Flag

An official website of the United States government

Global Issues
2024年人身取引報告書(日本に関する部分)
5 MINUTE READ

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

国務省人身取引監視対策部

2024年6月24日

日本(第2階層)

日本政府は、人身取引撲滅のための最低基準を十分には満たしていないが、満たすべく相当の取り組みを実施している。政府は前年の報告書対象期間と比較して、全体的に取り組みを強化していることを示した。ゆえに、日本は引き続き第2階層となった。こうした取り組みの中には、より多くの人身取引事件の捜査、人身取引容疑者のより多くの訴追開始、男性被害者を含むより多くの人身取引被害者の認知などが含まれる。政府はまた、強制労働への陥りやすさを減らすため技能実習制度改革に関する公的有識者会議の勧告をまとめた報告書を発表し、2024年3月には同会議の勧告を反映した法案を国会に提出した。同法案は、報告書対象期間末時点で、国会の成立を待つ状態であった。しかし、政府はいくつかの重要な分野で最低基準を満たしていなかった。報告書対象期間中、労働搾取目的の人身取引および性的搾取目的の児童人身取引事案について政府が行った刑事捜査件数と訴追件数は、低水準にとどまった。法執行機関は引き続き、人身取引の兆候を十分に審査しないまま商業的性産業において搾取を受けた何百人もの児童を特定し、児童の性的搾取を目的とする人身取引犯の大半を罰することなく活動させた。当局は引き続き、厳しさが十分ではない刑を規定している法律に原則基づき、人身取引犯を訴追し、有罪判決を下した。また、少なくとも7年連続で裁判所は、有罪判決を受けたほとんどの人身取引犯に対して、実刑の全ての執行を猶予するか、罰金刑のみを科した。技能実習制度における移住労働者については、労働搾取を目的とした人身取引の兆候に関する報告が依然としてあったが、政府は積極的には技能実習制度内での労働搾取を目的とした人身取引被害者を1人も認知せず、技能実習制度の労働者を搾取した人身取引犯を1人も訴追しなかった。技能実習制度において、政府と送り出し国との協力覚書は、借金を理由に技能実習生を強要する主な要因の一つである、外国に拠点を持つ労働者募集機関による過剰な金銭徴収を防止する上で、依然として効果を発揮しなかった。当局は、統一性のない非効果的な認知・紹介手順に依然として頼り、公務員はその結果、人身取引の被害者となり、その直接の結果として犯した違法行為のみに基づき、被害者を不適切に処罰した可能性がある。全ての都道府県が人身取引被害者に対して十分な保護支援サービスを提供したわけではなく、法務省が緊急避難所として男性被害者に一時的な宿泊施設を提供したものの、男性の被害者に対応できる政府のシェルターはなかった。人身取引の被害者となった女性と児童は、シェルターでの保護支援サービスを受けるために仕事や学校をやめなければならないことが多かった。政府がサービスを紹介したのは、認知された被害者の3分の1未満であった。

優先すべき勧告

  • 性的および労働搾取目的の人身取引を精力的に捜査・訴追し、有罪判決が下された人身取引犯に対する相当長期の刑期などの十分な処罰を求める。
  • 技能実習制度やその他のビザ制度の下で日本にいる人たちや、入国者収容施設に収容されている人たちなど、労働搾取目的の人身取引被害者の認知とケア提供の紹介に関して、省庁固有ではなく政府全体の標準作業手順を策定し実施する。
  • 第三者のあっせんを介すことなく商業的な性的搾取を受けた児童や、技能実習制度や特定技能制度の下で働く移住労働者などの被害者が、認知され、かつ支援サービスを受けられるようにし、人身取引の被害者となり、その直接の結果として犯した違法行為のみによって不適切に拘束または強制送還されることがないよう審査を強化する。
  • 移動の自由があり、かつ外国人や男性の被害者向け支援サービスを提供するサバイバー中心のシェルターなど、人身取引被害者ケアのための資源を拡充する。
  • 国連人身取引議定書の定義に沿って明白に人身取引を定義した人身取引対策法を制定する。これには、強制、詐欺や強要を示すことを要件としない性的搾取を目的とする児童の人身取引を含む。
  • 外国人技能実習機構および出入国在留管理庁の職員を対象とした被害者認知の研修、外国人技能実習機構と非政府組織(NGO)との連携の向上、認定前の技能実習計画と契約の精査、職場の徹底的な調査、労働者が支払う過剰な手数料やその他金銭を課す機関や雇用主との契約解除、労働搾取を目的とした人身取引を示唆する労働違反の法執行機関への照会などにより、技能実習制度改革法の監督および執行措置の実施を強化する。
  • 要望があれば、全ての技能実習制度参加者が雇用主や産業を変更できる公式な仕組みを確立する。
  • 実刑の代替として罰金刑を認める量刑規定を削除し、少なくとも4年を上限とする刑務所収容を含め、人身取引犯罪に対する処罰を強化するため、人身取引対策関連法を改正する。
  • 特定技能制度や技能実習制度参加者に限らず、あらゆる外国人労働者のパスポートやその他の個人文書を雇用主が保持することを禁止する法律を制定する。
  • 協力覚書パートナー政府と共に、全ての労働者に支払いが課される募集費用およびサービス料を廃止することにより、移住労働者が借金による強制の被害に陥りやすい状況を減らす。
  • 労働搾取を目的とした人身取引の一因となる組織や雇用主による「処罰」合意、パスポートの取り上げ、その他の行為の禁止の実施を強化する。
  • 海外児童買春旅行に参加する日本人の捜査、訴追、有罪判決、処罰を行う。

