よみタイ

意思・仲間・知識の他に必要なもの【逃げる技術!最終回】それはお金と時間!

記事が続きます

対等に発言するためにも、経済的な自由は重要

前回、DVやモラハラから逃げるために必要なのは意思・仲間・知識だと書きましたが、もうひとつ欠かせないものがあって、それは身もふたもないのですが、やっぱりお金です。

今回、引っ越すと決めてからもわたしの腰は重く、不動産屋にお金を振り込むのに数日間、迷いました。前向きな引っ越しではあるものの「自宅をあきらめる」という、大きな執着を断ち切る決断でもあり、やはりぎりぎりまで迷ったのです。

敷金、礼金、不動産手数料、保証料、家賃の前払い分、鍵の交換費用などをあわせると、80万円近くしました。別途、引っ越し代金も8万円ほど。新しい部屋に合わせてカーテンや照明も買いました。

家賃や引っ越し料金は、元気で満ちたりた状態ならば、交渉したり、安いところが見つかるまで粘ったりもできるのでしょうが、わたしにはなんとなく「逃げている」という負い目があり、値引き交渉などして入居を断られたらどうしよう、というシングルマザーとしての弱みもあるため、かけひきをする余裕はとてもないのでした。

Tips99
お金はやっぱり大切。誰と結婚や同居をするにしても、自分が自由に出せる口座に一定額をプールしておくのがベター。

地域により住宅事情は違うので「十分な金額はこれ」とはいえませんが、逃げる、新生活を始めるとなると、まとまった金額が必要です。いまはとても物価が上がっているので、例えば地方では数十万円、東京で子どもと暮らすなら100万円程度はないと安心できないかもしれません。でも、お金をためるって大変なことです。

一番おすすめなのは、結婚をしても(ある意味ではあたりまえなのですが)、結婚前から持っていた固有の財産は自分のものだという意識を持って、きちんと自分で管理をする、ということです。

わたしの場合には、夫からあれこれ説得されてもともと持っていた通帳やクレジットカードの大方を解約してしまっていましたし、毎月の給与もすべて夫に手渡ししていましたので、固有の財産がとてもわかりにくく、動かしにくくなってしまっていました。

Tips100
DVから逃げたい、お金もないというときには、迷わず自治体の福祉課などに相談してください。「自治体名+女性相談(男性相談)」で検索です。行政には、住所の秘匿された避難用シェルターもあります。
Tips101
婚姻中であっても、配偶者からの婚姻費用(生活費)支払の有無や金額によっては、生活保護を受給できます。
Tips102
頼れるなら、実家に頼るのもよいことです。面倒でも、自治体、病院、警察、友人、親族、カウンセラーなど、いろんなところに相談をして、「あなたの状況を理解してくれている人」をなるべく多く確保してください。人に頼ることは恥ずかしいことではありません。

さて、なんとか今回、引っ越しを終えて、気持ちが落ち着くまで10日間ほどかかりました。前回、自宅を出たときはダンボール10箱だったのですが、知らず知らずのうちに本や洋服、子どもの「作品」などが増えていて、今回は38箱でした! ガムテープを貼って剥がす作業で筋肉痛になりました。

くたびれましたが、引っ越してよかった! と思うことが早速ありました。
子どもたちは何ヶ月も前からずっと「レゴがしたい」といっていたのですが、ワンルームマンションでは狭すぎて、とてもブロックなど広げられませんでした。それが新居では実現して、毎日とても楽しそうに遊んでいます。

記事が続きます

ひとりずつ学習机も置けたので、子どもそれぞれが自分のスペースも持てるようになりました。その姿を見ただけでも、ああよかった、と思います。
なんでもないことなのですが、誰にも怒鳴られない、叱られない、命令されない場所で、子どもたちが安心して自分のペースで過ごしているところを見ると、とても幸せな気持ちになります。

Tips103
大人も子どもも、怒鳴られず、おびやかされない、自分だけのスペース(空間)とペース(時間)を確保することが大切。

さて、今回でこの連載は終わりになりますが、読んでくださったみなさんの生活が、どうか安心できるものでありますように、と願っています。わたしはまだまだ離婚調停は続いており、ときに疲労困憊するときもありますが、夫と自分とを切り離して、それぞれ別個の人間だと考えられるようになってきました。

初めて家を出たときには「こんなことをしてあの人は激昂するのでは」「GPSは全部捨ててきたつもりだけど、まだ見られているのでは」などとしじゅう怯えていたので、まったく世界が変わったように感じます。

また、これは偶然なのですが、昔からの知人で、どうもDVにあっているらしい人から相談を受けるようになりました。わたしから見ると、明らかに肉体的DV、精神的DV、社会的孤立にさらされていて、人格が変わってしまっているように見えます。2年前のわたしもこんな感じだったのではないか、と想像しながら、ときどきその人の話をゆっくりと聞いているところです。

