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なぜ私立学校は独裁化するのか 武蔵野東学園の事案から考える“だれも助けてくれない”法制度の穴 

私立学校の独裁化に歯止めをかける方法とは

このように、私立学校で何らかの問題が発生した場合、学校側がきちんと対応しなかった際の正規の解決手段はもはや存在しない。つまり、都道府県の行政指導に校長や理事長が聞く耳を持たなければ、これ以上誰も彼らの暴走を止めることはできず、治外法権とも言える独裁的な運営であっても、そのまま放置されてしまうのだ。

そのため、民事訴訟や刑事告訴などの法的な手段をとるしかないのだが、それは当事者にとってあまりにもリスクや負担が大きな方法である。

では、どうすれば良いのだろうか。解決手段の一つとして提起できるのは「国内人権機関」の設置である。日本ではあまり馴染みのない言葉だが、既に世界120か国で設置されている、政府から独立した人権救済機関のことを指す。

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学校の問題はもちろん、入管施設や刑務所などでの虐待、会社内のハラスメントなど、あらゆる人権侵害に対し、調査・仲裁・勧告・公表を行う機関である。日本ではこれまで再三にわたり議論が進められ、国連からも設置を求める勧告を受けてきたが、これまでに実現はしていない。

私立学校での人権侵害が救済されない状況が続くなか、実効力をもって介入できる政府から独立した機関の設置を急ぐ必要があるだろう。

私立学校法の第1条には「この法律は、私立学校の特性にかんがみ、その自主性を重んじ、公共性を高めることによって、私立学校の健全な発達を図ることを目的とする」と書かれている。

元来、私立学校法は、先の大戦の反省から、国の暴走に教育が巻き込まれないようにという崇高な理念に基づいて定められた。その結果、独自に建学の精神を定め、今でも国の方針から距離を置いて、魅力的な教育を実践している私立学校が多く存在している。

私立学校には行政から毎年多額の助成金が投入されている。更に近年、私立学校無償化の議論も活発に行われるようになってきた。私たちの税金が投入される私立学校で、人権侵害や独裁的な運営がなされていても、助成金減額の罰則などもなく、公的機関からの勧告も全く効果をなさないという現行の法制度で良いのか、より多くの人に考えてほしい課題である。

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