初バトル描写なので初投稿です。
感想、ここ好きありがとうございます。
この先の展望を少し言い当ててる方がいてびっくりしました。
side 主人公
レガシィのアクセルを床まで叩きつけ、4駆のトラクションに任せた加速力で前に出る。
225という大した太さでは無いタイヤだが、あえて抑えた出力をフルに使い切るには十分である。
・・・え、さっきのフリー走行ではアクセルでも滑らせてただろって?
まぁそうなんですけど・・・こうしてパワーを出し切った加速が出来ているのは、特殊なテクニックを使った訳では無いのだ。
先程俺がセンターコンソール部のトグルスイッチを触っていたのを覚えているだろうか。
トグルスイッチとは、よく戦闘機のコックピットでパチパチと切り替えられる印象があるだろう。それを想像してもらえば何となくどんなスイッチ形状かは分かると思う。
───実はこのレガシィ、純正では付いてないDCCD*1が後付けしてあるのである。
といっても、そのままミッション本体とコントロールユニットを持ってきた訳では無い。トグルスイッチじゃあ2段階しか制御出来ないだろ、と考えた人は勘がいい。
ミッション本体はBLレガシィ純正の5MTをベースに、センターデフとアクチュエーター類をGC8からまるっと持ってきてニコイチにしてあるのだ。
ただ、俺は純正のローラー型のスイッチが苦手なのでそれをショップに相談した結果、この2段階のみのスイッチが採用となった。
0か100の信号しか出せないために、結果として2段階のみの制御になった、という訳である。
んで今は元の位置にしてあるので、LOCK状態。つまり50:50の駆動配分というわけである。
まぁヒルクライムなのでリアに荷重がかかりやすい分、別にFREEでも良かったかもしれんが。
ヒルクライムはいかに効率よくマシンを加速させるか・・・だと思っているので、今回ドリフトはしません。
地味だって?
・・・だってタイヤあんまり減らしたくないし。
まあ能書きが長くはなったけど結果はどうなったかと言えば────────
「─────GO!!!」
ヴォン!!ヴォオオオォォォン!!!
「うぉぉお!すげー加速!!高橋啓介の前に出たぞあのクルマ!!」
「あのトラクションだと4WDなんじゃないか!?」
────当然、アタマはこっちが獲れる訳だ。
一応言っておくが、4駆ならどんな状況でも前に出れる訳では無い。
マシンのセットアップの仕方にもよるし、そもそもレガシィはインプレッサの先祖とも言える車。*2元々のギア比がクロス気味なのが原因だ。
他に挙げるとするならば、FDはド派手なドリフトを絶えず繰り出していたせいでリアタイヤの磨耗が多少進んでいる事。FD純正のシーケンシャルツインターボはトルクに谷があり、ゼロ加速がそこまで得意じゃない点。前期よりのFDならファイナルが割とワイドめなので、クロス気味なこっちに比べて多少不利というのもある。*3
加えて、向こうは金持ちとはいえ、マシンを深くまで弄り倒している訳では無い。確かこの頃の涼介は啓介の育成を考えて土台を作り上げる為に、自分のも余りチューニングしていないはず。*4
精々がエンジンを少しと太めのタイヤホイールの投入、サスとスタビくらいじゃなかろうか。
こっちはおよそ320馬力だが、30馬力の差を押して余りある程の戦闘力の差があると言っていい。
いくら掛けたと思ってんだコイツに。
唸るエンジン音が車内に飛び込んで来るのを楽しみつつ、3速ホールドでスタート後のタイトめな左コーナーを抜ける。
その先の3車線コーナー。
途中で僅かにRが変化する為、インに着くのは遅めに・・・早めに向きを変えてアクセルをしっかり入れれば、加速勝負で有利なこっちのもんである。立ち上がって4速へ。
緩いS字を抜けて、ロングストレート。スケートリンク前のものよりも短いが、向こうよりもより直線的な部分が多いので、スピードが乗る。5速。
ここでバックミラーをチラリ。
───ちょっとストレートで詰めてきた、か?