1年前のわたしであれば、まだその人の話を受け入れるゆとりはなかったでしょう。人間は、若いときを過ぎても、変わっていける、回復していける、ということを実感しています。

ですから、もし読んでおられる方の中にいまとてもつらい状況にある人がいても、きっとあなたの話が伝わる相手がいると信じて(一度でめぐりあえるかどうかはわかりませんが)助けを求めて、いろんなところへぜひ「相談」してみてください。

必ずしも逃げたり別れたりすることがその人にとってのベストなゴールとは限りません。ただ、家族生活や社会生活の中で、誰しも常に遠慮したりビクビク、おどおどして生きる必要はないのです。無理やりギュッと押し込められてしわしわになってしまった心や感性や感情が、誰かに相談して、違う視点を自分の中に取り入れることで、のびのびとまた開かれていくことを願っています。

 本連載は今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。

記事が続きます

1 2

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Facebookアカウント
  • よみタイX公式アカウント

関連記事

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

藤井セイラ

編集者、エッセイスト。2児の母。東京大学文学部卒業後、広告・出版を経てフリーに。子育てに関連する勉強が好きで、気がつけば、保育士、学芸員、幼保英検1級、絵本専門士、小学校英語指導者資格、日本語教師、ファイナンシャルプランナー2級など、さまざまな資格を取得。趣味はマンガとボードゲーム。苦手なものはお寿司。最近、映画館で観たのはプリキュア。

X(ツイッター) @cobta https://twitter.com/cobta

週間ランキング 今読まれているホットな記事

  1. 冬野梅子「東北っぽいね」

    信じられない、もう二度と会社に行かなくていいなんて……最終話 事務員生活の終わり

  2. 真夜中のパリから、夜明けの東京へ

    肉体という形を変えた愛するものたちの、個としての意識を探して【猫沢エミ×小林孝延・往復書簡7】

  3. 稲田俊輔「西の味、東の味。」

    「あんないい加減な代物が……」現代ラーメン批評を取り巻く〝偏狭さ〟

  4. 水晶玉子「人気占術家・水晶玉子のエンパワメント予言&開運旅案内」

    来年はどうなる? 噂されるXデー、2025年7月5日とは? 占いから大胆予測!【水晶玉子のエンパワメント予言&開運旅案内 連載第1回】 

  5. 藤井セイラ「モラハラ・DVから 逃げる技術! 「この結婚失敗かも……?」と思ったら知っておきたいTips50」

    夫から逃げて、幸せです。【逃げる技術!第1回】モラハラ離婚の「ダンドリガイド」つくります!

  6. 冬野梅子「東北っぽいね」

    コロナ禍の激鬱会社員生活……それでも実家には帰らない理由とは 第21話 私は帰らない

  7. 冬野梅子「東北っぽいね」

    女性社員を「女の子たち」と呼ぶ職場で陥った貧困生活 第20話 気がつけば貧乏

  8. 発達障害女性が、なぜか行く先々でモテてしまう理由とは……?『ダメ恋やめられる!? 発達障害女子の愛と性』人気回試し読み

  9. 冬野梅子「東北っぽいね」

    感動的なほど働きやすい転職先で起こった「セクハラ事件」 第19話 事務職の楽園追放

  10. 佐川恭一「学歴狂の詩」

    「田舎の神童」の作り方【学歴狂の詩 試し読み】

  1. しろやぎ秋吾「白兎先生は働かない」

    同僚の先生に嫌われるのが怖かった教頭の決意【白兎先生は働かない 第14話】

  2. しろやぎ秋吾「白兎先生は働かない」

    「どうして管理職になってしまったんだろう」教頭先生の苦悩【白兎先生は働かない 第13話】

  3. しろやぎ秋吾「白兎先生は働かない」

    「教師が足りない…」苦しい学校現場を運営する教頭先生【白兎先生は働かない 第12話】

  4. しろやぎ秋吾「白兎先生は働かない」

    家族より部活が大事なの? 野久家の〈部活未亡人〉【白兎先生は働かない 第4話】

  5. しろやぎ秋吾「白兎先生は働かない」

    憧れの先生は過労死で亡くなった【白兎先生は働かない 第3話】

  6. しろやぎ秋吾「白兎先生は働かない」

    絶対に定時で帰る中学校教師……その驚きの理由とは? 第1話 部活にはいきません

  7. しろやぎ秋吾「白兎先生は働かない」

    体育祭の準備でブラック労働に陥る中学校教師【白兎先生は働かない 第2話】

  8. しろやぎ秋吾「白兎先生は働かない」

    どうしたら教師の仕事を減らせるのだろう?【白兎先生は働かない 第5話】

  9. しろやぎ秋吾「白兎先生は働かない」

    教員の家族が壊れてしまう前に【白兎先生は働かない 第6話】

  10. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    女性用風俗に通う女性たちの心のうちを描くコミック新連載【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第1話前編】