ダンまちSS


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作:捕獲用プリンセスレイピア
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ヘイズ・ベルベットは癒されたい


なんかキャラが違うかも


ダンジョンに赴く冒険者が絶えないように、彼らをもてなす酒場もまた休みを知らない。

したがって酒場で働くウェイトレスにも休みは無いのである。

 

「あーもう無理です。連れてこられてからずっと働きっぱなしじゃないですか?せっかくアンドリフリームニルからの仕事から解放されたっていうのに…」

 

薄紅色の髪を二つに結んだ美女、ヘイズ・ベルベットも過酷な労働環境に疲れ切っていた。

 

「冒険者は下品な目で見てくるし、シル様は竈火の館に遊びに行かれて顔を合わせる機会があまりないし、そもそも仕事量も異常です!」

 

「ヘイズ、騒がしい!気持ちはわかりますが寝れないでしょっ!ていうか貴方が過労なんて何を今更言っているの!?」

 

彼女の相部屋で元同僚かつ現同僚であるヘルンがこちらを睨みつけるがそんなもの知ったことではない。確かに以前もマインドギリギリまで回復魔法を行使して大人数を賄う食事の用意も行っていたが、あの頃はフレイヤ様のためという大義があったし実際フレイヤ様に労いの声をかけて頂くこともあったのだ。

 

「もーこの際ヘルンでもいいです。ちょっとこっち来てください!」

「ヘルンでいいって何なの!…まあそれで気が済むならいいけど」

 

ヘイズは自分のベッドをポンポンと叩いてヘルンを呼んだ。渋々と言った形でヘルンはそれに応じる。タイプは違えど絶世の美女が隣同士に座る光景は男が見れば一生の思い出になることに違いなかった。

 

「それで?私は何をすればいいの?」

「とりあえず変身魔法でフレイヤ様になってー子猫をあやすようによしよししてくださ~い。話はそれからです」

「・・・はあ?私が本気でそんなことすると思ってるの!?」

「ホームから貴方のお気に入りの下着まで奪われてしまってー、これ以上何か減るわけじゃ無いですし、いいじゃないですかー。もう限界なんですよー私」

「…貴方も知っての通り、女神フレイヤはこの都市を去ったの。例え魔法とはいえこの都市にフレイヤ様がもう一度現れるようならそれはフレイヤ様を侮辱しているのと同じです!」

 

一理あると思ったのかヘイズは口をつぐむ。ヘルンも収まったと思ったのか自分のベッドに帰っていった。

 

次の日、珍しく客が少ないものの、それはそれでやることはあると細かいところの掃除や備品、食材の買い出しなどの仕事を与えられていた。

慣れない仕事に手間取っていたヘイズだったが「ヘイズ、ちょっとこっち来るニャー」とアーニャに呼び止められた。

 

「何ですかー?今ちょっと忙しいんですけどー」

「ヘイズ今がチャンスなのニャ。この好機を逃せば次いつ来るか分からないニャー!」

「えーっと、何の話です?」

「コラ馬鹿猫!ちゃんと説明しないと分からないでしょ!」

「お客が少ない時はサボってもミア母さんあんまし怒んないし、ミャー達も困らないニャ」

「つまりサボれってことですか?そういうの柄じゃないんですけどー」

「そーいう事ニャ!ホラ、分かったらさっさと行くニャ!」

「ここでは休みは自分でつかみ取るものニャー。向こうから歩いてくることなんて無いのニャ」

 

緑色の制服を着たまま、追い出されるように豊穣の女主人を飛び出した。戦いの野ではありえなかった自由時間で宙ぶらりんになったようだった。

 

「お財布は寮の部屋に置いてきちゃいましたし何でも買えたファミリアの証文も今では何の意味もないですしー」

 

ダンジョンの上層にでも行ってちゃちゃっと小銭を稼いでもいいがせっかくの休みにそんなことするのは何か違う気がする。

そんなこんなで歩いていると、見覚えのある白髪を目の端に捉えた。

 

「わーベルじゃないですかー。早速ですけど何か奢ってくださいよー」

「え!?へ、ヘイズさん!?それに奢ってってどういうことですか…?」

「まーまーいいじゃないですかぁ。とりあえずジャガ丸くんが食べたいですねー」

「ジャガ丸くんって…それぐらい、ヘイズさんなら奢らなくても買えますよね?豊穣の女主人で働かれてる筈じゃあ…」

「あーもう、ベルったらそんなんじゃ女の子にモテませんよー。いいですか?女の子が奢ってって言ったら、男の子は有無を言わずに奢るもんなんですよー。ヘディンさんにも教わったんじゃないんですか~?」

 

そう言ってヘイズはベルの鼻先を指でつつく。ベルは他人から見れば十二分にモテているのだが、ベルに「モテてます!」なんて返答する気概はなく、たじろぐしかなった。

 