訴追

政府の法執行の取り組みは依然不十分なままであった。日本には、国際的な法律に沿った定義を含む、包括的な人身取引対策法がなかった。日本は、成人および児童の商業的性行為、児童福祉、入国管理、雇用基準に関する異なる刑法を通して、性的搾取目的および労働搾取目的の人身取引犯罪を違法とした。「売春防止法」第7条は、人に商業的性行為をさせることを犯罪としており、詐欺的または威圧的な手段を用いた場合には最長3年の懲役、もしくは最高10万円(707ドル)の罰金を規定しており、暴行または脅迫が用いられた場合には最長3年の懲役および最高10万円(707ドル)の罰金に処した。同法第8条は、被告が第7条に規定された犯罪の対償を収受し、もしくは収受する契約を結び、または同対償を要求した場合には、最長5年の懲役および最高20万円(1414ドル)の罰金を科して処罰を強化した。「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」は、児童を商業的に性的搾取する行為、周旋、および勧誘を犯罪とし、最長5年の懲役もしくは罰金、またはその両方の処罰を規定していた。同法はまた、商業的性行為や児童ポルノ製造による児童の搾取を目的とした児童の売買を犯罪とし、最長10年の懲役を規定した。政府はまた、児童福祉法を用いて人身取引関連犯罪を訴追した。同法は、児童にわいせつもしくは有害な行為をさせる目的での児童の移送、または隠匿を幅広く犯罪とし、最長10年の懲役もしくは最高300万円(2万1206ドル)の罰金、またはその両方の処罰を規定していた。職業安定法および労働基準法はいずれも、強制労働を犯罪とし、最長10年の懲役もしくは300万円(2万1206ドル)以下の罰金を規定していた。しかし、厚生労働省は、労働基準法における「強制労働」の定義は国際法の人身取引の定義よりも狭く、実際のところ、労働基準法の「強制労働」の罪とされた稀な事案は、人身取引犯罪としては処理されなかったと報告した。性的搾取を目的とした人身取引に対し、懲役に代わる処罰として罰金刑を認めた場合、当該罰金刑は強姦のような他の重罪に規定される処罰と同等ではなかった。市民社会団体は、こうした重複する法律に頼っていることが、人身取引犯罪、特に心理的威圧の要素を持つ労働搾取目的の人身取引を伴う事案を認知や訴追する上での政府の能力を引き続き妨げていると報告した。検察官のこれまでの報告によると、相対的に厳しい処分を下すと控訴を引き起こす可能性が高まり、それが全体的な有罪率の低下につながり、検察官の職業的地位に悪影響を及ぼすという認識のため、多くの検察官が職業安定法と労働基準法の適用を避けた。政府は、特定技能制度や技能実習制度参加者のパスポートや在留カードを、雇用主や監理団体が取り上げることを法的に禁止していた。しかし、雇用主、募集を行う者、労働あっせん業者による日本人あるいはその他の区分の外国人労働者のパスポート、渡航書類または身分証明書の取り上げを禁じる法律がなかった。その代わり、政府はこうした労働者から書類を預かることを禁止する指針を設けていた。前年の報告書対象期間と同様に、技能実習制度参加者の書類取り上げを禁止する法律を執行する取り組みに関して、政府からの報告はなかった。関係筋は、主要な法執行機関と司法関係者の人身取引に関する深刻な認識不足を以前から報告していた。

