第13話 朝②

「え……っ!?」


 ノルンさんが下着を着けるのを、手伝う……!?


 あまりの衝撃的な言葉に、僕は言葉を失う。

 役に立てるのなら、どんなことでも役に立ちたい。

 その考えは、今この瞬間も持っている。

 けど……それが、ノルンさんが下着を着けるのを手伝うことなんて……!


「ど、どうして僕が、そんなことを……!?」

「どうしてって、お姉さんのおっぱいが見えちゃう状態で出ても良いの?」

「えっ!?」


 見えてしまう状態。

 つまり、ノルンさんが今左手と左腕で隠しているものが、隠されずに見えてしまっている状態────っ!


「そ、そ、それは、良く無いというか、とても困るというか、えっと……ふ、服は着て欲しいと、思います……」


 とんでもなく言葉が詰まってしまったけど、女の人。

 それも、ノルンさんのような綺麗な口の人からそんな言葉が出たら、緊張してしまうというか……

 顔が、とても熱くなってしまう……!


「でしょ〜?だけど、ブラジャーって、背中にホックがあるから一人だと着けるのすっごく難しいんだよね〜」

「そ、そうなんですか……?」


 当たり前だけど、僕は女の人の下着に関する情報なんてほとんど知らない。


「うん。でも、フィンくんが協力してくれたら、すぐ着けられるんだよね」

「そ、それは、そう、なのかもしれませんけど……僕、女の人に下着なんて着けたことが無いので、上手にできるかどうか……」

「可愛い不安……だけど大丈夫、お姉さんが丁寧に教えてあげるから」

「っ!丁寧に……ですか?」

「そう、丁寧に……お姉さんがたっぷり、教え込んであげる」

「……」


 なんだか、ノルンさんの声が少し色っぽくて。

 上手く言葉にできない、あやしい雰囲気が漂っている気がするけど。

 ノルンさんが困っていて、僕に助けを求めてくださっているのなら。


「じゃあ、まずは二人でお姉さんのお部屋入ろっか?」


 ノルンさんの、部屋。

 少し緊張するけど、それでノルンさんのお力になれるなら……!


「わかりま────」

「ダメ〜!!」

「っ!?」


 この階全体に、そんな声が響き渡ると。

 激しい足音と共に、エレナさんが姿を現した。

 その表情は、とても焦っている様子で────かと思えば、その両手で僕の両目をおおってから。


「ちょっとノルン!いい加減そのスタイルやめてよ!あと、何フィンくんのこと部屋に連れ込もうとしてるの!?」

「連れ込もうとしてる、なんて人聞き悪いよ〜。私はフィンくんにブラジャー着けてもらおうとしてただけなんだから」

「っ!?フィ、フィンくん!?本当!?」

「は、はい……お一人で着けるのが難しいと言うことだったので、僕が、ノルンさんのし……下着を、着け……ることに……」


 改めて言葉にすると恥ずかしくて、僕は自らの顔を両手で覆う。

 すると、エレナさんは僕の目から両手を離して。


「っ……!ノルン!変な嘘でフィンくんのこと困らせないの!下着なんて一人でも着けられるじゃん!」

「え〜?でも、手伝ってもらった方が────」

「とにかくダメ!一人で着けて、早くリビング来て!!」

「あっ────」


 エレナさんが力強く言った直後。

 ノルンさんの声が途切れると同時に、扉の閉まる音が聞こえてきたため。

 両手をゆっくりと顔から離すと、そこには扉を閉めてため息を吐いているエレナさんの姿があった。


「え、エレナさん……」


 僕が呟くと、エレナさんは僕に駆け寄ってきてくださって。


「フィンくん、ノルンに何か変なこととかされなかった?」

「へ、変なこと、ですか?特に、されてないと思います……」

「そっか……」


 安堵したように呟くと、続けて僕の髪を撫でて。


「朝から女の子の下着の話するなんて、フィンくんとっても恥ずかしかったよね……もう大丈夫だからね」

「す、すみません……お力になりたいと思ったんですけど、結果的に迷惑をかけてしまうことになって……」

「ううん。フィンくんの気持ちは十分伝わってるから大丈夫だよ……ほら、みんな待ってるし、一緒にリビング行こ?」

「エレナさん……はい……!」


 頷くと、僕はエレナさんと一緒にリビングへと向かう。

 ────エレナさんと一緒に居ると、心が温かくなる。

 この最前線部隊の皆さんと一緒に居ると、心が温かくなる。

 軍に入ってから、こんなことは一度も無かったのに……


 そのことを強く感じながら歩いていると。

 先ほどまでは香ってこなかった、とても良い匂いがした。

 これは……料理の匂いだ!

