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金日成政治大学に随行した謎の女性 夫人の李雪主か、娘のジュエか、秘書の玄松月か?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
金日成政治大学を訪問した金正恩総書記に随行した後ろ姿の女性(朝鮮中央通信から)

 日韓のメディアは金正恩(キム・ジョンウン)総書記が先週(2月24日と25日)、軍政治将校を育成する北朝鮮最高の軍事政治学院である金日成(キム・イルソン)政治大学と軍指揮官を養成する姜健(カン・コン)総合軍官学校を相次いで訪問したことをニュースとして取り上げていた。

 特に、姜健総合軍官学校で金総書記が「帝国主義の侵略性と好戦性が史上最も露骨化し、戦争と流血が日常茶飯事となっている今日の国際的環境は我が武力が戦争に完璧に対処することを求めている」として「全ての学生が現代戦場での実戦の経験を我々の方式で消化・習得し、急ピッチで先進化している兵器と戦闘技術機材に精通し、現代戦に応じた指揮能力を備えよ」と呼び掛けたことから一連の訪問を北朝鮮の対露派兵絡みで注目していた。

 金総書記の視察には党軍政指導部長の朴正天(パク・ジョンチョン)党書記及び努光鉄(ノ・グァンチョル)国防相ら党中央軍事委員会委員らが同行していたが、金日成政治大学訪問関連で朝鮮中央通信が配信した36枚の写真をみると、26枚目に後ろ姿の女性が写っていた。その女性は敬礼している兵士に握手しようと手を差し伸べている金総書記の傍に立っていた。外形からして妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長でないことは明らかだ。

 努光鉄国防相が女性の方にちらっと視線を向けていたが、ヘアースタイルや背格好からすると、李雪主(リ・ソルジュ)夫人のようでもあり、「娘」のジュエのようでもあり、また、秘書の玄松月(ヒョン・ソンウォル)のようにもみえる。3人とも同じようなヘアースタイルをしているので後ろ姿では見分けがつかない。

昨年1月の新年祝賀記念公演の場に姿を現した李雪主夫人と娘のジュエ(朝鮮中央テレビから)
昨年1月の新年祝賀記念公演の場に姿を現した李雪主夫人と娘のジュエ(朝鮮中央テレビから)

 仮に李夫人だとすると、公式の場に現れたのは2024年1月1日の新年慶祝大公演鑑賞以来となる。当時、朝鮮中央通信は金総書記が「『尊敬するお嬢様』と李雪主女史と共に観覧席に姿を現した」と伝えていた。

 李夫人の随行を伏せる理由はないはずだが。北朝鮮は過去に2022年2月1日の旧正月記念公演や2023年2月の人民軍創建75周年宴会、2023年7月12日の大陸間弾道ミサイル「火星18」の発射に立ち会った時も含めて度々同行者として紹介しなかったことがあった。従って、今回も名前を読み上げられなかった可能性も考えらえる。

 「ジュエ」の場合も同じことが言える。

 昨年の動静を見ると、1月1日の新年慶祝大公演鑑賞から12月31日の平壌のメーデースタジアムでの新年慶祝公演まで延べ14回公式行事などに父親と一緒に現れているが、写真は公開されても同行者として紹介されなかったことが半分近くある。

 直近では12月29日の元山海岸観光地区の視察と12月31日の平壌メーデースタジアムでの新年慶祝公演の観賞では言及されなかった。それでも元山海岸観光地区の視察では配信された写真38枚のうち15枚に、また新年慶祝公演鑑賞では19枚のうち5枚も父親の傍にいる写真が配信されていた。

 今回は、1枚とあまりにも少なすぎることや金日成政治学校視察後の金日成政治大学と姜健総合軍官学校の教職員、学生との間でサッカー競技の観覧席にいなかったことから「ジュエ」でないように思われるが、2024年10月31日の大陸間弾道ミサイル「火星19」の発射に立ち会った時も写真は後ろ姿の1枚のみだったことから完全否定はできない。

 夫人でも娘でもないとすれば、金総書記が行くところ常に随行している玄松月秘書ということになるが、仮に娘ならば、北朝鮮が内外の目や評判を気にし、後継者としての「娘」の取り扱いに極めて慎重になっていることの表れかもしれない。

 なお、金与正副部長の金日成政治大学同行は報道や写真では確認されなかったが、少なくとも姜健総合軍官学校訪問の際には同行していたことは2枚の写真(室内と屋外の写真)で確認されている。

 金総書記の金日成政治大学訪問に随行した後ろ向きのこの女性は一体誰なのだろうか?いずれ映像が公開されれば、判明するだろう。

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ありがとうございます。
ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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