2023年、警察庁と厚生労働省は、115件の人身取引事案において56人の被疑者を捜査した。2022年は60件で、捜査した被疑者は22人であった。2023年、政府は42人の人身取引被疑者(性的搾取目的39人、労働搾取目的3人)の訴追に着手した。2022年は32人の人身取引被疑者が訴追された(全員が性的搾取目的の人身取引被疑者であった)。報告書対象期間末時点で、被告人14人の訴追が継続していた。政府は33人の人身取引犯に有罪判決を下した(性的搾取目的31人、労働搾取目的2人)。2022年も同数の人身取引犯が有罪判決を受けている。有罪判決を受けた人身取引犯33人のうち、24人は1年から12年の実刑を受けた。その中の15人は、刑の全部の執行が猶予された。裁判所は、9人の人身取引犯に対して、罰金刑だけの判決を下した。少なくとも7年連続で裁判所は、有罪判決を受けたほとんどの人身取引犯(72%、2022年は67%)に対して刑の全てを猶予するか、罰金刑を言い渡した。人身取引犯罪に加担した政府職員について捜査や訴追が行われた、あるいは有罪判決が下されたという政府の報告はなかった。

訴追と有罪判決はいずれも、技能実習制度内での労働搾取を目的とした人身取引に関わるものではなかった。技能実習制度の下で労働搾取を目的とした人身取引の兆候が広くみられることが知られていたにもかかわらず、政府から技能実習生を搾取する人身取引犯に刑事責任を負わせるという報告はこれまでなく、また政府は、刑務所収容期間を含む、相応な処罰を用いた刑を下したこともなかった。政府は実地検査のための検査手引きと年次検査方針を公表したほか、賃金不払いなどの不適切な待遇や暴行などの人権侵害の兆候がないかを、外国人技能実習機構が検査を実施した際に審査したと報告した。NGOの支援サービス提供者は、再三にわたり技能実習制度の実習事業場内で起きている具体的な労働搾取目的の人身取引の申し立てに注意を喚起したと報告した。政府は報告書対象期間年にこのような実習事業場の調査を数千回も実施したにもかかわらず、当局は概してこれらの申し立てを潜在的な人身取引犯罪としては積極的に捜査しなかったとNGOは主張した。NGOは、外国人被害者を巻き込んだ労働搾取目的の人身取引事案に対して、心理的威圧を裏付ける証拠ではなく虐待の物理的兆候に過度に依存するなど、裁判所が極端に高い証拠基準を設定しているため、適切な法執行措置を妨げていると報告した。

政府は、性的搾取を目的とする人身取引犯罪にあたり、加害者の正式な起訴や有罪判決に第三者のあっせん関与は必要ないと報告した。しかし、商業的性行為が第三者によりあっせんされたのでない限り、当局は実際に商業的性的搾取を受ける児童を性的搾取目的の人身取引被害者として正式に認知しなかったため、政府は人身取引の法律の下で商業的性的搾取を受ける児童に関する事案を通常は捜査・訴追しなかった。政府は2023年、少なくとも503人の被疑者と390人の被害者が関与する性的搾取を目的とする児童の人身取引を577件報告した。前年の報告書対象期間と同様に、政府はこれらの事案に関係する児童の大多数を人身取引被害者としては認知しなかった。当局はここ数年でも、性的搾取を目的とする児童の人身取引に関する何百件もの事案(2018年から2022年は年間630件から956件で推移)を、正式に人身取引犯罪として捜査せずに処理した。政府は2023年、未成年の女子高生と成人とをつなぐ出会い系サービスを容易にする、もしくは出会いに利用される場所である「JK」ビジネス関連の事案4件で9人の被疑者を逮捕した。8つの主要都道府県は、「JK」ビジネスを禁止し、18歳未満の少女が「援助交際」業で働くことを禁じるか、または「JK」ビジネスの営業者に対し、各地の公安委員会に従業員名簿を登録することを義務付ける条例を維持した。政府は、人身取引の法律や規制に関して、外国人技能実習機構、警察庁、法務省、厚生労働省など、さまざまな政府省庁に対して人身取引対策研修を引き続き実施した。

保護

政府の保護への取り組みは依然不十分なままであった。政府は61人の人身取引被害者(性的搾取目的48人、労働搾取目的13人)を認知しており、前年の女性人身取引被害者29人(性的搾取目的27人、労働搾取目的2人)から増加した。政府は、女性13人、少女28人、少年7人を性的搾取目的の人身取引被害者と認知し、女性9人、少女1人、男性2人、少年1人を労働搾取目的の人身取引被害者と認知した。労働搾取目的の成人人身取引被害者のうち、11人は外国籍であった。これとは別に、あるNGOは外国籍女性7人を性的搾取目的の人身取引被害者と認知した。

専門家は、政府の紹介手続きを評価するのはコミュニケーション不足のため難しいと報告し、政府は被害者を積極的に認知し保護するためにさらなる取り組みができたはずだと述べた。NGOは以前から、標準化された適切な指針の不足、省庁間の不十分な連携、関係省庁間での性的および労働搾取目的の人身取引に関する不十分で統一性のない一連の法律が、被害者を認知し保護する政府の取り組みが不十分であったことの要因となったと報告していた。政府は、被害者の特定に関する公務員向けの正式な指針と人身取引事案の対応手順が含まれた法執行職員向けのハンドブックを引き続き利用した。しかし、公務員が被害者を認知する政府の指針は、2010年に作成されてから改定されていないため、包括的でなく不十分なものであった。その結果、多くの被害者がケアの利用を制限されることとなった。

