「ベル…これで本当に足りる?今ならハイポーション10本セットがこの価格だよ?ベルはお得意様だからマインドポーションもおまけしてあげる。」
「青の薬舗」にダンジョン探索の為には欠かせないポーションを買いに来た僕とリリはその店員たるナァーザさんにもはや恒例行事となった交渉をされていた。僕としてはいつもお世話になっているし、次の冒険はインターンで来たニイナを入れての初めての探索になるんだから余裕を持って買っておいてもいいと思うんだけど…
「ナァーザ様、これはファミリアの財政を握るリリとの商談です!優しいベル様に付け込まないで下さい!」
なんてリリに一蹴されていた。
お金が関わることでリリを説得することの難しさをその身で十分味わっているからか、いつもはここで引き下がるナァーザさんは今回ばかりは違ったようだった。
「回復魔法が使える【疾風】が加入して節約したい気持ちは分かる。でも…流石にこれじゃ少なすぎると思う。迷宮のイレギュラーを舐めたら取り返しがつかないよ。」
ナァーザさんはその新調した銀色の義手を見せて、まだ迷宮都市に来て一年と経たない僕でも痛いぐらいに聞いた、ダンジョンのイレギュラーの危険性を説いてくる。
もちろんポーションを売って儲けたい気持ちもあるだろうが、これも彼女の本心なのだろう。ニイナのインターンを知らない彼女からすれば確かに調子に乗ってるように見えたのかもしれない。
「ナァーザさん、実は「学区」から新しくヒーラーの子がインターンに来たんです。ヒーラーなのにもうレベル2で、とっても頼りになって、、、!」
分かった分かったと僕を制止したナァーザさんは続けてこう言った。
「新しい子が来たら私たちは用済みなんだ。」
「ちょっ!変なこと言わないでくださいよ!」
「違わないでしょ?もうベル無しじゃ私たち…生きていけない。お腹すかせてもいいの?…ミアハ様が。」
お得意様だった僕たちの買い物が予想よりも少なかった腹いせか、僕を困らせようと爆弾発言をまき散らし始めた。こんな事通りがかった神様達や冒険者に聞かれたらすぐにオラリオ全体に吹聴されるだろう。
慌てて店の外に誰かいないか確認した僕に犬人の店員は笑みを浮かべたのだった。
「…リリルカ、今の話本当?ヒーラーのインターンが来たってやつ。」
一方、隣で様子を見ていたダフネは少々気になったことがあったので、小人族の少女に尋ねることにした。
「へぇ、その割にはテンション低いじゃん。前から言ってたでしょ?後衛と治療師がいたら完璧ーって。」
「それはそうなんですけど、その子はベル様が学区でたぶらかして来たんですよ!絶っっっ対!100%!ベル様に惚れているに決まっています!しかもハーフエルフで!リリから見てもとっても美人だし!」
「ああ、そういうことね。でも良かったじゃん、専門のヒーラーなんてそうそういないよ?」
「ええ、分かっています!背に腹は代えられませんしお金にも代えられません!」
派閥大戦に勝利したとはいえ、ファミリアのランクはB。これからも楽にはならないだろうファミリアの財政を考えて、または超大型新人のマインドを火力につぎ込むために、彼女は非常に、そう非常に度し難いがハーフエルフのヒーラーを迎え入れることにしたのである。
「それにしてもヒーラーかあ。」
専門のヒーラーと言えば前のファミリアからの友人であるカサンドラを思い浮かべてしまう。前のヘスティアファミリアの遠征では連合として意中の彼と一緒に居られてうれしそうにしていたが。
(また悪夢とか言って落ち込むんだろうなあ…)
どうやって友人を励まそうか、今から頭を抱えてしまった。