広島発の女性3人組テクノポップユニット「Perfume(パフューム)」がライブやミュージックビデオ(MV)撮影などで実際に着こなした歴代の衣装を公開する特別展が、広島市現代美術館(同市南区)で始まった。繊細な技術と、個性際立つダンスを生かす機能的なディテール。服飾美術としても評価される約180着はファン以外にも見どころが多い。
属性を章立てした構成
パフュームはアイドルか、アーティストか。平成17年のメジャーデビューから20年。今や完全に後者に分類されるが、アイドルユニットとして誕生した経緯もあり、かつては、見方が分かれた。
「そんな彼女たちが持ち合わせている属性を章立てした展示構成になっています」。こう語るのは本展の企画協力者で、京都芸術大の久慈達也准教授(生活文化史)だ。
アイドル×アーティスト×ダンサーとしての一面を、第3章まで時系列で紹介(第1章=17~23年▽第2章=24~27年▽第3章=28年以降)。パフュームは最新の映像技術を駆使したライブ演出でも評価されていることから、第4章ではステージ衣装を特集。メンバーが選んだお気に入りの衣装も並ぶ。
本展は5年前にファッション雑誌「装苑(そうえん)」編集部が編集し、出版された書籍がきっかけで、兵庫県立美術館を皮切りに宮崎、札幌を経て、満を持して3人の出身地・広島での開催を迎えた。
高度な技術が随所に
第1章のメジャーデビュー初期は、既製服がベースの衣装が少なくない。これは「3人とファンをつなぐコミュニケーションツールとして機能し、ファッションリーダーとしての価値付けにも生きた」(久慈氏)。
あ~ちゃんが膝丈、かしゆかはミニ丈、のっちはパンツスタイル。現在まで続く基本型が確立したのもこの頃だという。
第2章の時期と重なる24年にレーベルを移籍したパフューム。海外展開も視野に、装いにも「らしさ」が感じられる。
「Spring of Life」(同年)では、電飾を駆使し、ファッションとテクノロジーが結び付く先駆けに。プログラミングによって発光のタイミングが制御され、振り付けやリズムに合わせて光る。まさに「音楽を着る」感覚だ。
徐々に、パフュームの代名詞とも言える未来感を表すような幾何学モチーフも登場する。折り紙的な要素も含め、複雑化するモチーフを「服として着る」(久慈氏)状態へと仕上げる高度な技術が随所に施されている。
28年以降の楽曲衣装が並ぶ第3章では、幾何学モチーフが後退し、バイカラー(2色使い)へ移行する。まさに、未来を超えるデザイン。「FLASH」(同年)のダンスパフォーマンスで揺れる裾や袖は改めてダンサーとしての魅力を気付かせてくれる。
ダンスの統一感を出すため、そろいの衣装やプリーツ(ひだ)などを用いた曲線による表現も採用される。令和3年の第72回紅白歌合戦で着用した衣装は広島が初出だ。
夢見る後輩を招待
3人はテレビ新広島の関連会社が運営するアクターズスクール広島の1期生。2月22日の会期初日には、将来のデビューを夢見る後輩たちが招待され、活動コンセプトの変遷を衣装とともにたどった。
スクール51期生の橋根夕奈さん(16)と山崎栞蓮(かれん)さん(15)は「どんなデザインでも着こなすパフュームさんがすごい。あこがれの先輩に少しでも近づきたい」と意欲を高めた。
本展では、立体物の衣装を前後左右360度から楽しめる。久慈氏は、動画投稿サイト「ユーチューブ」のサービス開始と同じタイミングでパフュームがメジャーデビューしたとし、「パフュームはインターネット上で『音楽を見る』時代に現れたメディア性の強いアーティスト。衣装の存在がパフュームをパフュームたらしめる」と指摘する。
館内には、型紙などの衣装制作過程が分かる資料や独特なダンスを彩るハイヒールも展示されている。久慈氏は「ファンだけでなく、デザインに関心がある人にこそ、縫製のディテールや生地感を見てほしい」と話す。(矢田幸己)
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6月1日まで。一般1600円ほか。問い合わせは広島市現代美術館(082・264・1121)。