第2話なのに主人公の名前がまだ出ないらしい。
さて、1度現状を振り返った後、俺はまず情報を得る為に動いた。
と、いう訳で───
───現在群馬に到着しております。とりあえず元の目的通り渋川から最寄りのインターで降りてみたのだが・・・。
時間帯のせいか全然車がいないのである。
え、2000年代初頭ってこんなもん??
なんかそこら中に走り屋とかがいる期待を持ってただけに肩透かし気分である。
2次元の世界でリアリティ追求してどうすんねん。
そもそもの時間帯の問題を棚上げして、チラホラとすれ違う商用車的な車の運転席には死んだ顔をしたサラリーマンがハンドルを握っていたのを見ると、どの時代でも社畜は変わらんのか、と少し虚しくなった。なぜ社畜を観察しているのだろうか俺は*1。観察日記でもつけてやろうか*2。
そんなくだらないことを考えて運転していると、また車とすれ違う。まぁツートンカラーだから商用車だろ。
妙に勇ましい音を奏でてる様を見て、商用なのに弄ってんのかいと心の中でツッコミを入れて───ん??
「まてまてまてまてまて」
違う、あれ商用車じゃない!自家用って書いてあった!ってそこじゃない違う!
と動揺しながら思わず車を止める。周りに車はいないので迷惑はかかってないがそんなことよりも、
いまのクルマ、ハチロクだったよね??
✣✣✣✣✣
ハチロク────AE86とは、トヨタのロングセラーであるカローラの系譜に存在した、カローラ/スプリンター2車種のスポーツモデルのうち1つである。
手ごろに買えて元気よく走り、簡素な作りの足廻りはかえってメンテやカスタム、ドラテクの習熟に向いていたことから、走り屋を中心に根強い人気を誇った。
だがそんなAE86の人気を不動のものにした要因の大きな一つが、頭文字Dにおける主人公の愛機だったことが挙げられる。
主人公は実家の手伝いのために車を運転しているうちに、早く帰りたくてスピードを出して配達を続けた結果、いつの間にか超絶的な運転技術を身につけていた*3。
その速さを聞きつけたライバル達が主人公に挑み、多くのバトルを繰り広げていく。
時代遅れの、ましてやハイテク装備や強力なエンジン、優れたシャシーなどを何ひとつとして持たない非力なクルマで、格上のスポーツカーを打ち破る姿は人気を集め、いつしか車マンガの金字塔となった。
同時に描かれていた高校生の主人公を取り巻く人間模様は面白く切ないながらもリアリティに溢れていて、初めて読んだ時には衝撃を受けたものだ*4。
んで話は戻るが、今すれ違ったクルマ。
特徴的なシビエ*5のフォグランプが付いてて、
ワタナベのホイール履いてて、
運転席ドアに”藤原とうふ店(自家用)”と書いてあった。
────いますれ違ったの主人公やんけぇ!!!!