まぁ当然だろう。
大差ないとはいえ、向こうはこちらより馬力と車重に勝る上、クルマのコンセプトが異なる。トップスピードは間違いなく向こうに軍配が上がるだろう。
向こうはピュアスポーツ。
こちらはプレミアムスポーツセダン。
スポーツ性能という面で見れば格が違う。
・・・だからといって、決してコイツが劣る訳じゃない。
最初のヘアピンが迫る。
息の詰まるようなフルブレーキングを繰り出し、上り勾配に反して
ブレーキを全力で踏む間にシフトダウン。
サクッと回転を合わせながら5速から一気に3速へ。
原作だとマシンガンシフトダウンなどがよく描写されていたが、個人的にはミッションの古いハチロクゆえの行動だと思ってる。ギア飛ばしはミッションに負担がかかりやすい。
古い設計のミッションは当然許容限界値も現行の車に劣るし、ハチロクのミッションはシンクロ機構が割と弱い・・・と言うと語弊があるか。旧車に分類される車は基本そうである。*5
内部の耐久性が上がったことで消えたテクニックもいくつかあるしな。ダブルクラッチとかは最たるものだろう。あれはミッションの入りにくさ・・・俗に言
う"シブさ"を解消してやる為でもあるが。
シフト飛ばしは時と場合によっては有効だが、基本として挙動が乱れる可能性が高いので、ダウンヒルではあまりオススメできない。
その辺も原作のシフトダウン描写の理由かね?基本下りだし。
ヒルクライムにおいて最初のヘアピンであり、秋名において最もRの緩いヘアピンでもあるここにはかなりのギャラリーが見える。
全員が総立ちで色めき立つのが、なんだか嬉しく感じる。
サーキットだともっと距離あるし、制約も多いからね。こうも直に熱気を感じられる事はほぼないのだ。
───あぁ、楽しいぜ。
✣✣✣✣✣
side 涼介
ついに始まったヒルクライム。スタートしたという報告からしばらくして、第2セクターへのチェックポイントにいるメンバーから連絡があった。
フリー走行で見た限りの結論ではあるが・・・ヤツのマシンは完成の域にあり、それを振り回せるのだから間違いなく高レベルのドライバー。故に、啓介が勝つ事は難しいだろうとは考えていた。
だが正直、想定が甘かったと言わざるを得ない。
───まさか、ここまでとは思ってもみなかった。
「・・・すまない、もう一度いいか?」
『け、啓介さんのFDがここを通過しましたが!先を走るレガシィとの差は
「───あぁ・・・了解した」
ザザーッ、と雑音を吐き出すトランシーバーに対し、辺りは静まり返る。思わずトランシーバーを持つ手が下がった。
史浩も、賢太も、松本も。*6
誰もが呆気にとられた様な顔で驚いている。
傍で聞かせていたスピードスターズの面々さえ、黙りこくったままだ。
「・・・こんなの、ありえないっすよ」
震えた声で呟く。堪えきれない感情を表すように、賢太が激昂する。
「あの啓介さんがこんな一方な展開になるなんて・・・相手のズルとか、なんか啓介さんのFDに重大な不具合かなんかが─── 」
「おい賢太・・・」
「だって!!赤城レッドサンズが誇るナンバー2が!!オレらみんなの憧れであるあの高橋啓介が!!名も知られてないようなポッと出のヤツに千切られるなんて!!有り得るわけないじゃないですか!!!」
賢太の怒号はオレ達だけでなく、周囲のギャラリーにまで響き渡ったらしい。交流戦の最中とは思えないほどに、辺りは静寂に包まれた。
オレは口を開く。
「そう、だな・・・正直、オレも驚愕してる。本音を言えば想定外だ」
オレの発言に、史浩や松本が信じられないような目を向けてくる。
思わず苦笑しながら、内心を話す。
「あぁ、想定外だった。ここまでの差ができるとはな。─────だが・・・啓介が勝てない事は、最初からわかっていた」
俺の言葉に周囲が騒然とし・・・瞬間、レッドサンズが大いに騒ぎ始めた。
当然だな。こうして秋名に交流戦を仕掛けたのも、元々は関東の峠攻略の第1歩としてだったのだから。
「ど・・・どういう事だ涼介!!負けると分かっててやらせたのか!?」
「オレ達レッドサンズの関東最速プロジェクトはどうなるんです!?!?」
「だったら涼介さんが出たほうがよかったんじゃ!!」
「───アイツは」
スピードスターズの面々がオロオロとコチラを見やるが、今は関係ない。
