猛烈寒波

台湾でなぜ死者続出? 冷房だけの空調、石床…寒さの備えゼロ

26日、台北市内の立法院で、建物の外壁(上)から剥落し地上に散乱したタイル(田中靖人撮影)
26日、台北市内の立法院で、建物の外壁(上)から剥落し地上に散乱したタイル(田中靖人撮影)

 台湾を23~25日に襲った寒気の影響で、低温が原因とみられる死者数は85~90人となった。中央の消防当局の公式統計ではなく、各県市の消防が独自に「低温が原因」と判断したものを地元メディアが集計したもので、多くは高齢者の心臓や血管の疾患が悪化したとみられる。死者が急増した背景には、記録的な寒気の強さに加え、台湾の各家庭に暖房施設が十分、普及していないことがありそうだ。(台北 田中靖人)

 中央気象局によると、亜熱帯と熱帯に属する台湾では、最も冷え込む1、2月でも平均気温が15度を下回らない。冬場に雨が多く体感気温が数字以上に低く感じる北部でも、平地で最低気温が10度を割り込むことはまれだ。このため、一般家庭の空調機は、冷房だけで暖房機能が付いていないことが多い。一方、床は夏場涼しい石タイル張りが多く、足元が冷える。浴室もシャワーが中心で、浴槽がある家はほとんどない。

 寒い日には、電気ヒーターなど家電量販店で購入できる簡単な暖房器具で暖を取るのが一般的。暖房器具を持たない一人暮らしの学生やサラリーマンは、重ね着をしたり暖かい飲み物を飲んだりして寒さをしのぐという。英BBC(電子版)や米CNN(同)は25日、死者が増えた理由として「台湾の多くの家にはセントラルヒーティング(全館集中暖房)がない」と報じたが、個別の部屋にも暖房がないのが実態だ。

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