法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

実在神社をモデルとした『アサシンクリード』の破壊描写に許可が必要であるかのように産経新聞や電ファミニコゲーマーなどが問題視

 黒人の侍という学説を否定しようとしていた産経新聞*1はともかく、それを仮にもゲームメディアが注釈もせず流布する意図はなんだろうか。
仏ゲームソフト「弥助」神社の内部破壊する映像が物議 実在の神社側「しかるべき対応」 - 産経ニュース

弥助が屈強な侍として描かれるなど、不確かな内容が史実として海外で拡散されることを懸念する声が強まり、注目が集まったが、今度は実在の寺社について、使用許可を取らずにゲーム内に登場させている疑惑が浮上。特に、弥助が神社に入り、祭壇などを壊す映像が動画配信サイトで公開されると、SNSで批判の声が上がった。

『アサシン クリード シャドウズ』実在する神社を無断使用か、担当者「しかるべき対応」。産経新聞が報道

産経新聞による神社側への取材で、ゲーム内への使用許可を取っていないことが判明した形となる。なお、担当者は「しかるべき対応」をするとコメントを残している。

 もちろん神社側が登場させないよう要望する権利もあるし、それをゲーム制作者が聞きいれる場合もあるだろう。しかし過去の裁判などで著作権の切れたような古い建造物は作品に登場させても問題ないという線引きがすでにある。


 さすがに既存のゲームなどを引いて『アサシンクリード』の描写は法律でも慣例でも特別な問題はないという指摘も多数ある。


アサクリシャドウズでの神社破壊を非難してる人々の論理がまかり通ると、特撮作品でスカイツリーサンシャイン60、渋谷109等が壊される映像も作れなくなってしまう。
そんな状況は日本のアニメ特撮・ゲーム界にとって極めて有害である。
権利関係について言うと、非現実世界で建築物・宗教的文物を破壊させないようにする権利はそれらの所有者には無い。
制作側が上記について許可を求める場合はままあるが、それはロケ撮影等、実際に所有者の許可が必要な事案がある場合、所有者から円滑に許可を得たいと制作側が考えるから。

 しかしそれに反発するように、既存の作品はすべての建造物に許可をとることが普通であるかのような不思議な反応も多数あるようだ。


特撮やアニメでそういう建物を破壊する時は許可を取っているのですが…

初代ゴジラの時は「うちの建物は壊すな」って言われたりして大変だった
でもゴジラがヒットしたら逆に壊された方が宣伝効果があるって許可が降りやすくなった話もあります

コナンの映画も海外の建物でも許可取りしてます


そういうのは普通に許可取ってるんですよw
インディージョーンズでも仁徳天皇陵を盗掘させてくれと正式に依頼がありちゃんと断ってるんです
勝手にやって許されるわけないでしょ


モデルの神社の許諾は事前にとったんですか?
特撮作品ではその辺のスジは通しているんですが。

「非現実世界で建築物・宗教的文物を破壊させないようにする権利はそれらの所有者には無い。」との事ですが、それに対する抗議を封殺する権利もありませんよね?

 その場所で時間や空間を占有してロケ撮影をおこなうための負担と、ただ外観をモデルにしただけの場合の負担で、必要な許可がちがうのは当然だろう。しかしそれを不思議がる反応もある。


「実在の施設」でロケをやる時は、当たり前のように撮影許可を取るのですが、それと同じ事を要求されて何が悪いのか、個人的にはかなり不思議だったりする。

 たしかに日本の会社が日本の国内向けに作品をつくる時、モデルにした建造物の関係者の心情や、興味関心をもった客による現実の負担を考慮して許可をとったり、形状を変えることはあるだろう。しかしそれは義務ではない。


 たとえば東宝は『世界大戦争』という大作特撮映画で、核戦争により崩壊する世界各地をミニチュアで再現している*2。ここで再現された各都市の建造物にいちいち許可をとるべきと思うだろうか。



 外国の宗教施設を破壊する描写としては、宇宙からの落下物攻撃でチベットポタラ宮を壊滅させたアニメ映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』などが有名だろう。大国に支配されて指導者が亡命している地域で、いったいどのように許可をえたと考えるのだろうか。


さらに3/4はもうひとつ、重要な出来事が起こっています。
U.C.0093、3月4日。シャア率いるネオ・ジオンが5thルナを強襲。ロンド・ベルの防衛網を突破して核パルス・エンジンを点火。これによって道を外れた5thルナはチベットのラサ地区に落下しています。
#ガンダムモビルスーツ・バイブル

 宗教施設らしい荘厳さを感じる描写として、『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』でノートルダム大聖堂を中心とするパリが壊滅したことも印象深い*3


 これらは対象の建造物の価値を軽視した描写ではない。どれも破壊されるべきでないものが破壊されていることを印象づけるため、象徴として選ばれているのだ。何ら心を動かさない破壊描写を、わざわざ手間をかけて作品に入れることは滅多にない。


 念のため、許可の不要性や制作者の敬意を考慮してなお建造物を破壊しないでほしいという当事者の心情も否定はしない。
 しかしゲーム内の舞台として配置して、プレイヤーに実感をもたせるため破壊エフェクトを用意しただけの『アサシンクリード』が、意識的に破壊する作品と同じくらいに許可の獲得が求められるべきとも思えない。どう考えても許可が必要と今回だけ特別に主張する側にこそ理由がある。

*1:ゲーム『アサシンクリード シャドウズ』が日本を舞台に外国出身の黒人男性を主人公にした差別性は、漫画『ゴールデンカムイ』が北海道を舞台に和人男性を主人公にしたくらいに差別的な可能性はあるが…… - 法華狼の日記

*2:開始1時間44分。他にロンドン橋なども登場しており、世界各地に先行して日本の国会議事堂も溶解している。

*3:第1巻13分50秒、第2巻27分21秒、28分45秒。