再度口を開けば、周囲はまた聞く姿勢に戻った。それを見て、続きを語る。
「・・・アイツは今、ちょっとした頭打ちのような状態になっていた。周囲に同格以上の相手はおらず、ただ俺の背中だけを見てがむしゃらに腕を磨いていた。だからこそ、今回のヒルクライムで成長の糸口を掴んでもらおうと考えたんだ」
これは事実であり、純然たる評価と言っていい。今の啓介には足りないものが多い。
車の構造の理解や知識、そこから考える相手のマシンの戦闘力や走り方。マシンコントロールの精密性。メンタル面の強化。タイヤマネージメントの重要性の理解。
軽く挙げただけでもこれだけ挙がる。
啓介の長所は強い闘争心と、それに由来する負けん気の強さ。
それを原動力に正しい努力を続ければ、直に急成長出来るだろう。いずれは俺をも越えられると信じている。
だが、啓介が走り出すきっかけは俺だった。横に乗せて夜の峠を走った時がアイツの原点。*7
だからアイツはオレを上に定め、それが当然のことであると思っている。その差を悔しさに、バネにすることができないでいる。
だからこそ、今回の荒療治なのだ。
ライバルとして意識出来る相手を見つけ、ここから急成長を遂げて貰いたいのだ。
まぁ、相手はプロだから*8と考えて、負けるのも仕方ないと思いそうではあるが。
何より、あれこれ考えずに目の前の壁に向かって足掻く経験は今後得難いものだ。
色んな意味を含めてだが・・・期待しているぞ。
✣✣✣✣✣
side 主人公
第3セクターを抜け、いよいよ最終セクションに差し掛かる。直角に近いコーナーを抜けて左、右。4速まで入る。
ヴォンヴォオン!!
直後のヘアピンに関しては、抜けた先に直角コーナーが待ち受ける初見殺しのため、立ち上がりは控えめに。2速ホールド。直角の立ち上がりで3へ。
ヴォオオオォォン!!ヴォオン!!
ギャァァアアアア!!
「あ、アタマはFDじゃねぇぞ!!マジか!?」
「地元とはいえ、まさかのスピードスターズ側が先行してんのか!!思ったよりもやるじゃんか!!」*9
「うぉおおお!すっげーコーナーワーク!!インとアウトのガードレールを掠めてったぞ!!!」
向こうでも散々走ったけど、景観も状況もまるで違う。
不本意な始まりのタイムアタックではあったが、結局オレは誰よりもこの瞬間を楽しんでいると思う。一言で言えばチョー気持ちいい。*10
「おっと、と」
集中が逸れたせいか3速のままヘアピンへ突入してしまった。
減速は出来ているので、ターンインの最中にクラッチを蹴り飛ばし、ブリッピングで2速へ下げていく。
焦って操作すれば余計なミスが増えやすい分、ここは落ち着いて行おう。*11
立ち上がればもう目立つコーナーはない。ゴール地点まで一直線である。
バックミラーを見るも、そこに光は無い。
・・・やっぱこうなるかぁ。
今回、これだけの差がついた理由としてしては色々あるが、1番の理由はウデやマシンの戦闘力では無いと言っておこう。
まず思い出して欲しいのだが、俺は現代からこっちに来たわけだ。当然、装着されている部品や消耗品類もこの時代のより高性能にあたる。
何が言いたいかというとつまり、クルマに取り付けている
この年代だとハイグリップタイヤといえば、ADVANのNEOVAが登場したくらいで、BRIDGESTONEならPOTENZA。 DUNLOPではDIREZZAの前身となるFORMURAが現役のはずである。池谷先輩がRSV履いてたし間違いないはず。*12あれ限界超えると一気に滑るから嫌い。
そこから数十年を重ねて、タイヤのコンパウンドやトレッドパターンは進化して来た。
その最新テクノロジーで作り上げられたタイヤは、この時代ではSタイヤ並と言っても遜色ないだろう。
それだけドライグリップ、ウェット性能、耐久性の差があるものを使っているのだから、正直公平とは言えないだろう。
とはいえ、自分から挑んだ勝負なのだからどうにか飲み込んで欲しい。
まぁ、大目に見てよ〜*13というやつである。
ゴールが見えてきた。こっちを見ながらスピードスターズが大騒ぎしてるのが目に入る。たのしそうだね。
まぁ今回はタイムアタックなので、ゴールラインまでは全開で踏んでおこう。
ヴォォォォオオオン!!