報告によると、公務員は技能実習制度下の外国人実習生と商業的性的搾取の捜査に関与する全ての個人を対象として人身取引に関する審査を行い、政府は審査に関する取り組みに積極的であったが、結果として技能実習生の中で人身取引被害者を1人も認知せず、「買春に関与させられた児童」数人のみを性的搾取目的の人身取引被害者として引き続き認知した。専門家は、政府により正式に認知された外国人被害者数は近年減少しており、新型コロナウイルス流行以前に広く行われていた積極的な法執行活動による被害者認知に比べ、2023年における外国人被害者のほとんどの場合、自力で搾取から逃れて援助を求めた個人であったと指摘した。関係府省庁の従事者は、統一性のない不十分な被害者認知手順に従った。同手順には、全ての形態の人身取引、特に、性的搾取を目的とした児童の人身取引や移住労働者の労働搾取を目的とした人身取引は網羅されていなかった。報告によると、警察と入管職員には、特に外国人に関する事案に関して、さらに多くの継続した兆候があった事案においてさえ人身取引の兆候に対する認識が不足していた。商業的な性行為を禁止する法律の範囲が限定的なため、児童や成人の搾取が、合法化されてはいるもののほぼ規制されていない「デリバリー・ヘルス・サービス」や、商業的な性行為を助長する都市部の歓楽街の範囲内で広く起きた。性的搾取や労働搾取目的の人身取引に対する当局の誤った認識と、被害者の審査および認知手続きが不十分であったため、政府は引き続き被害者を、出入国管理法違反などの、人身取引の被害者となりその直接の結果として犯した違法行為のみを理由に逮捕、拘束、強制送還した可能性が高い。

政府は、搾取されていると逃亡後に当局に自己申告した外国人技能実習生2人を労働搾取目的の人身取引被害者と認定した。外国人技能実習機構と労働基準監督署は、2人の被害者に未払い賃金が全て支払われるよう支援を提供した。対応した担当職員はまた、利用可能な被害者支援サービスを被害者に伝えたが、どちらもサービスを拒否し、本国帰国を選択した。両被害者の帰国に伴う一時的な滞在費と旅費は監理団体が負担した。

2022年、9006人の技能実習生が職場から失踪した。その中には、搾取的または虐待的環境から逃げた者もいた。政府は2023年の最新統計を発表していない。虐待的な雇用主や環境からは逃れたものの、弁護士や労働組合に支援を求めなかった技能実習制度参加者は、通常は法執行機関に逮捕され、入国者収容施設に収容され、当局によってしばしば、在留資格の剥奪やその後の強制送還の対象とされた。政府は行方不明となった技能実習制度参加者に自己申告を求め、彼らが本来の職務を遂行しない正当な理由があると当局が判断した場合、参加者の在留資格は取り消されなかった。労働契約の中には、日本での就労中に妊娠あるいは罹患した実習生を自動的に帰国させる違法な条項を含むものもあった。契約終了前に日本を出国する技能実習生に対して、出入国在留管理当局は1万3723件の面接審査を実施した。前年は1万3111件であった。法務省は、出入国在留管理庁の職員が面接審査において人身取引被害者を認知したかどうかについて報告はしていない。10人の技能実習生が、出国は強制されたものであったと報告した。

当局は、商業的性行為が第三者によりあっせんされたものでない限り、児童を性的搾取目的の人身取引被害者とは一貫して認知せず、このことにより何百人もの児童が、必要な被害者保護支援サービスを受けることも損害賠償請求権を利用することもできなかった。報告書対象期間中、商業的性産業で搾取された数百人の未成年者が警察と接触したが、これらの子どもたちが性的搾取を目的とした児童の人身取引被害者として審査または認知されたかどうかを政府は報告していない。政府はまた、2000年に採択された国連人身取引議定書の定義上の基準に反して、性的搾取を目的とした児童の人身取引は加害者による「被害者の支配」を要件とする理由で、全ての児童の商業的性行為事案を、性的搾取を目的とした児童の人身取引事案として扱わなかったと報告した。地方の法執行職員の中には、これまでの報告書対象期間に、13歳という異例に低い日本の性的同意年齢が、商業的性的搾取を受けた児童を人身取引被害者として公的に認知する取り組みを一層複雑にしていると述べる者もいた。2023年6月、政府は刑法第177条を改正し、性的同意年齢を16歳に引き上げた。

