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サイバーエージェント株主総会2024|藤田晋社長「海外から売り上げるのは最も大きな目標。海外の人にも遊んでもらえるようなIPを持ち、しっかりゲーム化していきたい」

 12月13日13時から行われたサイバーエージェントの株主総会。

 ネット広告からゲームへと事業を拡げ、ここ数年はネットテレビ「ABEMA」に投資中。また、2026年に新社長を内部昇格させる方針を藤田晋社長が発表しています。

直近経営資料 2024年9月期決算短信 決算説明会資料質疑応答 CyberAgent Way 2023有価証券報告書
株主総会資料 定時株主総会招集通知
前回 サイバーエージェント株主総会2023|藤田晋社長「ウマ娘の大ヒットで大きく上がった株価がようやく落ち着いた。増収増益を目指すよう全社的に意思統一しており、しっかり何期かこなしていくことで、株価を上昇させていく」

 業績は増収減益。創業以来27期連続増収で、来期も増収増益見込みです

- 売上 営業利益 純利益 PER PBR 時価総額
サイバーエージェント・22年9月期 7105億円 691億円 242億円      
サイバーエージェント・23年9月期 7202億円 245億円 53億円 52.03倍 2.88倍 4161億円
サイバーエージェント・24年9月期 8029億円 418億円 162億円 26.7倍 3.52倍 5613億円
サイバーエージェント・25年9月期予想 8200億円 420億円 210億円      
電通グループ・23年12月期 13045億円 453億円 -54億円 45.6倍 1.26倍 10876億円
テレビ朝日HD・24年3月期 3078億円 123億円 171億円 11.8倍 0.55倍 2529億円
スクエニHD・24年3月期 3563億円 325億円 149億円 27.0倍 2.33倍 7737億円

※株価指標は株主総会の前営業日終値を使用。PERは予想、PBRは実績

 サイバーエージェントの事業は、大きく分けて広告、ゲーム、メディアの3つ。

 祖業で売上最大の広告事業は、ネット広告業界大手として、業界全体が伸び続けている恩恵を受けています。ただ、直近ではネット広告市場が伸び悩んでいる気配がありますね。

 一方で、AIの活用などで生産性は向上。ここは今、一番AIが活用されている領域のひとつらしいです。

 メディア事業の中心はABEMA。毎年100~200億円の赤字を計上していたのですが、2024年9月期は19億円まで赤字を圧縮。四半期ベースだと第2四半期と第3四半期で黒字になりました。

 ただ、業績をけん引しているのは周辺事業に分類されるネット投票サービス「WINTICKET」なので、ABEMA単体で黒字となる日は遠いかもしれません。

 とはいえ、広告ではなく、周辺事業で稼いでいこうという姿は、放送外収入の拡大を目指す昨今のテレビ局と重なるものがあります。

企業名 売上
(前年度比)
放送収入
(前年度比)
放送収入割合 主な放送外事業
フジ・ メディアHD 5664億円
+5.8%
1473億円
-8.1%
26.0% 都市開発・観光、通販
日本テレビHD 4235億円
+2.3%
2192億円
-5.3%
51.7% Hulu、フィットネスクラブ
TBSHD 3943億円
+7.1%
1593億円
-2.1%
40.4% 小売、不動産
テレビ朝日HD 3078億円
+1.1%
1668億円
-2.9%
54.1% ABEMA、音楽出版
テレビ東京HD 1485億円
-1.6%
695億円
-4.6%
46.8% アニメなどのライツ事業

 ゲーム事業は『ウマ娘 プリティーダービー』の勢いが落ち着いてきたものの、5月にサービス開始した『学園アイドルマスター』がヒットして増収増益。

 しかし、スマホゲームの市場規模が横ばいになっていることや、競争環境が厳しくなっていることから、ウマ娘サービス開始当初のような爆発的なヒットはかなり難しくなっているようには感じます(直近で他社の『Pokémon Trading Card Game Pocket』が大ヒットしていますが)。

 なお、コナミデジタルエンタテインメントから特許権侵害の訴えを起こされている『ウマ娘』ですが、裁判記録をみると2025年夏までの予定が書かれていたので、決着にはまだまだ時間がかかりそうです。

