和田彩花「パートナーが私を変えた」アイドル活動で“家族”がわからなくなっても
私に生きるヒントをくれたパートナー
そんな私を大きく変えたのは、パートナーの存在だ。 生きた民主主義のある場所で育ったパートナーは、私をどの属性にも当てはめずに、役割を押しつけることなく、私が私でいることを楽しんでくれた。 私がぐいぐい引っ張って、ニコニコしながら横にいてくれるのがパートナーだった。 時々、親子の立場が逆転する我が家では、いつも私が怒っていた。親にも妹にも。私は、精神的な自律が足りないと感じる人へきつく当たった。 もっとこうしたらいいのに、もっとこうならなければいけないんじゃないって怒るたびに、パートナーは「親が元気なだけでいいんじゃない」と言った。私の興奮を、厳しさをうまく突き放した。 優しさを学んで生きてきた私には、生まれ持った優しさを持つ人を前に何も言えない。いつも、ハッとさせられる。私に足りないもの。 「私」として生きることが難しく、個人主義を徹底的に排除したように感じてきたアイドルの世界で感じた苦痛は、苦労から脱却するのにずいぶんと時間がかかる。家族というひとつのテーマにしたって、これだけ心は複雑になってしまっていてどうしようもない。 「私」を守るためには、世間が私を女に当てはめる結婚・出産から遠ざからなければいけなかった。そうやってでしか私の心の自由を守れなかった。 しかし、パートナーはそんな私に人としての時間を、生きるヒントをたくさんくれた。 人と一緒に時間を過ごすこと、休むこと、だらけること、おいしいものを食べること、ひとりきりで生きる必要はなく、誰かに頼っていいこと、やりたくないことはやらなくていいことのすべてを教えてくれた。 パートナーと一緒にいるとき、初めて心に平穏を感じた。社会的に当てはめる何かと争う必要もなかった。 初めて、この社会でどうあらなければいけないかではなく、自分がどうありたいかを考えられるようになった。同性婚も、夫婦別姓も、早く実現させてほしいといつまでも言い続けるけど。