ここ数年間と同様に政府は、あらゆる形態の人身取引被害者に対して、サバイバー中心のシェルターや精神的・社会的ケア、法的支援などの、全体的に十分な保護支援サービスを提供しなかった。当局は、認知された人身取引被害者61人のうち、性的搾取目的の人身取引被害者12人(女性3人、少女9人)と女性強制労働被害者7人を含む19人についてケア提供を紹介した。政府は男性被害者にケアを紹介することはなかった。前年は、9人の性的搾取目的の人身取引被害者が婦人相談所や児童相談所に紹介された。政府から提供される被害者が利用できる支援サービスやその質は、都道府県ごとに大きく異なっていた。専門家は、紹介手続きは透明性を欠き、被害者支援に関わる全ての機関や団体には理解されていないと報告した。政府は、女性や児童の人身取引被害者やその他の犯罪の被害者のためにシェルターを提供できた婦人相談所や児童相談所と、性的搾取目的の人身取引の一部の形態も含む性暴力被害者のための「ワンストップ支援センター」に資金と研修を提供した。各都道府県には、婦人相談所、児童相談所、ワンストップ支援センターが少なくともそれぞれ1カ所ずつ設置されていた。婦人相談所のシェルターは、食料やその他の生活必需品、精神的ケアおよび医療費を提供し、被害者は自由に出ることができた。しかしNGOの中には、こうした施設の物理的状況や支援サービスは貧弱で過度に制限されていると主張を続けた団体もあった。報告によると、シェルターの秘密保持のため、資源が不十分な都道府県にある婦人相談所は、保護を求める女性や児童に対して仕事や通学をやめるよう求めた。さらに、報告によると、政府への支援提供者は政府が被害者を正式に認知しない限り被害者を支援できず、その結果、支援サービスへのアクセスが遅延した。婦人相談所は、LGBTQI+の人たち全員を収容することはできなかった。また、政府のシェルターは男性の人身取引被害者を収容することができなかった。被害者は人身取引犯に対して損害賠償を求める民事訴訟を起こすことができたが、前年の報告書対象期間と同様に、政府から被害者が訴訟を起こしたかどうかの報告はなかった。雇用主の中には、技能実習生に対して行われた労働虐待への損害賠償請求の機会を減らすため、労働組合を脱退するよう実習生に圧力をかける者もいた。

政府は、外国人人身取引被害者は法的には日本人被害者と同じ便益を受ける権利があると報告したが、実際には、合法的に日本に居住する被害者であれば受けることのできるその他の政府提供の社会支援サービスについては、外国人人身取引被害者の利用は限定されていたか、全く利用できなかった。専門家は、政府は尋ねられない限り、利用可能なサービスについて外国人被害者に積極的には知らせなかったと報告した。職員はしばしば、被害者認知手続きを完了することなく、潜在的な外国人被害者の帰国を優先した。これは、被害者が日本で受けられる支援について知らなかったため、できるだけ早く帰国することを望んだことが一因である。政府は、人身取引犯が日本で搾取した外国籍者への保護支援サービスについては、駐日外国公館からの提供に依存・期待した。認知された人身取引被害者の中に出入国管理及び難民認定法違反とされた者はおらず、そのため政府は人身取引被害者に在留許可を与えることはなかった(2022年の2人から減少)。報告によると、出身国へ帰国することに伴う影響を恐れる外国人被害者は、一時的もしくは長期的に、または定住者として在留する便益を受けることが可能であったが、被害者がこの便益を受けたかどうかについて、政府からの報告はなかった。政府は、日本で認知された外国人人身取引被害者に帰国支援や社会統合支援を提供する国際機関に対して、引き続き資金提供を行った。