 サイバーエージェントで足元で注目される動きは、IP創出の取り組み。ニトロプラスを買収するなどして、強化しています。

ここ一年の主な動き

2024年2月23日 「ABEMA de DAZN」提供開始

4月9日 サイバーエージェント、「ウマ娘」の次へ知的財産(IP)特命部隊(日本経済新聞)

5月16日 スマホゲーム『学園アイドルマスター』サービス開始

6月10日 サイバー、絞られた「ポスト藤田」候補たちの実力 社長退任まで2年、後継者の選定作業はヤマ場に(東洋経済オンライン)

6月26日 ニトロプラスを買収

8月10日 スマホアプリ『ちいかわぽけっと』配信決定

12月8日 町田、「J1初昇格・即優勝」の歴史的快挙を逃す…3位は新参クラブ最高位“ボール水掛け”や“ロングスロー”で世間を賑わせた異端(アベマタイムズ)

2025年1月17日 映画『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』公開

手元資金(ネットキャッシュ)の推移

 2022年カタールW杯の放映権は、2021年の『ウマ娘』のヒットで大幅増した手元資金(ネットキャッシュ)が原資となりました。

 今期は利益を重視したことで、また手元資金が増えてきているのですが、2026年W杯の放映権はどうするんでしょうね。

- 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期
営業CF +179億円 +208億円 +532億円
投資CF -314億円 -402億円 -383億円
財務CF -28億円 +534億円 -51億円
- 2022年9月末 2023年9月末 2024年9月末
現預金 1680億円 2017億円 2111億円
有利子負債 262億円 1070億円 867億円
ネットキャッシュ 1418億円 946億円 1243億円

議案

(1)剰余金処分→期末配当を1株につき16円に

(2)取締役(監査等委員である取締役を除く。) 5名選任

前年株主総会 今回候補者
藤田晋 藤田晋(創業者、代表取締役社長)
日高裕介 日高裕介(共同創業者、ゲーム事業)
中山豪 中山豪(全社機能管轄)
【社外】中村恒一 【社外】中村恒一(元リクルート副社長)
【社外】高岡浩三 【社外】高岡浩三(元ネスレ日本CEO)
塩月燈子 塩月燈子 (監査等委員、会計士補)
【社外】堀内雅生 【社外】堀内雅生(監査等委員、税理士)
【社外】中村知己 【社外】中村知己(監査等委員、弁護士)

(3)補欠の監査等委員である取締役1名選任→神先孝裕さんが再任

株主総会のTwitter実況

 株主総会の様子は僕のTwitter(@michsuzu)で「#サイバーエージェント株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしていたので、まとめておきます

Q 決算説明会資料に「WINTICKETにおけるポイント処理の適正化による一時的な損失」とあるが、この詳細を説明してほしい

中山豪:第4四半期に、期中におけるポイントの処理をして、来年度に影響がないようにした。事務的な処理で申しわけない。ポイント広告費を第1~3四半期に計上するべきところをしきれていなかったので。期中に適正化した。2025年9月期以降の収益性に対する影響はないと考えている

Q 世の中、大AI時代になっている。事業報告でAI・DXの活用で収益性が上がったという説明があった。生成AIを中心に進化のスピードが速くなっているが、クリエイティブな要素についての、AIの活用の方向性を聞きたい

藤田:足元では、全社的に業務効率化で積極的にAIを活用している企業のひとつになっている。広告でもクリエイティブでも積極的に使っているので担当役員の内藤貴仁にひとこと

内藤:効率化にかなり活用していて、業務の60%削減を目指している。同時にクリエイティブに関しても、動画、アニメーション、ゲームなどで活用していこうと、準備、研究開発をしているところ。

Q ブランドイメージについての考え方を聞きたい。アメーバブログ時代からのファンで株主。会社名のサイバーエージェントはすばらしいしオシャレだが、ABEMAに関しては馴染めず、ロゴもお茶目だが、ちょっとオタクな感じがする。先日倒産した船井電機はとてもいいテレビを作っていたが、ブランド戦略が良くなかった。先日、船井電機のテレビを買おうとしたら、家族から「わけの分からない会社の製品はやめなさい」と言われた。膨大なお金はかかるが、ABEMAの名前やロゴを変えると、ブランドイメージを上げられるのでは

藤田:アメーバブログのころから応援いただき、ありがとうございます。アメーバを後ろから読むとABEMAとなる。アメーバはガラケー全盛の時代、処理速度が遅い時代に作っていたクリエイティブ。