「おいアレ【魔女の黄金】と【白兎の脚】じゃねえか!?なに大通りの真ん中でイチャついてやがんだ…!」「この前エイナちゃんと食事してたのは遊びだったのか!?」「俺はべっぴんの狐人と歩いてたの見たぞ!」

 

騒がしくしすぎたのか、そうでなくても一目を惹く彼女たちに気づいた人々が口々にあることあることを言い出した。

 

「…へぇ~。ヘルンが言ってたみたいに可愛い見た目してやることやってるんですねー。ビックリしちゃいました」

「いや!?あの…あれは違くて!いや違わないんですけど!何というかそんな気はなくってぇ!?」

「まぁ、フレイヤ様があそこまで求めるぐらいですしー。モテないはずがないですねー」

 

ヘイズがジロリと睨んだような顔をすると、ベルは慌てて弁明しようとする。

ああは言ったが冒険者らしくない彼の言動にヘイズは笑みを漏らす。

 

「じゃあベル?そんな貴方にお願いです。疲れた私をどうか癒してくれませんか?」

魔女が浮かべた聖女のような眼差し。両手で手を握ってお願いしてくる彼女に今度こそベルはたじろぐしかなかった。

 

女心に疎い少年は、疲れた女性を癒すなんて芸当を即興で行えるはずもなく。とりあえず近くにあった露店で二人分のジャガ丸くんを彼の主神に睨まれながら購入して思案した結果、一つの方法にたどり着いた。

 

ヘイズは寝かされていた。ベルは短い冒険者生活の中で疲れを取るという目的において睡眠の右に出る者はいないと確信していたのだ。

ただし彼女が寝ていたのはベッドの上でもなく、柔らかい芝生の上でもなく、少年の膝の上。

 

普通の女性なら衆目に晒されながら膝枕の上で寝るなんて恥ずかしくて断るところだが、そこは【魔女の黄金】。

大戦で衣服を焼き尽くされながらも味方を回復し続けた彼女が羞恥するには至らなかった。

 

「少し前にモンスターが地上に現れたって騒ぎがあったのを覚えていますか?」

「覚えてますよ。あの時は「強靭な戦士」の皆さんもざわついてましたからねー。あの兎がとうとう地に堕ちたってそれはもう喜ばれてー」

「僕は自分がどれだけ傷ついても構わないってそう思ってたんですけど、ファミリアの皆にまで汚名が及んでしまって、正義感と不安と後悔とでぐちゃぐちゃになってたんです。」

「・・・」

「その時、ここでシルさんが僕に膝枕をしてくれたんです。励ましてくれて、応援してくれて、とても元気が出ました。」

「…急に自慢ですかー?俺はこんなことまでしてもらったんだぞ的な~?」

「違いますよ!?ただちょっと元気になってもらいたいなって思って!」

「ふふっ。冗談ですよ、じょーだん。…ありがとうございます」

 

それだけ言うと彼女は規則正しい寝息をたてて眠ってしまった。ベルを監視しているダークエルフの魔法剣士も、お世話になった彼女の休息を邪魔するようなことはしなかった。

 

「ふぅ。よく眠れましたー。おはようございます、ベル」

「はいおはようございます。ヘイズさん」

 

太陽は完全に沈んでいないが、日暮れと言っても差支えはない。ちょうど、戦士たちの「洗礼」が終わる時間。

冒険者たちも探索を終え、酒場が混みだす時間でもある。

 

「私の心も体もフレイヤ様の物です。ですが、少なくとも表向きではフレイヤ様はこの都市を去りました。」

「…はい。」

「ですから、あの方がいないうちは私の心も体も私のものです。」

「…はい?」

「見てないうちは自由ってことですよー。ほら、ちゅーしてあげましょうか~?」

「えぇ!?ちょ、ちょっと待ってください!何でそうなるんですかー!?」

 

ヘイズはからかうようにベルに抱き着いた。頬を赤くする彼につられるように、ヘイズも頬を赤く染めた。

桃色の瞳と深紅の瞳が見つめ合う。

 

「ヘイズさん、それにベルさんも!こんなところにいたんですね!」

「「あ」」

 

そこに、仕事をサボって帰ってこないヘイズを探しに来た彼女の同僚ーーシル・フローヴァが声をかけた。

まるで、これ以上は見過ごせないという風に。

 

「そろそろ帰らないと、ミア母さんが怒ってしまいます、というかもう怒っています!」

「…ええ。そうですねー。一緒に られましょう」

 

「ベル、今日はありがとうございました。また酒場で」

「はい。僕もいい息抜きになりました」

 

薄紅色と薄鈍色の髪の娘たちは手を繋いで彼女たちのホーム、酒場へと帰っていった。

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