「い、池谷ぃいい〜〜!!俺らは夢でも見てんのかぁ!?」
「ふ、へへ・・・へへへ!嘘だろ勝っちまったぜ!!走ったのはオレらじゃねーけど、まさかの勝利だ!!渡辺さんこんなに早かったのかよ!!」
「啓介は・・・まだ見えない、か」
「あの啓介さんが、こんなに差を付けられるなんてっ・・・!!」
「見ろよこのタイム・・・プラクティスの時より、断然早いぞ」
「なんなんだ、アイツ・・・!?」
うーん阿鼻叫喚。この元凶がオレってマ?
今更過ぎるけど程々にしておけば良かったかなーと後悔が出てきた。・・・いや、後で啓介にキレられそうだからコレで良かったんだ。そうと言って。*14
────まぁスピードスターズ側は楽しそうだし、ヨシ!*15
そうして、俺は考えるのをやめた。
主人公 : 流石に有利すぎる条件だったので余裕勝ち。全域でトルクフルな仕上がりのエンジンとクロス気味のミッション、そんで4WDのトラクションときたので、前半の勾配がキツめの区間では水を得た魚。もうガッツリ関わってしまったので少しヤケクソ状態。判断が遅い。
啓介 : 群馬エリアではかなり上澄みだが、流石にマシンのハンデがデカすぎた。しかし後半のハイスピードセクションでは僅かに巻き返しているので、第4セクター突入時より少し差は詰まっていた。使用している銘柄はPOTENZA。
涼介 : 今回は弟の成長のために主人公を利用した。だがこの後ダークホース過ぎる異次元ダウンヒラーによって、交流戦の上り下りで連敗を刻まれるのをまだ知らない。かわいそう。
賢太 : 原作では参加していた描写はなかったが、フリー走行にてそれらしきS14が居たので参加していたことになっている。啓介の強火ファンで憧れを抱いている。当時はそっちの気があるのかと勘違いされてた。この後のダウンヒルで主人公への敵対心が原作主人公へと向くことになる。
史浩 : 涼介の思惑をヒルクライム開始後に聞いて胃が痛い。広報役と外部との折衝役を兼ねているので割を喰いがち。集めたギャラリーに何を言われるかとヒヤヒヤもの。たいへんそうですね。
池谷パイセン : ヒルクライムを獲れて嬉しさ爆発中。主人公へと熱い抱擁をかました。今回の交流戦には綺麗な方のニスモTシャツを着て来ている。
健二先輩 : 原作で苗字も仕事も不明なままの人。そもそも働いてるのか?まだハチロクが来ていないので自分が走る可能性が出ている事に気付いて青ざめてる。もう少し耐えて、どうぞ。
刈り上げヘアー : 原作同様ハチロクが迎えに来なかったので、絶賛原付で山登りなう。残念ながらヒルクライムを見逃した。原作でも間が悪かったりしていたのでそういう星の元に産まれたようである。未だに拓海に乗ってこいと言ったハチロクが、今日の下り担当予定なのを知らない。
未来のフライング・ジャン : 嫌々ながらハチロクで秋名山頂上目指して出発。原作通り茂木とのデートの為である。しかしどうやら茂木の行動が原作から変化しているようで・・・?