 ブランドイメージは非常に重視しているが、スマホの時代になって作れるものや表現できるものが広がったのに、表に出るものがアメーバの時代の印象を引きずってるので、「ブランドを一新しないといけない」ということで名前も会社のロゴも変えた。

 ABEMAの名前を付けたが、ちょっと覚えにくいし、ずっと「アメーバTV」と呼ぶ人もいるので、「ちょっと失敗したかな」と思うが、突き抜けると唯一無二だし、検索で他の単語と混じることもないので、この方向で頑張るしかないと思っている。

 オタクのイメージがあるというのはちょっと驚き。MLBやサッカーW杯、毎日のニュース報道、恋愛リアリティーのバラエティもやっているので。

 ただ、それは決して悪いことではなくて、我々はアニメにかなり強くなっていて、そこを将来強化しようとしているので、オタクな感じは結構悪くはねえなという感じがします。船井電機にならないよう頑張りたい

Q スマホゲームが一時期のブームがかすんで、どこの会社も厳しくなっている。サイバーエージェントでも既存のゲームが厳しくなっていくと思うが、これからの展望は

藤田:サイバーエージェントは増収増益だが、2021年に『ウマ娘』が非常に大きなヒットとなり、会社全体の利益を倍増させた。

 ただ、ゲームというのは流行ると落ち着いてしまうんです。パッケージゲームと違い、スマホゲームは結構粘る、要は長いこと運営するのですが、少しずつ下がっていく。上場企業からすると、四半期ごとに減収減益を発表しないといけないというのは非常に難しい。ヒットから3年後の決算でその落ち方を食い止めて、増収増益に持っていったことには胸を張りたい。

 我々は既存タイトルの運営を頑張ると同時に、『呪術廻戦ファントムパレード』『学園アイドルマスター』など、新しいタイトルをさらにヒットさせて伸ばしている。

 毎年そういう新しいゲームを出していくパイプラインを準備しているので、基本的には地層を塗り固めるようにして上がっていくと思う。

 厳しいというのは多分、個別企業の話をされてると思うが、うまくいってる会社はさらなる投資ができて、人材を集められる。 残存者利益というか、勝った会社がより有利になり、なかなかヒットが出ない会社がジリ貧になる構図となる

Q 招集通知23ページの損益計算書をみると、受取配当金が63億円で、営業利益をはるかに凌駕している。毎期これを計上しているのか。一方で、21ページの連結損益計算書をみると、受取配当金が3億円となっているが60億円消えている理由は

中山:23ページの方はサイバーエージェント本体の損益計算書。グループ経営なので、グループの子会社から本体に配当している部分が63億円のメイン。グループの収益性が確保される前提で、毎年これくらい継続的に本体がグループから吸い上げると思っている。

 21ページはそれを連結にしたもの。内部でのお金のやり取りは、連結計算書には出てこない。ここの3億円は投資有価証券で、投資先から配当を受け取っている形。消えたというよりグループ外からいただいている



Q 純利益が私の希望する額より少ない。売上が8000億円あるなら、純利益は400億円を目指してほしい。なぜこんなに低いのか、対策は。明らかに御社はゲームの高利益率に頼っている。ゲームがこけたら全体の利益率がこける

藤田:最終利益400億円となるためには、だいたい営業利益800億円くらい出さないといけないが、当然これから実現しないといけない。確かにこのところ、最終利益は少なかった。

中山:ゲームがダメだと全体がおかしくなるというわけではない。ゲームはボラティリティがありつつ高収益、一方で広告は将来の見通しの実現可能性は高いが営業利益的には低い。その組み合わせでメディアに投資してきた。

 メディア事業は黒字基調に向かっていけるのではと考えている。メディアと広告、プラスでボラティリティはあるけど収益性の高いゲームという構成に変わっていくのかなと。

 利益率については、投資先のABEMAは100%子会社ではなく、テレビ朝日と一緒に行っている合弁会社なので、連結納税の対象ではなくなる。連結納税の対象でない場合は、構造上赤字が出やすくなってしまう。ゲームはサイゲームスの持ち分比率が60%強なので、少数株主持分のところでとられるところがある。そこがあって最終利益が160億円となっている。

