トランスジェンダーは公民権適用外 米アイオワ州が可決
【ワシントン=赤木俊介】米中西部アイオワ州の州議会は27日、出生時の性と自認する性が異なるトランスジェンダーを州の公民権法の適用外とする改正法案を可決した。ジェンダーや性的少数者に否定的なトランプ米政権が発足したことが追い風となり、保守派が多い州ではトランスジェンダーを狙った動きが活発になっている。
アイオワ州の公民権法は人種や宗教、思想などに基づく差別を禁止する。同州は2007年に性的指向やジェンダーアイデンティティーも同法の対象に加えた。当時は民主党が州議会の多数派を握っていた。
共和党のレイノルズ州知事が今回の法案に署名すれば、ジェンダーアイデンティティーは同州公民権法の対象外となる。レイノルズ氏は22年3月にトランスジェンダーの女性による女子スポーツ参加を禁じる法案に署名しており、拒否権を行使する見通しは低い。
公民権法の改正法案を審議する州議会議事堂には27日、性的少数者の権利保護を主張する市民らが押し寄せた。地元紙のデモイン・レジスターによると、一日に平均600人ほどが出入りする議事堂には同日、2000人以上が訪れた。
同法案を支持した共和党のホルト州議会下院議員は「ジェンダーアイデンティティーを(アイオワ州公民権法の)対象から排除するのは女性の権利を守るため」と持論を展開した。
対して、24年に同州史上初のトランスジェンダーの州議会下院議員となった民主党のウィチテンダール氏は27日、議場で「この法案、そしてあらゆる反トランスジェンダーの法案は我々を公の場から消し、汚名を着せる意図がある」と強く反発した。
米国では保守派とリベラル派の価値観を巡る「文化戦争」が激化し、トランスジェンダーを含む性的少数者をめぐる方針が大きな争点となった。調査会社ギャラップによると、24年に性的少数者と自認する米成人は全体の約1割だった。トランスジェンダーと自認した回答は1%程度だった。
トランスジェンダーを巡る対立は法廷闘争に発展している。トランプ米政権は1月、連邦政府による19歳未満の個人が受ける性適合治療への支援を打ち切ったが、2月13日に連邦地裁が一時差し止めを命じた。また、政権は1月にトランスジェンダーの軍人を解雇するよう命じ、性的少数者の権利団体が政権側を訴えた。