男性でも女性でもない「ノンバイナリー」 戸籍の記載変更申し立てへ
自分は男性にも女性にも当てはまらないとする「ノンバイナリー」の申立人が、「長女」とある戸籍を「第1子」など、性別を明らかにしない記載に変更するよう求める審判を、近く京都家裁に申し立てる。
申立人は京都府を本籍地とする50代。女性として出生届が出されたため、戸籍には「長女」と記載された。だが、幼いころから女性の名前や女性として扱われることに強い違和感を持ってきた。
性的アイデンティティーは、性別は男性か女性かという二元的(バイナリー)な枠組みで捉えられないとするノンバイナリー。
申立人は「パスポートも公的書類も性別欄は男か女かしかなく、自分という存在が認められていないと感じてきた。男とも女とも扱われない権利を保障してほしい」と訴える。
戸籍の訂正を認める審判が出た場合、審判を持って役所に行き、申請する流れになる。
戸籍法13条は、戸籍に記載しなければならない事項として「実父母との続柄」とするが、性別については明示されていない。だが現状では、戸籍には「長女」のように、性別を踏まえた表記がなされている。
「『長女』の記載は『錯誤』で憲法13条に反する」
代理人の仲岡しゅん弁護士(大阪弁護士会)は「長女という記載は本人の性的アイデンティティーや生活実態には合致せず、戸籍の訂正を申請できる要件の『錯誤』にあたり、本人の意思に反する性別での記載は個人の尊厳を保障する憲法13条に反する」と主張する。
その上で、「法的な地位は長女であろうが長男であろうが違いはなく、戸籍に性別を明記することに合理的な理由はない。海外では身分登録に男女以外の三つめの性別区分をもうけることや、性別を記載しないことを認める国もある。日本でもノンバイナリーだけでなく、性別を記載されたくないと望む人の権利も保障されるべきだ」と話す。
日本でも履歴書や入学願書などでは性別欄を廃止したり、見直したりする動きがある。
法務省は「戸籍法では出生届に男女の別を記載するよう求めており、出生届に基づいて作られる戸籍の『続柄』には性別が含まれると認識している」と説明する。
性的少数者の人権に詳しい青山学院大学の谷口洋幸教授(国際人権法)は「人間は男性か女性の二つにわかれると考える規範が行きわたった社会の中で、性的少数者の中でも理解されづらい存在だったノンバイナリーが、男女しか想定していない法制度のあり方を問う意義は大きい」。
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