 今後はメディアの赤字幅が減って、ゲームでもサイゲームスが順調に推移するとともに、100%子会社が運営する『学園アイドルマスター』なども含めて、分散する形になっていくので少しづつ改善するのでは

Q ゲームクリエイターの松野泰己さんのファン。『ロストオーダー』というベータテストまで行ったゲームがあるが、その後、凍結みたいな状況になっている。現在の開発状況は。お蔵入りになってしまっているのか

日高:リリース予定ということで発表していたが、現在のところ開発は凍結。止まっている状況になっている

【注】先ほど公開されたサイバーエージェント公式の概要によると、「『ロストオーダー』は現時点でも開発中」という訂正が入りました

Q ABEMAでいつもアニメをみています、オタクです。御社の社員のモチベーションを上げるための行為があれば教えてほしい

藤田:たまに個人的にも他の経営者から「サイバーエージェントの社員はすごくやる気があるが、どうやっているんですか」と聞かれる。答えは非常に難しくて、 やる気を出すためなら、ありとあらゆることをやっている。

 そもそも愛社精神が強い社員がわりと多いので、会社のことが好きで、会社や自分の事業が伸びている、世の中に広まっている喜びを感じることがベースにある。

 それ以外にも給料もそうだし、社内を盛り上げる活性化施策をさまざまやっていて、どれか1つを挙げろと言われると逆に間違ってしまう。

 基本的には社員が自発的にやる気になって、会社を伸ばしていくという考え方。「一番力を入れている」というくらい、ありとあらゆることをやっている

 

Q 株価についてどう考えているか。ここ最近は株価が上がってきているが、10年足でみると損をしている株主と得をしている株主が混じっている。現状、中長期の計画の中で為替とか外的要因がない時にいくらを目指すといった指針があれば教えてほしい

藤田:株価目標は基本的に上場企業の経営者が言うのはタブー。言うと、「裏切った」と大変なことになったりする。私も上場企業の社長歴がもうすぐ25年になるので、そんなうかつなことは言えない。

 『ウマ娘』がヒットした時に時価総額が1兆円を超えた。どんどん流行って、利益も積みあがっていった。

 ただ、そのような大ヒットを飛ばした場合、かつてソーシャルゲームではグリーやモバゲー、パズドラやモンストがすごくヒットして利益を出したが、そこから落ちていく局面が結構長かった。

 ヒットした瞬間から緊張感が走った。長い減収減益モードになった時に株価は下がってしまうので、それを食い止めるために投資して、増収増益基調に戻した。

 「どうだ!」と思ったら、逆に株価が下がってがっかりした(笑)。我々ができることは、基本的に企業価値を上げていくことしかない。目標の数字をかかげないから頑張っていないわけではない。株価を上げるために、一生懸命頑張っている。


Q 株主優待のABEMAプレミアム利用料無料クーポン1年分を利用して、すっかりとりこになった。今後も株は保有する。この株主優待は今後も続くのか。

藤田:毎年のように参加している人には記憶のある人もいるかもしれないが、株主優待を始めたのは株主総会で「プレミアム会員を株主優待にしてはどうか」という質問がきっかけ

 それはいいアイデアだと思って入れたら、結構ヒットした感覚があり、かなり利用してくれている。ABEMAのファンになる人も増えて、すごくいいなと思っている。もちろん今後も続ける

 

Q 事前質問を送ったが、子会社ニトロプラスの代表コンテンツである『刀剣乱舞ONLINE』について。6月に人気キャラクターの声優がXで行った発言に関して、女性の性犯罪への自衛行為を批判し、女性への加害行為は女性自身の行動に責任があると読み取れるとして、SNSなどで大きく炎上したことがあった。本人ではなく、代表作である刀剣乱舞の名前で炎上したことで、イメージが大きく損なわれたのではないか。女性蔑視的な言動に対する貴社や参加会社の方針、社内外で行っている研修などについて聞きたい

藤田:事前質問もありがとうございます。正直、このような状況となったことを知らなかったので、認識できて良かった。

 ニトロプラスはまだ我々のグループ入りして日が浅い。本件はニトロプラスのゲーム作品の声優個人の感じることなので、我々から何かを回答するということは差し控えさせていただく。