 そう思い、エレナさんと二人でリビングに入ると────


「あ!二人とも戻ってきた!」

「おかえりであります!」

「料理できてるよ!テラウォードくん!」

「早くみんなで食べよ!」

「は……はい!」


 皆さんが出迎えてくださったため、僕がエレナさんと一緒に席に着いてテーブルに視線を送ると。

 そこには────


「っ……!す、すごい……!」


 こんがりと焼けたステーキ。

 ふっくらとしたオムレツ。

 香ばしい香りを発しているスープ。

 色鮮やかなサラダ、など。

 見ているだけでお腹が空いてしまいそうなほど美味しそうな料理が、たくさん並べられていた。


 僕が、その光景に思わず目を奪われていると。


「フィンさん。見ているだけで無く、食して頂いても構わないのですよ」


 という声が聞こえてきたため、すぐ横を向くと。

 そこには、綺麗な金髪の女性、セフィアさんの姿があった。


「セフィアさん……!今日のお料理は、セフィアさんが作ってくださったんですよね!!」

「はい。私だけではありませんが、メインは私が務めさせていただきました……男性にお料理を振る舞ったことはないので、少々緊張してしまいますね」


 頬を赤く染めて、どこか照れた様子で言うセフィアさん。

 ……見れば見るほど、料理がとても輝いて見える。


「もう食べて頂いても構いませんので、どうぞそちらに置いてある食器を使って、お召し上がりください」

「わ、わかりました……!」


 僕は、まずオムレツを食べさせていただくべく。

 手にスプーンを持つと、目の前のオムレツと向かい合った。


「っ……!」

「テラウォードくんがスプーン持ってる……!」

「可愛い……」

「テラくんのご飯食べてるところ見れるとか……!」

「どんな顔でご飯食べるのかな……」

「絶対可愛い……!」

「想像できるよね」


 皆さんが、なぜか騒然としだしたけど。

 話しかけられたわけではないため、僕は目の前のオムレツに集中して。

 スプーンを近づ────


「報告!報告!」


 突如、一人のこの最前線部隊員の女性がリビングにやってくると、その女性は続けて口を開いて。


「戦域最前線ラインに敵影てきえい有り!数五百!この最前線拠点を目指して進んできている模様です!!」

「っ!?」


 報告を聞いた僕は、思わずスプーンを持っている手の力を緩める。

 敵……!

 そうだ……皆さん明るい雰囲気だからつい忘れてしまいそうになってしまうけど、ここは

 昨日は幸い敵が来なかったみたいだけど、敵が来るのなんて日常茶飯事にちじょうさはんじなんだ!


「皆さ────」


 僕が呼びかけようとした時。

 皆さんの方を見てみると、皆さんは今までとはまるで別人のように目元を暗くしていた。

 数が五百というのを聞いて、皆さん落ち込んでいるのかな……

 なんて思考もぎったけど────


「……あり得ない」

「最悪……」

「テラウォードくんがご飯食べようとしてたのに……」

「可愛いところ見れる流れだったのに……」

「許せないんだけど……」


 小さな声だから何を言っているのかは聞こえないけど、とにかく皆さんは戦意を喪失そうしつしているという様子では無く。

 むしろ、闘志とうしを高めている様子だった。


「……」


 僕は訓練生。

 いざこうなった時にどうすれば良いのかなんて、机上でしか知らないため。

 動かずに静かにしていると、僕の隣に居たエレナさんが立ち上がって。


「みんな!怒ってるのは私も一緒だけど、いつも通り戦うよ〜!フィンくんに、このルーヴァンクルム帝国軍最強部隊の力、見せてあげよ!だよ!」

「っ……!」

「テラウォードくんに……!」

「良いところ……!」

「見せる、チャンス……!」


 先ほどまで目元を暗くしていた皆さんは、今のエレナさんの言葉を聞くと。

 目元を明るくして、とても士気しきを高めている様子で。


 僕たちは、全員でこの拠点から出ると、そのまま敵影が見えたという場所まで向かい始めた────



====================

あなたの一つのいいねや作品フォロー、コメントなどには、あなたのご想像なされている何倍も作者を嬉しいと感じさせる力が秘められているので、よろしければそれらの形であなたのお気持ちを教えていただけると幸いです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2025年2月27日 18:05 毎日 18:05

厄介払いで女性だけの最前線部隊に送られた僕、男嫌いと噂の最強美少女たちに好かれすぎて夜が大変な件 神月 @mesia15

作家にギフトを贈る

いつも応援してくださりありがとうございます!!
カクヨムサポーターズパスポートに登録すると、作家にギフトを贈れるようになります。

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