防止

政府は人身取引防止のための取り組みを緩やかに強化した。全体的な取り組み、特に被害を受ける危険の高い移住労働者の人身取引を防止する取り組みは、依然不十分なままであった。政府は人身取引対策について、全国レベルでの関係府省庁の連携機関と、下位レベルでの法執行連携グループを維持し、それぞれが報告対象期間中に1度会合を開いた。政府は引き続き、政府による人身取引対策のための行動について公的な年次報告書を作成し、2022年の人身取引対策行動計画で表明した目標に照らして、施策の取り組み状況を追跡調査した。人身取引行動計画は、有罪判決を受けた人身取引犯への処罰の強化、児童の性的搾取を目的とする人身取引の認知向上、技能実習制度内での労働搾取目的の人身取引を含む労働者の虐待防止を優先事項とした。警察庁は、匿名通報サービス、研修、啓発キャンペーンやイベント、都道府県警の捜査活動など、人身取引対策活動に2942万円(20万7959ドル)を割り当てた。当局は、警察庁の公式ウェブサイトを含むオンライン、ラジオ番組、ポスター、冊子を通じた情報発信と、NGO、出入国在留管理局、労働基準監督署、日本内外の外国公館へのリーフレット配布を通して、人身取引に対する啓発活動を引き続き行った。内閣府男女共同参画局と法務省はそれぞれ、193万円(1万3642ドル)と629万円(4万4462ドル)を、啓発用の小冊子、リーフレット、ポスターに費やした。外務省は新任の外交職員を対象に、ビザ発給業務に際して人身取引に関するトラウマを持つ申請者に配慮するよう研修を実施した。政府は、商業的性行為の潜在的な利用者を対象にした啓発資料など、商業的性行為の需要を減らすために一定の取り組みを実施した。政府は、海外で児童の性的搾取に関与した日本国民を訴追する域外管轄権を有していたが、4年連続でそのような事案の捜査を1件も報告しなかった。複数の省庁は、人身取引の可能性がある事案を特定できるホットラインの運用を継続したが、警察庁は人身取引の捜査につながったホットラインの通報はなかったと報告しており、他の省庁からも通報が人身取引被害者の認知や人身取引に関する捜査に至ったかどうかの報告はなかった。

2023年、15万4376人の技能実習生が入国した。2016年成立の「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習制度改革法)」は、新規の技能実習生と雇用主が共同で作成する、生活環境、労働時間、その他の要素の概要である実習計画を、厚生労働省が認定するよう義務付けた。外国人技能実習機構は、新たな実習計画を審査し、2023年1月から11月までに提出された32万6267件超の実習計画のうち、6590件を認証しなかった。しかし、このような初期審査にもかかわらず、送り出し機関の契約と受け入れ機関の契約との一体性、あるいはこれらの契約と実習生の実習計画との一体性を確保する監督手続きを当局が十分には実施せず、その結果、内容に齟齬が生じ、多くの実習生が労働搾取目的の人身取引を含む労働虐待を被りやすくなったと専門家は主張した。外国人技能実習機構は、監理団体と技能実習実施機関の検査を引き続き実施したが、検査を行った団体数についてのデータは報告書対象期間中に提供できなかった。外国人技能実習機構は、労働者の身分証明書を取り上げて保管した、もしくは認証済み技能実習計画に応じた研修を提供しなかった420人の雇用主に対して、法的拘束力のない指導を行った。外国人技能実習機構は、技能実習制度への参加を5年間禁止するなどの処分を、人権侵害を行った20カ所の監理団体・雇用主に下し、政府のウェブサイトに名前、住所、賃金未払いや認証済み技能実習計画の不履行などの処分理由を公表した。外国人技能実習機構はまた、実際の労働条件が認証済み技能実習計画内で雇用主が約束した労働条件から大きく逸脱している事案として402件を認知し、出入国在留管理庁長官と厚生労働省は該当する実習計画を無効にした。これは、前年に無効にした実習計画358件から増加となった。このような行政処分に関して、外国人技能実習機構や法務省が人身取引事案を認知したか、または刑事捜査に委ねたかどうかについて、政府からの報告はなかった。政府は概して、虐待や搾取を含む技能実習制度内の問題を、潜在的な人身取引犯罪ではなく、雇用主と従業員との間の個人的な争い、あるいは労働基準法下での行政違反として扱った。市民社会団体や国際機関は、外国人技能実習機構は職員数が不足しており、技能実習生の審査や労働搾取目的の人身取引などの虐待の申し立てを十分に調査することができなかったと引き続き報告した。実習生の中には、雇用主による突然の契約変更や終了に関する仲裁を求めても、外国人技能実習機構は無反応であったと報告した者もいた。外国人技能実習機構は、雇用問題を報告し、母国語で支援を求めることができる技能実習生向けのホットラインを設けていたが、潜在的な人身取引の報告がどれだけあったかは追跡していなかった。警察庁は匿名の通報ホットラインを運営し、194件の人身取引の通報を受けたが、人身取引の捜査には至らなかったと報告した。前年の通報数は191件であった。

政府は、技能実習制度に明記されている外国人の研修という目的と、労働者虐待という報告との乖離を埋めるため、関係府省庁による技能実習制度の見直しを完了した。技能実習制度の改革または廃止に関する勧告を策定するため2022年に設置された有識者会議は、2023年11月に最終報告書を発表し、外国人技能実習機構の監督権限の強化、監理団体に対する要件の厳格化、技能実習生の雇用主変更許可の明確化と拡大を勧告した。有識者会議は、企業、労働組合、学者、弁護士の代表者から構成されていた。法務省と有識者会議は、市民社会との会合を複数回開催したが、有識者会議には市民社会の代表者は含まれなかった。政府は、技能実習制度に代わる新しい制度を設立するため、有識者会議の勧告を盛り込んだ法案を作成した。同法案は2024年3月に閣議決定され、報告書対象期間末時点では国会の成立待ちであった。