 コンプライアンスやハラスメントについては、我々は結構な規模になっても、ほとんどそういうニュースが出ないと思う。

 普段から定期的にそのような芽を吸い上げ、そして早く手を打つようにしている。専門の部署もありますし、全社的にそういう問題が起きたらすぐに我々に報告が上がっていくような仕組みがあります。高い倫理観でできるよう、ニトロプラスも我々のグループになりましたので、今後しっかり連携してやっていきたい

 

Q ローカルテレビ局で勤めている。株を買った理由はABEMAがすごく良いコンテンツだから。ただ昨今、SNSや動画配信サービスなどでクソみたいな広告が流れる。ABEMAはナショナルスポンサーが流しているイメージがあるが、線引きはあるのか

藤田:ABEMAはナショナルクライアントが多いようにしたいが、そういうクソみたいな広告が入ってしまう仕組みについて内藤から

内藤:YouTubeを中心としたプラットフォームは、オンラインで誰でもお金を出せば広告を買える仕組み。ただ、ABEMAはそういうオープンな仕組みではなく、審査をしたクリエィティブが広告として回るようになっている。誰でも買える形にはなっていないのが大きい

 

Q 株を保有、買い増しするに当たって不安な点が藤田社長が退任するかしないか。現状どんなスケジュールになっていて、退任するならその後、会長として残るのか

藤田:2022年から社長業を引き継げる仕事にする準備に力を入れている。2026年の段階で新社長が誕生するとともに私は代表取締役会長になり、新社長と伴走するような形で徐々に権限移譲し、60歳を目安に身を引こうと考えている。今、51歳であと9年くらいあるので、かなり慎重にやっている。

 創業者がやってきた会社は「最終的には藤田が決める」という価値観が染みついてしまっているので、別の人でも社長業をやっていけるよう、どういう仕事をしてきたかを入念に因数分解し、要件定義している。

 また、「どういう風な思考で」という引き継ぎ書を自分で書いている。社内の社長候補者の研修を去年、今年とやってきて、考え方が上層部に浸透してきたので、同じように考えられる人材が育ったのはやってよかった。同じような思考からちゃんと判断し決断できるような人材が育ったので、ここから先、ちゃんと引き継げる体制を作っていく

 

Q 対処すべき課題でゲーム事業について、「既存タイトルの長寿命化」とある。私は『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』をサービス開始当初から遊んでいるが、今年1月からの運営縮小が不安に思えた。長寿命化のための方針なのか。

日高:遊んでいただきありがとうございます。『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』は本当に長く運営してきて、全盛期に売り上げていたころに比べるとコンテンツの更新頻度や、キャラの追加頻度は下がってきています。

 アイドルマスターに限らず、ゲームのサイズに合わせて、できるだけ長く運営できるよう更新量などを調整している

Q アニメやキャラクターなどの知的財産を活用しているが、海外展開についてはどう考えているのか

藤田:海外から売り上げるのは最も大きな目標というか狙い。

 一番ヒットした『ウマ娘』は競馬をモチーフにしているが、(主役の)トウカイテイオーやスペシャルウィークを海外の人は知らないので、なかなか外に出しづらい。

 これにはやっぱり少し限界があるので、IP戦略として重視しているのは、海外の人にも遊んでもらえるようなIPを持ち、しっかりゲーム化していきたい。今できることは精いっぱいやっているが、今後はそこを目指していく

Q サイバーエージェントのゲームだと『ウマ娘』を楽しくプレイしているが、一日当たりのプレイ時間が長い。タイパを重視する風潮があるが、ゲームに対してもそういう考え方が増えている。毎日プレイする設計だが、社会人だとお金はあっても時間はない。多くのユーザーに遊んでもらうためにテンポの良いゲーム作りが求められているのでは。『ウマ娘』だと、育成でジュニアを飛ばしてクラシックから始まるような機能があれば私もありがたい。ほかのゲームでも時短機能やテンポを良くしていけばいいのでは。時短で面白さが損なわれると良くないが、既存ゲームでも新規ゲームでも必要な考え方では

日高:『ウマ娘』は今のソシャゲと比べると、プレイ時間が長くなっているが、世界観やクオリティ、育成を楽しんでもらうために出てきたゲーム性を重視している。

 タイパについては運営チームのプロデューサーとも話しておくが、貴重なアドバイスとしていただく。サイバーエージェントのゲーム事業全体として、『ウマ娘』だけでなくカジュアルなタイパのいいゲーム、電車で5~10分遊べるようなゲームも広くラインアップしているので、ユーザーさんの趣向や遊び方によって、いろんなゲームを展開していきたい

