私立学校は教育委員会の管轄外!誰も助けてくれない”法制度の穴
武蔵野東学園での一件がここまで「泥沼化」してしまった背景には、私立学校特有の「法制度の穴」が要因にある。
公教育を担う学校は大きく分けて国立学校(国立大学附属○○高校など)、公立学校(市立小学校、県立高校など)、私立学校(学校法人○○学園○○中学・高等学校など)の3種類に分けることができ、国立は文部科学省、公立は各自治体の教育委員会、私立は各都道府県の私学部や総務部学事振興課といった名称の部署が管轄することになっている。
補足すると、都道府県が管轄するのは私立幼稚園から高校・高等専修学校までであり、私立大学や高等専門学校は文部科学省の管轄になる。
公立の場合は、児童生徒への懲戒、校務分掌の人事や校則の制定等、校内の事柄は校長に権限があるものの、校長・教員に関する採用・異動・懲戒といった人事は教育委員会が担当しており、少なくとも制度上においては、校長が「暴走」しないような仕組みづくりがなされている。
更に、教育委員会のなかに学校内で発生した問題について相談できる窓口が設置されていることも多く、実際に東京都には東京都教育相談センターの「学校問題解決サポートセンター」という窓口が学校だけでは解決が困難な問題についての相談を請け負っている。仮に、こうした教育委員会の対応によって解決しなかった場合においても、自治体の議員や首長などに相談することで解決した事例も多く聞く。
一方で、教育委員会の管轄外となる私立の場合はそうスムーズにはいかないのが実情だ。ここで少し、学校に関する法律を参照してみよう。
学校教育法第14条において、「(前略)大学及び高等専門学校以外の私立学校については都道府県知事は、当該学校が、設備、授業その他の事項について、法令の規定又は(中略)都道府県知事の定める規程に違反したときは、その変更を命ずることができる。」と定められているが、私立学校法という別の法律において「私立学校(中略)には、学校教育法第十四条の規定は、適用しない。」(第5条)と打ち消されている。
つまり、都道府県の担当部署は、私立学校が規程に違反するような運営を行っていても、改善命令を下すことができないのである。一応、私立学校審議会という外部諮問機関を通して閉鎖命令などを下すことはできるようになっているが、あまり現実的ではない。
そのため、現状、都道府県の担当部署が行使できる唯一の方法は、行政手続法という全く別の法律に基づいて、自治体が民間事業者の任意の協力のもとで指導・助言・勧告する行政指導のみとなっている。