そのハイパフォーマンスは乗り手を選ぶ「毒牙」だった
2025年2月末に米国フロリダ州コーラルゲーブルズで開催されるRMサザビーズのオークションに、1963年型のシェルビー「289コブラ」が出品されます。どんなクルマなのでしょうか。
シェルビー・コブラは、スーパーカーブームが巻き起こる以前の1960年代初頭に登場した、英米合作のスーパースポーツカーです。
アメリカ人のキャロル・シェルビー氏が、英国のACカーズにフォードのエンジンを供給する代わりにボディとフレームを供給させて製作しました。
車名の289とはエンジンの総排気量(289キュービックインチ=約4.74L)に由来しています。
軽量なボディにパワフルなエンジンを搭載し、熟練ドライバーが操れば信じられないようなパフォーマンスを発揮しましたが、その名のとおりドライバーが油断すると毒牙に襲われるほど操りがたいクルマでした。
ここで紹介するシャシナンバー「CSX 2134」は、波乱の生涯を送ったコブラです。
ACカーズで製造されたCX2134は1963年6月にニューヨークに向けて船で運ばれ、シェルビー・アメリカンでエンジンとシャシをアップグレードされました。
当初はオフホワイトのボディにレッドのトリムで仕上げられ、ホワイトのサイドウオールタイヤとラゲッジラックを装着していました。
このクルマは、のちにフォード・レーシングのディレクターとなるジャック・パシーノ氏が預かり、1964年半ばまでフォード社のデモカーとして使われていました。
走行距離が6000マイル(約9600km)を超えたところでシェルビー・アメリカンに返却され、新しいバンパーガード、コンバーチブルトップ、フロアマットなどを追加して、さまざまな小修理を受けて再塗装もされました。
このクルマの最初のオーナーは不明ですが、カリフォルニア在住の2代目オーナーが事故を起こし、オリジナルのアルミ製ボディは大きく損傷してしまいました。
これを買い取ったチャールズ R.ラスカム氏は損傷したボディを外し、シャシは20年以上倉庫に保管していました。
1995年4月、ラスカム氏は20年以上眠っていたCSX2134のシャシを著名なドラッグレーサーであるチェット・バンチ氏に売却し、レストアが開始されました。
アリゾナ州の高名な金属職人に新しいアルミボディを依頼し、フレアフェンダー、リベット留めのフードスクープ、ヘビーデューティなサイドエキゾースト、運転席ロールバー、前後のクイックジャッキ、FIAスタイルのフュエルフィラーなど、レーシーなボディを作り上げました。
著名なレーシングカーを手がけたレストア職人でもあるバンチ氏は、このコブラを最高のマシンに仕上げようと思いました。
それから20年をかけて、CSX2134は究極のドライビングが楽しめるコブラに仕上げられました。
page
- 1
- 2