政府は、14の送り出し国との間で技能実習制度に関する協力覚書を維持し、2024年1月にはネパールとの新たな協力覚書に調印した。協力覚書は依然として、募集行為を規制する日本政府の主要な手段であり、技能実習制度の法的要件に違反したことが判明した外国の送り出し機関を排除することを目的としている。政府は協力覚書を通じて、送り出し国と5回の会合を開催した。政府は2023年、実習生から保証金を徴収するなどの「不適切な行為」を行った送り出し団体について、164件のケースを協力覚書パートナー政府に報告した。パートナー政府はこのようなケースを調査し、是正措置を命じ、派遣団体の技能実習制度への労働者採用認定を取り消す責任を負う。しかし、協力覚書は依然としてほぼ効力を発揮しないままであった。技能実習生に高額の借金を負わせるような「過剰な金銭」の徴収など、募集機関や送り出し機関による虐待的な労働慣行や労働搾取目的の人身取引犯罪への対応が不十分な国からの実習生受け入れを中止する義務は負わないと政府が報告したからである。

政府は、建設、造船、介護など12産業分野の人材不足を補充するため、特定技能制度を引き続き実施した。専門家は、同制度は技能実習制度と同様、労働搾取目的の人身取引を含む労働者の虐待への脆弱性を高めているとの懸念を引き続き示した。特定技能ビザ取得者は、同じ業種内であれば雇用主を変更することができ、資格試験が同じであれば職種を変えることもできる。技能実習生は、技能実習制度内での人権侵害が立証されたなど、限られた場合においてのみ雇用主を変えることができる。NGOは、技能実習生が雇用主を変更する際のこのような構造的かつ実質的な妨げが、依然として大きな障害や搾取の手段になったと引き続き報告した。政府は、報告書対象期間中に技能実習生による転職申請がどれくらいあり、またそのうち何件の申請を認可したかについて報告していない。NGOは以前、搾取された技能実習生による合法的な転職申請の約10%を当局が認可したと報告している。日本の法律により、営利目的の人材あっせん機関や個人が、許可制ではなく登録制で「登録支援機関」となり、労働者を募集するブローカーと雇用主との間を仲介することが可能であった。この法律は、これらの機関が特定技能制度参加者を支援するために団体から手数料を徴収できることを規定しており、支援費用を外国人労働者に課すことを禁止している。専門家は、このような業務料は、この制度下で入国する移住労働者に対して、借金による強要への危険性を生み出す可能性があると報告した。

人身取引の概説

過去5年間に報告されたように、人身取引犯は、日本人および外国人の男女を労働搾取目的の人身取引および性的搾取目的の人身取引の被害にさらし、日本人および外国人の児童を性的搾取目的の人身取引の被害にさらしている。人身取引犯はまた、東アジアや北米など、日本を越えた送り先で搾取する前に被害者を域内のどこからでも日本経由で輸送する。人身取引犯は、主にアジア出身の移住労働者の男女を労働搾取目的の人身取引の対象とするが、その場所は、日本政府が運営する技能実習制度などの事業に参加する企業なども含まれる。日本で急速に増加する外国人留学生は、虐待的でしばしば詐欺的な就労・就学契約条項のため、単純労働の分野において人身取引の被害者になる危険性がある。北東アジア、東南アジア、南アジア、中南米およびアフリカからの男性、女性および児童は、雇用または偽装結婚のために来日し、性的搾取目的の人身取引の被害にさらされる。人身取引犯は、バー、クラブ、売春宿およびマッサージ店での性的搾取を目的とした人身取引のために外国人女性を日本へ入国させやすくしようと、外国人女性と日本人男性との偽装結婚を利用する。人身取引犯は、時には募集に際して給与の1年分以上に相当する借金を負わせるなど、借金による強制、暴力または強制送還の脅迫、恐喝、パスポートやその他書類の没収、その他の精神的な威圧手段を用い、被害者を強制労働や商業的性行為の状態にとどめる。雇用主は、多くの移住労働者に、生活費、医療費、その他の必要経費を支払うよう要求し、労働者の債務による強制への脆弱性をさらに高めている。売春宿の運営者は、素行が悪いとして恣意的に被害者に「罰金」を科すことがあり、被害者が借金を負っている期間を強制的な措置として引き延ばしている。人身取引犯は、求人情報ウェブサイトやソーシャルメディアを介して高齢の外国人と接触し、宗教あるいは退職関連を装った詐欺を用いて犯罪に加担させ、隠蔽された薬物をアフリカ諸国から日本を経由して米国にだまして運ばせるなどして高齢外国人を搾取している。2022年、ある国際機関がカンボジアでのオンライン詐欺行為で、少なくとも1人の労働搾取目的の日本人人身取引被害者を認知した。

