■令和の大学を考える

「日本一のマンモス校」である日本大学は、スポーツや芸術方面にも強く、大勢の著名な卒業生を輩出しており、大きな存在感を示してきました。ただ、この数年の不祥事の影響で、志願者は減っています。「再生のカギを握るのは全国にある日本大の付属高校」と見る教育ジャーナリストの小林哲夫さんが、日本大の行方を分析します。(写真=日本大学芸術学部、2024年、朝日新聞社撮影)

学生数は国内最大

日本大学は元気がない。

一般選抜志願者数は2024年度、7万5839人だった。それ以前の志願者数は次の通り。

21年度9万7948人
22年度9万3770人
23年度9万8506人

9万人台を推移していたが、24年度は2万2500人以上も減らしてしまった。

これほど志願者数が激しく落ち込んだ背景には、日本大が引き起こしたいくつかの不祥事(元理事長の背任、重量挙部、陸上競技部、スケート部指導者らによる横領疑惑、アメリカンフットボール部員やラクビー部員の薬物使用問題など)があるといっていい。受験生に二の足を踏ませてしまったようだ。

それでも日本大は国内最大の大学である。学生数6万6871人(24年5月1日現在)は日本一であり、2位の早稲田大3万8040人(同)を大きくリードする。

なお、学部数は東海大が23、日本大が16、近畿大が15となっている。日本大の学部定員が、他大学に比べて多いことが学生数日本一になった要因である。たとえば、法学部1733人、文理学部1900人、理工学部2030人。1つの学部だけで大学が2つも3つも入りそうな規模だ。

下支えするのは、全国にある付属校

一方、こんな見方もできる。

日本大の学生数日本一は、全国に広がる付属校の存在が大きい――。現在、日本大には14都道県に26の付属校がある。当然、付属校から多くの生徒が日本大に進んでいる。

大学付属校から系列の大学への入学者について興味深いデータがある。付属校からの大学入学者数ランキングである。

(付属校からの内部進学ランキング『大学ランキング2025』朝日新聞出版から)

大学入学者に占める付属校からの入学者比率ランキングは以下だ。

(付属校からの内部進学ランキング『大学ランキング2025』朝日新聞出版から)

かなりおおざっぱにいえば、日本大の学生数6万6871人のうち28.8%にあたる約1万9000人は付属校からの入学者ということになる(医、薬学部は6年制)。

日本大を支えてきた付属校を見てみよう。

 

<北海道、東北>

札幌日本大学高校・中学校(北海道北広島市)
日本大学山形高校(山形県山形市)
日本大学東北高校(福島県郡山市)

 

<関東 東京以外>

岩瀬日本大学高校(茨城県桜川市)
土浦日本大学高校(茨城県土浦市)
土浦日本大学中等教育学校(茨城県土浦市)
佐野日本大学高校(栃木県佐野市)
佐野日本大学中等教育学校(栃木県佐野市)
千葉日本大学第一高校(千葉県船橋市)*
日本大学習志野高校(千葉県船橋市)
日本大学高校(神奈川県横浜市)*
日本大学藤沢高校(神奈川県藤沢市)*

 

<東京>

日本大学第一高校(墨田区)*
日本大学第二高校(杉並区)*
日本大学第三高校(町田市)*
日本大学櫻丘高校(世田谷区)
日本大学鶴ケ丘高校(杉並区)
日本大学豊山高校(文京区)*
日本大学豊山女子高校(板橋区)*
目黒日本大学高校(目黒区)*

 

<甲信越、東海>

長野日本大学高校(長野県長野市)*
日本大学三島高校(静岡県三島市)*
日本大学明誠高校(山梨県上野原市)
大垣日本大学高校(岐阜県大垣市)

 

<九州>

宮崎日本大学高校(宮崎県宮崎市)*
長崎日本大学高校(長崎県諫早市)*

*は中学校を設置

なかなか壮観である。西日本は少ない。関西圏は皆無だ。

なお、これらの付属校はすべて日本大が一から作ったというわけではない。他校を統廃合して生まれた付属校もある。

日本大学山形高校は1958年に山形第一高校として開学した。だが、62年に同校学校法人と日本大が合併して日本大学山形高校になった。長野日本大学高校は1959年に長野中央高校として開学。62年に日本大の準付属高校となり、88年に長野日本大学高校となった。

日本大の付属校はかつて男子校が多かった。千葉日本大学第一高校、日本大学第一高校、日本大学第二高校、日本大学第三高校、日本大学高校、日本大学三島高校などである。

しかし、少子化を見据える、生徒の志向や多様性に対応するなどで、女子を受け入れるようになった。これによって日本大の女子学生が増え、学生数日本一を安泰なものにすることにつながっていく。なお、現在、男子校は日本大学豊山高校、女子校は日本大学豊山女子高校となっている。

