宇都宮の2国立病院職員に賃下げ回答 「国家公務員準拠を無視」反発

重政紀元
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 宇都宮市内の2国立病院の職員が新年度に賃下げを迫られている。国家公務員に準じれば引き上げになるはずが、団体交渉では本給はゼロ回答。手当の見直しで平均10万円前後の年収減となる見込みだ。現場では職員確保などで不安が高まっている。

 2病院は、宇都宮病院(380床)と栃木医療センター(350床)。急性期患者を受け入れている地域の基幹病院だ。

 全日本国立医療労働組合(全医労)によると、新年度の労働条件をめぐる国立病院機構(機構)との交渉では、月例給・ボーナスのベースアップなし、基本給などの6%にあたる地域手当を4%に引き下げ(3年間の緩和措置あり)などという回答だった。

 全医労は、これまでの「国家公務員を準拠」という慣習が無視されたと反発を強めている。国立病院は2004年に独立行政法人化されたが、賃金などの労働条件は国家公務員の賃金水準を決める人事院勧告に準じて決まっていた。

 人事院は昨年8月、月例給を3年連続増となる2・76%増、ボーナスを0・1月分増と勧告。全医労は「少なくともそれと同等のアップが必要」と主張している。

 一方で、機構が人事院勧告通りとしたのが10年ぶりとなる地域手当の見直しだ。市ごとの設定から、都道府県単位に「大くくり化」される。3~6%だった県内は4%に統一され、両病院がある宇都宮市は6%から2ポイントの引き下げとなる。

 全医労栃木地区の試算によると、見直しにより、看護職は新卒で年間7万9256円減、35歳で10万1461円減、50歳で12万1021円減となる。国立病院ではボーナスも15年度から据え置かれていて、国家公務員より0・4カ月分少ない状態が続く。

 新卒者の初任給引き上げが見送られたことも、現場の危機感を高めている。人事院は大卒の総合職で過去最大の月2万9千円余りの引き上げを勧告。ボーナスを含めた年収で比較すると年間で約60万円の差になるという。

 同地区によると、すでに両病院では若手看護師が複数退職し、報酬の高い都心の病院や、勤務にゆとりのあるリハビリ病院などに移籍しているという。補充が間に合わず、本来担当ではない診療科で勤務せざるを得ない状況も起きている。

 全医労によると、新年度の看護師の入職は募集1400人に対し千人弱にとどまる。県内も63人の募集に対し8割しか集まっていない。

 急性期病棟に勤める40代の看護師は「民間病院は賃上げして看護師を集めようと必死になっているのに、こんな状態では国立病院で働こうという学生はいなくなる」と憤る。

 2人の子育て中という30代の看護師も転職が頭をよぎる。「コロナ禍でも必死に勤め、残業などで家族に苦労をかけてきた。それなのに賃下げされるというならもうモチベーションは保てない」

 一方、物価高騰による材料費の値上げなどで運営は厳しい。全国140国立病院の経常収支は、22年度は587億円、23年度は47億円の黒字だったが、24年度は「昨年11月段階で283億円の赤字の見込み」(1日にあった職員への説明)という。

 全医労は27日に予定している団体交渉で改善がなければ、28日に始業からの1時間ストライキを実施する方針だ。

 同支部の役員は「賃下げで医療職が減れば医業収入も減る悪循環になる、という声は病院幹部からも出ている。地域医療の将来にも関わる問題として県民に知ってもらいたい」と話す。

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