入るが、私(21号)が、当時とんでもない感情の波に飲まれながら書いた楽曲が、1年越しに音源を作成し、サブスク配信をする運びとなった。

この曲を次に配信する楽曲にしようとメンバーと話し合い決めた後の私(22号)は、レコーディングに向けて歌詞を再考する事になる。

私(21号)時代を振り返り「こんな気持ちの時もあったな」と少し懐かしい気持ちになりながら、「当時は頭の中が常に情報で溢れていて苦しかったな」と思いながら、「全然変わらず今も同じ感情に飲まれているな」と思いながら。

普段作詞するにあたって、歌詞に至るまでの感情を日記形式でメモに記している。

今回のCARAMEL GiRLSを例にすると「ねえあの大人気俳優が不倫をしたんだって しかもダブル不倫だって」の部分だけの日記はこのように長く綴られている。

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20××年×月×日 日記

実家を出てからはテレビを買っていない。少し見たい気持ちもあるが、実際テレビがなくとも困らない時代だから何も不便はない。

テレビの数十倍も小さいスマホの画面を開けば直ぐに情報(汚れた言葉を使う世論付き)が手に入る。

ここ連日のトピックは誰もが知っている芸能人のダブル不倫の報道だ。

「両親共に浮気だなんて子どもが可哀想〜」とリポストする人が多数見受けられる。確かに子どもが可哀想なのは大前提として、拡散して子どもを更に可哀想にしているのは誰なんだ。

怒りを向けていいのは当事者だけでは無いのか。でも、こうやって世論が騒ぐから当事者の心の平穏が保たれる場合もある事も知っている。

なんにせよ、何も関係ない第三者が匿名で誹謗中傷をする行為は下劣で心が貧しい。どうしたらそんな関係ない人の人生に感情を使えるんだろうか。自分の生活に余裕がないからだろうか。それとも同じ苦しみを味わった事のある人だから自分の事のように捉えざるを得ないのだろうか。それとも本気でそれが正義だと思っているのだろうか。

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歌詞の一文の裏にどのような感情が入っているのかを、このように全部記しておくようにしている。

因みにこの際の日記は物語であり、私の実体験そのままを書いているものでは決してない。勿論、私の考えが大いに反映されており、この日記は私(21号)が感じた事の上から更に私(22号)の価値観を付け加えて完成した日記だ。

私の積み重ねが、この現代を生きるどっかの女の子を構成して、その女の子が一人称目線でどう思っているのかを記している。

設定をアップデートしつつ思い出していき、自然と頭の中で完全な「どっかの誰か」の生活が浮びあげてきた。

最初のシーンは主人公の女の子が足を伸ばしながらスマホを触っていて、黒髪の背丈が高い男の子が隣に座っている情景で………と私の頭の中を説明しようとしたけれど、他の歌詞の部分の日記も出さないと伝わらない上、長くなってしまうのでまた別の機会に書くことにする。

この主人公の女の子は、今回の曲を好きだと言ってくれる貴方の心の中にも存在している女の子かもしれないし、もしかしたら貴方自身なのかもしれない。誰かは分からないけど、確実にこの時代にこの社会を生きる女の子だ。

今回の楽曲は、他の作品より特に昔に書いた日記から引用している。「死んで 死んで 死んで カロリー」という歌詞と、「ベタベタになったナプキンを何百枚も捨ててきた」という歌詞の部分。

これはまだ作曲が出来ずただ必死に日記を書いていた私(18号)が書いた言葉から引用している。これがリニューアルなしの地続きの部分。

日記然り、楽曲然り、当時抱えた感情は文字に残しておいて良かったと振り返る度に思う。

あの苦しみは若さ故か環境故か、平穏の日々を退屈と思わなくなったのは幸福か不幸か。人を他人と捉えるようになったのは自立か諦めか。

過去の文字があるから考える事を諦めずにいる。

昔小説を書いてみたかったが、設定すら思いつかず諦めた。未だに文字を書く才能はないし、長文を描く気力も無ければ知性もない。

でも私が音楽を作るにあたって必須としている形にならない、頭のゴチャゴチャを解放するための日記の蓄積は誰よりもあった。

この世の中に確実に生きている誰かに、この曲を良いものとして受け取って貰えるのだろうかと少し脅えながら楽曲を出す。

でも、きっとこの世の中の泥を感じながら生きる人々が大半の筈だ。きっとこの女の子が抱えた泥を経験してきた人は沢山いる。

生きているだけで丸儲けだなんて全然言えないなと思いながら、感情の波に飲み込まれそうになりながら、皆がどうにか生きているのを知っている。この作品に書いた女の子が、この世の中のどこかにはいると知っている。

その大半のうちのほんの一部でいいから、同じ気持ちを抱える人と楽曲を通して出会えるのであれば、真っ直ぐにひねくれた曲を作る者冥利に尽きる。



私(21号)との対話/CARAMEL GiRLSを通して。


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「CARAMEL GiRLS」歌詞

キャラメルがとけたドロドロ ドロロ
キャンディがとけた ベタベタ

「ねえあの大人気俳優が
不倫をしたんだって、しかもW不倫だって」
ドロドロドロロ

テレビはもう見ない
ネットニュースは中傷ばかり

ねえ私とちゅーしよ

「子どもが可哀想」
可哀想にしたのはお前の書き込み
ベタベタベタベタ

食べたい 食べたい 甘いもの
死んで 死んで 死んでカロリー

お化粧が落ちた ドロドロ ドロロ
汚いゲロ踏んだ ベタベタ

女の子はいつだって
ドロドロを抱えていて

ベタベタになったナプキンを
何百枚も捨ててきた

ドロドロに愛したい
ベタベタに愛したい

誰よりも女なガールズバンド
CARAMEL CANDiD

しゃぼんだまぽっけにいれて
ベタベタになったお洋服

暑い夏にはアイスを
ドロドロになった手を舐めて

舐めて 舐めて 舐めて 舐めて
舐めてあげるから 舐めて
舐めて 舐めて 舐めて 舐めて
でも 私の事は 舐めないで

ドロドロドロドロロ
「ガールズバンドってだけで
注目を浴びるからいいよな」

ドロドロドロドロロ
同世代のバンドマンに言われた

ドロドロドロドロロ
「可愛い服装で誤魔化すな音楽で勝負しろ」

ドロドロドロドロロ
何もしてない評論家にも言われた

くたびれたTシャツしわくちゃなズボン
ありふれた歌詞にありふれたバンド
一生お前はそれでいろよ

あんたは絶対に私たちを忘れない
あんたは絶対に私たちを忘れない
あんたを絶対に私たちは忘れるけど
あんたは絶対にCARAMEL CANDiDを忘れない

相手にもうしない
レッドカードの重症ばかり

ドロドロに愛したい ベタベタに愛したい

キャラメルがとけた ドロドロ ドロロ
キャンディがとけた ベタベタ

CARAMEL CANDiD ドロドロ ドロロ
キャンディはとけた

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私(21号)との対話|^. .^ ੭(おと)
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