カスタマーレビュー

  • 2016年10月26日に日本でレビュー済み
    2012年に「ワークシフト」で未来の働き方を提示したロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏と共著者が、平均年齢100歳の長寿化時代「100年ライフ」を予測し、それを乗り切るための心構えをアドバイスした一冊です。

    グラットン氏は、人間の余命は年月と共に伸びることを前提とした「コーホート平均年齢」を元に、2007年生まれで今8歳の子供は平均寿命が105歳前後となると予測しています。同じく、今20歳の人は平均寿命100歳、40歳の人は平均寿命95歳になるとしています。
    この長寿化により、長い時間を生きるためにより多くの貯蓄が必要となるため、特に若い世代は、老後の資金計画の変化を迫られます。これまでの人生の3ステージモデル(20年間教育を受け、45年間働き、リタイアして老後15年間を過ごす)が成り立たなくなる、と提言しています。なぜなら、同じスタイルでは65歳のリタイア後、40年間老後を過ごすための資金を用意できない危険性が高いからです。裏を返せば、莫大な老後資金を用意するためには、働いている間に実現できそうもない貯蓄をしなければならない、ということです。

    そして、この現実と向き合うためには、我々がこの現状を良く認識し、そのために準備する必要がある、と提言しています。例えば、3ステージの従来パターンからマルチステージ型の働き方に移行してAI・人工知能時代にも対応すること、有形資産(お金など)と無形資産(スキル・知識・仲間・健康・家族・友人関係など)を増やすために今からそれぞれ投資・管理していくこと、金融リテラシーを身に付けること、家族や友人関係を見直すこと、などです。

    読後感として、自身のこの先の将来についての認識が大きく改まりました。高齢化社会・長寿化の懸念は日本でも言われて久しい感がありますが、実際にこの本のように「あなたは100歳まで生きる可能性が高いですよ」と言われるほうが、ストレートでピンときます。ならば、引退後の35年~40年生きるだけのお金や人との関係が本当にもつのか?と。
    そしてそれとともに、良い意味で、何とも言えない重苦しいものを感じました。グラットン氏はあくまで「長寿化は“不快で残酷で長い”呪いのように感じられるが、心がけと備え次第でチャンスにもなる」と、様々な視点から希望を示そうとしています。これは大きな励ましですが、それにしても長寿化の予測がもしこの通りであれば、特に若い世代には非常に厳しい現実が待っている、とうならずにはいれませんでした。(実際にビジネススクールの授業でも、重い沈黙が流れるとのこと)自身には1歳の娘がおりますが、何も知らない無邪気な笑顔をみていると、いたたまれないような気分に・・

    特に、長寿化時代を乗り切るマルチステージ型の働き方として提示されているものは、エクスプローラー、インディペンデント・プロデューサー、ポートフォリオワーカーという3モデルですが、いずれも従来の1つまたは2~3の組織で働いて引退する働き方とは一線を画するものです。働かない“遊び”の期間をあえて設けて経験や知識を吸収し、企業に所属したりしなかったりを自由に行き来し、どこからも欲しいと思われるスキルや専門知識を備えた人材になる、というのがそのイメージとして挙げられています。
    そして、それは既に人々の中で始まっているとしていますが、その実例として挙げられるものがロンドンビジネススクールを初めとした欧米トップエリート校のビジネススクールの学生や卒業生の動向ですので、日本の一般的な会社員・社会人の層と比較して、やや縁遠い印象を受けてしまいました。確かに正論であり理想的、合理的なスタイルではありますが、著者自身も述べているように、いずれも大きなリスクと隣り合わせの生き方です。もし鵜呑みにして近々会社を辞めようか、などとやってしまうと、高い確率で取り返しのつかない目に合うのではないでしょうか。(著者自身も、そのリスクともよく向き合い、しっかり戦略を立てることを勧めています)そして、長寿化時代には貧富や所得の格差がそのまま老後の格差につながる可能性が高い、という点も見逃せません。

    ただ、それでも本書から得られる示唆は多く、長寿化時代と対応する提案を意識することで、人生の様々な岐路でのひとつひとつの判断はより良いものにできる、と感じました。特に、人間が目先の欲求に屈して将来の計画をおろそかにする“双曲割引”(いわゆる先延ばし)の傾向があるため、セルフコントロールが必要だという指摘には共感を覚えます。

    「ここで問われるのは、未来に得られるかもしれない恩恵のために、今厳しい決断ができるかどうかだ。(p.363)」

    思い出したのは、知人から教えられたマハトマ・ガンジーの言葉です。
    「Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever.(明日死ぬかのように今日を生きなさい。そして、永遠に生きるかのように学びなさい。)」
    100歳まで生きるかのように学び計画し、そして明日死ぬかのように、今日を精一杯生きて先に備える。
    厳しいながら、将来の見通しを改め、備えを促してくれる良書です。あらゆる世代、とりわけ若い世代の方々にはぜひご一読をお勧めします。
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