 

Q 取締役の報酬について。監査等委員でない取締役と監査等委員である取締役の差が大きい。監査等委員である取締役にもっと支払ってもいいのでは。合理的な説明をいただきたい

中山招集通知17ページにあるよう、そもそも株主総会で取締役の報酬の枠を決議し、その枠の中で運用している。

 監査等委員でない取締役は年額8億円以内、監査等委員である取締役は年額3000万円以内。各々の立場や役割に応じた報酬体系。他社と遜色のない競争力のあるところを検討した結果。

 監査等委員に関しては取締役会に年13回中13回参加していただき、建設的な意見をいただいている。役割に応じたもので、役割が違うので問題ないと考えている

Q 町田ゼルビア、J1昇格初年度の3位おめでとうございます、ありがとうございます。 昨年の質疑要旨で「昇格で収益が上がるフェーズにあるのでは」とあった。他株主に理解していただきたいのは昇格したからといって、サイバーエージェントに大きな金銭的な利益をもたらすことは少ないと思っている。なぜゼルビアを子会社にしたかというと、藤田社長の個人的な趣味ではない。今シーズン、何回かアウェーにも行ったが、浦和だと三菱グループのコマーシャルが流れ続けるので、「三菱のサッカーチームだ」とアウェーサポーターは思う。結局広告塔なんだと思う。メジャースポーツで野球に次ぐサッカーで、うまく運営して初年度ながら優勝争いした。サイバーエージェントの名前やロゴが、新聞やテレビに露出して宣伝できたのは。
ここからは要望。アウェーゲームで浦和、磐田、鹿島に行ったが、いずれもサッカー専用スタジアム。町田もバックスタンドが改修されて良くなったが、専用スタジアムの熱気にはかなわない。町田の駅前に再開発の話もあるが、サッカースタジアムができないかと願っている。再開発で何かをやるときは、誰かが汗を流さないと実現しない。J1規格のサッカー専用スタジアムは東京にない。ゼルビアのスタジアムがサッカー専用スタジアムになれば、東京の一番をとれる。Jリーグのビッグチームになれるので、ぜひそこを汗をかいて実現してほしい

藤田:おっしゃっていただいた通りで、話すこともない。サッカー専用スタジアムは喉から手が出るほど欲しい。町田市の再開発にぜひ乗せてほしい。

 町田市もサッカーだけにつぎ込むと当然反対が起こり、サイバーエージェントの金をつぎ込むと株主さんが怒るじゃないですか。だからすごく難しいんですよね。土地がないんですよ。

 僕も最終戦で鹿島に行きましたが、「土地だらけだ」とうらやましかった。駅前の再開発にワンチャンかけているが簡単ではない。陸上競技場のある大きなスタジアムは休みの日にコンサートとかいろいろやれるが、サッカー専用スタジアムは小さくて、芝もあるので使いようがない。だから試合が週1~2回だと、収益性が悪いものに金は使えないとなる。難しい中でも頑張って夢は実現したいという、僕の気持ちも分かってほしい

 14時20分から会社説明会開始。登壇者から監査等委員である取締役がいなくなり、監査等委員でない取締役だけに

 説明役は引き続き藤田晋社長。スライドと合わせて説明。内容は決算説明会資料とほぼ同じ

 『ウマ娘』大ヒットからの減収減益から反転させるために頑張って、増収増益基調に戻して、株価が上がるかと思ったら全然上がらなかったと、またぼやいてた

 今までは広告やゲームで利益をあげて、メディアに投資という流れだったが、これからは安定した基盤をもとにIPを作り、海外を目指すことをビジョンにするとのこと。

 最後に「会社は中長期で伸ばすように日々、一生懸命に経営しているので長期保有でお願いします」とコメント。

 説明後、再び質疑応答へ

Q 売上が8000億円を超えてうれしいが、連結子会社の上場は検討しないのか。100%子会社でないところも多いので、2割くらい売り出せば資金が入るし、株価も500円くらい上がるのでは

