ジオキャッシングを始めた

キモい日記 読まないでくれ
 都市はつまらなくて、秩序に満ちている。都市の風景は平凡で、面白いことなんて何ひとつ起きない。都市はイレギュラーの存在を許さない。都市において変な行動をしている者は変な人物であり、街の統制にデカい影響を及ぼす。都市における自由な行動とは、安全性への冷笑であり、同質性を持った群衆への脅威である。東京くらいデカい街ではどうなのかわからないけど、自分の住んでいる地方都市にはそういう空気が確実に充満していた。あるいは東京でもカチッとしたビジネスマンばかりが歩いている通りはそういう空気がするのだろう。10月31日にトラックを横倒しにするというあの渋谷の祭りはそういう街の空気への反動なのかもしれない。

 都市をつまらなく感じるのはお前が都市を面白く感じられる知性も感性もないだけだろ!とか、お前がいうほど都市って不自由じゃないだろ!みたいな批判も脳内で飛び交っているし、実際には自分がボッチだから都市の一番楽しい部分へアクセスできないだけかもしれない。が、とにかく昔から自分はそんな都市をプレイルームにしてやりたいと思っていた。自分みたいな凡庸な幼稚さを持った人間が大勢集まるとファイトクラブとかジョーカーみたいになったり、渋谷でトラックを倒したりするんだろう。そういうのに憧れる気持ちの悪い人間の気持ちはすごくわかる。でもそれはヴァンダリズムだ。そうならないために、遊びは孤独に行われなければならない。そうして自分は都市の中での「秘儀」の可能性について考えるようになった。また、ホドロフスキーも言うように、そういう衝動は破壊ではなく創造に向けなければならない。群衆に溢れる偽物の秩序や、誰にでも理解できる論理的な理由(例えば、売れるからといった理由)のないものの存在を許さないという空気への攻撃を、破壊ではなく創造的な形で行えるのは「遊び」だけだろう。遊びは規格と広告とマーケティングに溢れた都市文明に残された唯一の抜け道だ。例え自己満足で終わったにしても、言葉ではなく行動で示す必要がある。

 自分は昔から、街の中に何かを隠す遊びをよくやっていた。それは誰かに宛てたメッセージカードだったり変なポエムだったり、QRコードだったりした。そういうものを公共施設のトイレの裏、橋の下、崩れたコンクリートの中など、誰も発見しないような場所に隠していた。まだやってはいないけど暗号を隠したり改造ファービーとかLEDボードとかを置きたいとも思っている。(電光掲示板に詩が流れるというのはジェニー・ホルツァーがすでにやってるから、どうしてもパクリになりそうだけど……)こういうのは見つかるか見つからないかわからないスリルや、見つかったとしても意味がわからないという点でインターネットに変な文章を放流するより遥かに面白かった。

 実は、そんな都市の中での宝探しは市民の知らないところで大々的に行われている。
 ……それがジオキャッシングである。ジオキャッシングとはアプリを介して行われる宝探しゲームである。マップで指定された場所を探すと本当にモノが隠されていて、それを隠したアカウントに報告するという遊びだ。見つけたモノは回収してもいいが、同価値のものと交換するというルールらしい。マップ上にある架空の旗とか、ARのポケモンとかじゃなくて紛れもなく本物の箱に入った物を見つける。その物質性がいい。

 とか言いつつ、自分はそれを知らなかった。(知っている人は何を今更と思っただろうが、自分は今日これの存在を知ってかなり感動した)結構昔から世界的に流行っていたようで、そういうものがもしかしたらあるんだろうな/あったらいいなという願望はあったけれど、本当にそういうゲームが流行っているのは知らなかった。
 インストールして会員登録してみる。すると全然そういった遊びとは無縁そうな、変な田舎である〇〇市にも何ヶ所か登録してある。隠す側の人間もなかなかセンスがあって、アートのそばとか歴史的な事件現場とか、行く価値のある場所に隠していたりする。

というわけで一番近い現場に行ってみた。
……暗くて何も見えなかった。

 後日改めて行ってみようと思う。
 ツイッターをやめてから外に出る趣味を探していたけど、ポケモンGOはあまり興味が持てなかったので、これはいい趣味になりえると思う。やっぱり俺って物質の世界が好きなんだ。
 これを趣味にしたところで、都市へのささやかな攻撃になるわけではないし、GooglePlayで配信されているアプリの上で行われる、不審者がられたり警察が来ても「こういうゲームをしているんです」と説明ができる安心安全なゲームであるという点で、野良で行われるインディーズの変な行動には決して勝てないだろう。アートが資本主義を拠り所にし、落書きでさえ価値が説明されるという時代にあって、これだってそういう「パッケージされた変な行動」という意味で同類なのでは?と思ったりもする。オルタナティブやアウトサイダーはいつからか今までにない市場価値を強調するための記号になっちゃったのかもしれない。残念ながら最初からかも。どれだけ変でも売るための記号になってる以上、アンダーグラウンドってないんだ。(と絶望しつつ、そうじゃないんですよという声も頭の中でしている)まあ、それでもこういう都市の自由が大っぴらに行使できるのはある種の良心だと思う。とりあえず続けてみよう。


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