2002年に生まれたのは、岩瀬日本大学高校である。もともとは1974年に土浦日本大学高校の分校として開設されたが、ここから独立した形だ。

19年には目黒日本大学高校が発足した。前身は日出女子学園高校、日出高校である。少子化で生き残りをかけて大学付属化の道を選んだといえる。日本大も付属を増やして優秀な生徒を多く受け入れたかった。

なお、日出女子学園高校、日出高校からは多くの芸能人を送り出している。山口百恵、新垣結衣、仲間由紀恵、のん、竹内涼真、仲野太賀、福士蒼汰など。日本大芸術学部との親和性が高くなれば、芸能分野での高大連携が成り立ってしまう。23年度、目黒日本大学高校から日本大芸術学部の合格者は18人だった。

付属校から、他大学へ進学する場合も

日本大の付属校だからといって、みながみな日本大に進むわけではない。

日本大学櫻丘高校は特別進学(S)クラスを設置しており、「日本大学難関学部・学科(医・獣医)・最難関私立大学への進学を目指す」と掲げている。同校は進路について 「国公立・早慶上理・GMARCH・関関同立の合格者数が大躍進!」と記している。24年、国公立大に9人、早慶上理に7人、GMARCHには95人が合格している。日本大進学者378人(72.2%)、他大学進学者(短大、専門学校を除く)は133人(25.2%)だった。

日本大櫻丘高校にすれば、「!」を付けるほど強調したかったのは、難関校合格実績をアピールし、優秀な生徒を1人でも獲得したいという思いからだろう。

日本大は、付属校から優秀な学生をできる限り多く受け入れたい。日本大の付属校は、系列の大学進学をアピールするだけでは不十分ゆえ、難関大学合格実績を掲げ、多くの優秀な生徒に選んでもらいたい。

少子化が進むなか、一部の大学では付属校との間で微妙な空気が流れている。

日本大に限った話ではない。東海大、近畿大など大規模大学、そして志願者が減少している女子大学では、大学、付属校関係者はなかなか悩ましい。武蔵大、久留米大、フェリス女学院大、神戸女学院大のように付属校、系列校が超進学校化しているところは、大学としても付属校の存在感を尊重している。大学と付属校は別ものというドライな見方ができる。

日本大は当面、学生数日本一の座が脅かされることはないだろう。法、経済、商、文理など人文社会系学部、理工学部、医学部、芸術学部などはさまざまな分野でキャラが立つ人材を輩出してきた。それによってブランド力の強みは生かされている。

だが、油断は禁物である。少子化の時代にあって何が起こるかわからない。各地の付属校で日本大を避け、他大学を志向する動きが一気に出てくることもあり得る。

日本大は不祥事のダメージをかかえたままだ。いわば風邪をこじらせた状態が続いている。 日本大が元気になる処方箋の1つとして、付属校からより元気な学生を受け入れることがあげられよう。

付属校から日本大芸術学部に進んだ芸能人には、本仮屋ユイカ(日本大学第一高校)、伊藤蘭(日本大学第二高校)、立川志らく(日本大学第三高校)、佐藤隆太(日本大学櫻丘高校)、あおい輝彦(日本大学鶴ケ丘高校)、神田正輝(日本大学高校)などがいる(カッコ内は出身高校)。なるほど、日本大の付属校は人材の宝庫だ。

芸能人ばかりではない。24年、会社社長出身大学のランキングでは日本大1万9974人でトップとなった(東京商工リサーチの調査)。

このなかで、付属校出身者の社長は少なくない。たとえば、グリーホールディングス株式会社の創業者で社長の田中良和は日本大学鶴ケ丘高校から日本大法学部に進んでいる。

日本大離れを起こさせないために、まず、付属校からの信頼を得るしかない。小学生、中学生から「日本大に進むために付属校に入った」と言われるためにも、日本大は早く病気を治してほしいものだ。

>>【連載】令和の大学を考える

(文=小林哲夫)

プロフィル
小林哲夫(こばやし・てつお)/1960年、神奈川県生まれ。教育ジャーナリスト。大学や教育にまつわる問題を雑誌、ウェブなどに執筆。『大学ランキング』(朝日新聞出版)編集統括。『日本の「学歴」 偏差値では見えない大学の姿』(朝日新聞出版・共著)ほか著書多数。

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【写真】志願者が減少傾向の日大 再生のカギは全国26校の付属校の存在か

(付属校からの内部進学ランキング『大学ランキング2025』朝日新聞出版から)
(付属校からの内部進学ランキング『大学ランキング2025』朝日新聞出版から)

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