人身取引犯は、日本人と外国人、特に十代の家出した少年少女を、性的搾取を目的とした人身取引の被害にさらしている。組織犯罪とつながりがあることが多い「援助交際」やさまざまな形態の「JK」ビジネスが、性的搾取を目的とした日本人児童や、中国、韓国、ラオス、フィリピン、シンガポール、ベトナムからの児童の人身取引を依然として助長している。COVID-19の感染拡大により、失業および家庭内暴力が急増し、それにより、特に家出した児童など、一部の日本人女性や少女が「援助交際」に従事する危険性が高まった。「JK」バーの経営者は、LGBTQI+の青少年を含む一部の少年少女を、ホステスやクラブのプロモーターとして労働搾取目的の人身取引の対象にする可能性がある。女性客が男性「ホスト」の接客に対して料金を支払う「ホストクラブ」というナイトクラブの中には、詐欺的で法外な請求方法によって発生した多額の借金を返済させるために、女性客に商業的性行為を強要し、性的搾取目的の人身取引で一部の女性客を搾取している店もある。高度に組織化された商業的な性のネットワークが、地下鉄、若者のたまり場、学校、インターネット上などの公共の場で、被害を受けやすい日本人女性や少女を標的として、商業的性的行為を目的とした施設、小規模音楽演奏会場、小売店舗内、リフレクソロジー店にて、多くの場合借金による強要により性的搾取を目的とした人身取引の被害者とする。こうした女性や少女は貧困状態で生活しているか、または認知障害がある場合がある。モデルや芸能事務所に見せかけた団体の中には、詐欺的な募集手段を用いて、日本人の成人および児童に不明瞭な契約書に署名するよう強要し、その後、法的手段をとる、あるいは不名誉な写真を公表すると言って脅し、ポルノへの出演を強要する団体もある。トランスジェンダーの児童や成人の中には、自身のジェンダーを肯定するケアの資金源として、規制されていない都市部の歓楽街で雇用を求め、その結果、労働搾取や性的搾取目的の人身取引に利用される者もいる。入国を仲介する日本の民間業者は、日本人とフィリピン人との間に生まれた児童とそのフィリピン人の母親が日本に移住し、日本国籍を取得することを、多額の手数料を取って支援する。日本到着直後、借金を返済するため、性的搾取目的の人身取引の被害者となる者もいる。入国仲介業者に見せかけた組織犯罪集団もまた、仕事があると偽って、このような家族を日本に誘い、女性を歓楽街で労働搾取目的の人身取引や性的搾取目的の人身取引の対象とする。日本人男性は依然として、アジアの国々における地域を越えた児童の商業的性的搾取・虐待について、需要の源泉の一部となっている。

労働搾取目的の人身取引の事案は、技能実習制度において引き続き起きている。送り出し国と日本との間で過剰な金銭徴収の慣行を抑制することを目的とした二国間合意があるにもかかわらず、バングラデシュ、ブータン、ビルマ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、ラオス、モンゴル、パキスタン、フィリピン、タイ、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベトナムからの技能実習生は、過去5年間にわたり、漁業、食品加工業、貝類養殖業、造船業、建設業、繊維生産業や、電子部品、自動車、その他の大型機械の製造業で職を得るために、数千ドルの過大な労働者負担金、保証金や不明瞭な「手数料」を母国の送り出し機関に支払ってきた。技能実習制度の雇用主は、明記された技能実習制度の本来の目的に反して、多くの実習生を技能の教授や育成が実施されない仕事に従事させている。事前に合意した職務と一致しない仕事に就かされている技能実習生もいる。これら40万人の労働者の中には、移動と通信の自由を制限され、パスポートとその他個人的な法的文書を没収され、強制送還や家族への危害といった脅しを受け、身体的暴力、劣悪な生活環境、賃金差押え、労働搾取目的の人身取引を示唆する状態に置かれた者もいた。技能実習生に「処罰合意」への署名を義務付け、妊娠したことなどで労働契約を履行できない場合、何千ドルもの違約金を科す送り出し機関もあった。契約を結んだ技能実習の仕事を辞めた実習生は、虐待を報告せず、政府がそのケースを本来の雇用を行わない正当な理由とはみなさない場合、法的地位を失う可能性があり、このことを利用した人身取引犯の強要により、労働搾取目的や性的搾取目的の人身取引に追い込まれる者もいる。元技能実習生を含む、特定技能制度下の外国人労働者の一部は、人身取引の危険性にさらされている可能性がある。