藤田:子会社上場についての私の考えは、ポジティブでもネガティブでもない。上場してデカい資金が入るとか、思ったより株価上がるとかあればやりたい。

 過去にMakuakeやリアルゲイトが上場したが、任せている経営者の意向が大きい。顕在化することで競争有利になりそうだみたいなこともあるが、そんなにうまくいかないとは思っている。

 基本的にはニュートラル。上場はサイバーエージェントの株主からすると子会社の株を売るようなものなので、必ずしもいいことばかりではないのでは

Q サステナビリティ経営について。人権問題として、拉致問題の啓発に取り組んでは。拉致問題の解決のために1800万人が署名している。昨年、デパートで横田めぐみさんの展示会をやったら盛況だったと聞くし、若年層の関心も高いのでは。ハッシュタグで拡散しつつ、ABEMAで5分番組とかやれば、企業イメージの向上にもつながるのでは

藤田:貴重なご意見ありがとうございます。今まで近しい問題と思っていなかったせいか、唐突にどういう返答をしていいのか難しい。我々は報道部門を持っているので、いただいた意見を伝える

 

Q 去年の株主総会で、楽天の第三者割当を引き受けた理由について、「安いから引き受けただけ」と藤田社長は言っていたが、今の株価をみると本当にあの時は安かった。100億円ほど投資しているが、回収の計画は

藤田:特にない。当時、時価総額1兆円くらいだったが、モバイルがなかった場合、簡単に3倍になるという風に言ったので、一応目線としてはそこは持っている。(目論見通りに株価が上がったので)「ほらみろ」とは思っている(笑)。

Q(すずき) 日本のネット広告市場全体の見通しについて。サイバーエージェントの広告事業はネット広告市場の拡大をベンチマークとして成長してきたと思うが、電通の日本の広告費をみると2023年のネット広告市場は前年比7.8%増で、数十パーセントの成長を続けてきた今までからすると伸び悩んでいる。最近は詐欺広告のようなクソみたいな広告などで無理に増えている面もある気がするが、日本のネット広告市場の成長はどこまで続くとみているか。海外展開についてどう考えているか

藤田:規模も大きくなってきたので、前年比7.8%増は結構な拡大率。そんなに魅力的な市場が日本国内にあるかというと、まだ成長市場と思っている。

 インターネットを見る時間や、インターネットから受ける影響が増えていく限りは、広告はそれに連動して伸び続けるという考えがベースとしてある。ネットを見る時間も、頼り切る人も増えているのはまったく変わりがなくて、当面全然大丈夫とは思っている。

 ここにコミットしていて、逆にちょっと鈍化したからといって、海外に目を向けたり、コンサル側に行ったりしている会社はだいたい失敗している。集中することが非常に大事だと私は思っている

Q 藤田社長の馬主活動はすばらしい。私も複勝でお世話になった。ウマ娘の映画は合計6回見て、1日3回見たこともある。ゲームの長期的な運営という話があったが、先日のシルクホースクラブとのコラボのようなユーザーを楽しませる企画があるという解釈でいいか

藤田:6回も観ていただきありがとうございます。何か言うとサイゲームスにめちゃめちゃ怒られる。

 馬主活動は私個人でやっていて、会社とはまったく別なのですが、個人として競馬界とつながりが深まったことで『ウマ娘』への理解も得られ、たくさんの人が協力してくれるようになった。誰にも褒められないが、僕個人の活動が会社に好影響をもたらしていると自負している

 

Q ABEMAの規模拡大やマネタイズに期待している。テレビ朝日との共同運営と聞くが、組むことのメリットやデメリットは。自社でノウハウができてきたから、この際、ちょっと距離を置くとか、逆に取り込んだりとかしないのか

藤田:まったく考えていない。取り込むとか発言したら大変なことになる。我々が60%、テレビ朝日が40%でスタートして、今少し電通や博報堂にも入ってもらっている。

 基本的にテレビを立ち上げる以上は報道というのがベースにある。毎日変わるニュースが軸としてある。

 そしてスポーツ中継はネットフリックスやアマゾンプライムみたいなオンデマンドではなかなかやりづらい。無料で広告収入で見てもらうことが基本で、それをサッカーW杯でもやれた。

 国際中継はテレビ朝日の長年のノウハウがないとできない。まず権利を買う時点で実績やつながり、交渉力がないとできない。基本的にテレビ局とのかかわりは、テレビをやる以上、必須であると考えている。非常に良い関係で8年続けてきたので、このまま続けていきたい。

 

Q 町田ゼルビア、優勝を逃しましたが、躍進おめでとうございます。一方で、Jリーグが「税リーグ」とネット上で揶揄されている。スタジアム収入はそんなになく、維持管理費は地方自治体の税金で、チームの年俸はスポンサーに依存する構造。30年間、Jリーグが続けてきてしまった状況をゼルビアオーナーの藤田社長に聞きたい。大宮アルディージャがJ3に落ちた時、サポーターが「失望しています」と横断幕を掲げたことで怒ったかは分からないが、NTTがスポンサーを辞めてレッドブルに売却した。YouTube上でも公認会計士の山田真哉さんが、本業で稼げていないことに苦言を呈し、現代のパトロン文化ではないかと指摘している。Jリーグが税リーグと揶揄されていることについて。自治体やスポンサーに依存し続けている状況をどう考えているのか

藤田:その通り過ぎてアレだが、今年、大宮アルディージャはJ2に昇格したが、昨年、最終戦ホームでの社長あいさつで、ピッチの真ん中で感謝を述べている時に大ブーイングされている姿を映像でみて、「明日は我が身だ」と本当に思った。NTTも相当なお金をつぎ込んでいるのに、「責任取れ」と言われるのはやってられないだろうなと思った。

 サッカーはこれだけ日本代表が強くなって、日本人のサッカーのレベルがアジアでたぶん一番になって、Jリーグもレベルも上がっているので、そろそろ税リーグも何とかしてほしいというのは正直あります。

 もしACLで勝って、クラブワールドカップで上に行けば、とんでもない金額が入ってくる仕組みで、事実、浦和とかは入ってきているので、わずかなチームはちゃんと儲かる仕組みにはなる。

 それ以外は本当に経営は苦しくて、我々は会社全体の業績が好調なので補強費用は出したが、経営が厳しくなると難しい。Jリーグも何とか頑張ってほしい。ぼくもいちクラブ社長としては働きかけたい。

Q 業務説明で生成AIの使用とあったが、セキュリティについて。KADOKAWAやNTT西日本などがサイバー犯罪にあって、損失を出している状況となっている。サイバーエージェントではどういうセキュリティ対策をとっているのか

藤田:KADOKAWAへのサイバー攻撃や、DMMで仮想通貨が盗まれた時、我々は近い会社なのでかなり体制を強化した。

中山:言いすぎるとダメだが、他人ごとではない。ぞっとするような話で、全社挙げて見直した。

 担当役員や主席エンジニア含めて全社プロジェクトを立ち上げて、網羅的に見直した。全プロジェクトに担当セキュリティエンジニアを付けて、連携を早くするようにした。今までもやってきたが、アップデートをかけた。

 基本的にどこまでやってもというところはあるが、オンラインで意識啓発のビデオを流したり、外からの疑似アタックにもよってもシミュレーションした。コンサルも入れたりして、盲点がないかも確認した。

 できる限りやれることでコストをかけても、投資としては微々たるものなので、いざってことが起きないようにしている。

 

Q 町田ゼルビアの3位、お疲れさまです。去年、国立競技場のヴェルディ戦の無料観戦が当たってから見始めて、38戦ほど現地観戦して楽しい時間を過ごせた。試合以外でマイナスの話題が出た。メディアで炎上目的で悪者になるような切り抜き記事を書かれたり、心もとないファンから誹謗中傷されたりと、これが日本のトップリーグなのかと悲しくなった。誹謗中傷については専門の弁護士もつけたりしているが、メディアに関しての対応方針は

藤田:シーズン後半に誹謗中傷への警告を弁護士と一緒に出して、一瞬、反射的に反論が来たが、その後はかなり静かになった。

 やっぱり強いとどうしても言われる。「新参者がこんな上にいくはずがない」と。高校サッカーの監督はうまくいかないという通説があったので、「黒田剛監督もうまくいくわけがない」と。僕も26歳で上場して、ご存じないと思うが、かなり誹謗中傷にあったが、頭抜けると言われなくなる。上位の常連になれば言われなくなる。

 メディアも、最近のサッカーではネットの話題をメディアに書く「こたつ記者」が多いので、訴えられるところは訴えて、丁寧にやろうとしている