よし!急いでUターンして追いつこう。1度でいいから言ってみたいセリフの1つ『厚揚げください』を言うチャンスである。
ちなみに他には『いろは坂のサル』*6と『肝心なところでアンダーを』*7、『超絶ウルトラスーパーレイトブレーキング』*8がある。ロクなセリフがねぇなオイ。
と、ウッキウキで走り出した数十分後・・・。
「───ま、迷った・・・」
勇んで追ったものの当然見失い、こうして路肩で一息ついている状態である。
そもそも地図も土地勘もないのにホイホイと動き回るのはバカだって?──咄嗟に動けるのはバカが殆どだよ。
仕方なく追跡を諦める。
ぐぅう〜
「・・・さすがに、腹減ったな」
集中が切れたせいか腹が鳴りだした。良く考えれば昨日の夜から何も食べていないのである。コーヒー飲んだくらいか。
仕方ないのでコンビニを探す。さすがにこの年代でも24時間営業してるとこもあるだろ*11。腹拵えタイムである。
───お、ほらあったあった。
ササッと車を停めておにぎりなどを買い込む。空腹のため3個くらい。あとお茶に肉まん。
駐車場に置いたレガシィのリアウィングをテーブル代わりにして*12、おにぎりをパクつく。うん、うまい。
───どうでもいいけどこの時代の肉まんおっきいね*13。
食べ進めながらもこの後どうするかを考えていると、また後ろから声が掛けられた。
「なぁアンタ」
「ふぁひぃ?」(はい?)*14
「め、飯食ってたのか・・・急で悪いな。アンタどこから来たんだ?見慣れないからこの辺のヤツじゃないだろ?」
なんで毎回後ろから声掛けられるんです??もう2回目なんですが??知りませんかそーですか。
とりあえず振り返ると、黒いフード付きパーカーを着た金髪のイケメンさんが居た。うわっ顔がいい*15
ケッ、イケメンは敵だ。───というのは冗談。
失礼に値しないようにきちんと飲み込んでから話を聞く。別に反社だとかオモッテナイヨ。
「ゴクンッ──ええまあ。旅行も兼ねて、都内から来てます。なんでも秋名でイベントがあるとか」
「成程な。今夜のギャラリーの1人って訳か。・・・しっかし都内からか、車の弄り具合からして、並の走り屋には見えなかったんだがな。うちのチームでも使ってる奴が多くないエンドレスのブレーキなんて、高くて普通じゃ絶対に入れないしな。それを付けてるアンタに興味が出て話しかけたのさ」
「へぇ、それは光栄なことで────ん?」
彼の来たであろう方を見やると、特徴的な黄色いカラーリングとド派手なリアウィングを備えたFDが目に入った。
・・・リアフェンダーに赤色のステッカーも見える。どうやら本物らしい。
「もしかして・・・高橋啓介さんですかね?」
「オレを知ってんのかよ・・・都内の人間に名前を知られるなんざ、有名になったもんだぜ」
「まぁ、各地のサーキットではレッドサンズは名が売れてますし、気付きますよ」
「ふーん?サーキットも行くのかアンタ。やっぱりそこらの走り屋とは違うっぽいな」
あー、墓穴掘ったかもしれん。原作でそういう描写があったのを知ってるだけで、走ってるのを見たことがあるとかそういう訳では無いんだけど・・・。
・・・まぁ、
「ところでどうしてこんなとこに居るんです?走り込みの後ですか?」
「あぁ。帰り道の途中で一服しようと寄っただけだ。・・・アンタもどうだ?」
「あー、タバコはちょっと苦手で・・・。あっ、煙はお構いなく」
「そうか、悪いな」
そう言ってタバコに火を付け、紫煙を吐き出す彼を見つめる。
うーん、これが将来のトップレーサーの姿かぁ・・・。
いくらフィクションとはいえ、釈然としない気持ちでいると、ふと聞いてみたい事が出てきた。よし、どうせならと軽いジャブくらいのノリで聞いてみることに。
「急な質問ですけど───」
「敬語は別にいいぜ。多分同い年だろ」
「あ、なら遠慮なく。・・・10年くらい前まで、秋名山に伝説の走り屋が居た、って聞いた事があるんだけど・・・なにかご存知?」*16
「伝説だぁ?・・・俺らレッドサンズは結成して2年近くは経つけど、聞いた事ねぇなそんなの」
「なんでも、下り最速と呼ばれたハチロクがいたとかなんとかで」
「───ハチロクだと?」
あ、目付きが変わった。やっぱこの時は目立った情報を得てないからか食い付いてきたね。バッとこちらに向き直って話の続きを聞こうと近付いて来て──
───いや近い近い!!離れて!煙は得意なわけじゃない!アッ顔がいい!!*17
「ちょっ、落ち着いて!話す!話すから!!」
「よしとっとと話せ。知ってる話全部だ」
「あー、はいはい。・・・なんでも、当時負け知らずのダウンヒルスペシャリストで、下りならスカイラインGTS-R、サバンナのSAや930ターボさえちぎったとかなんとか。
県外に遠征してたって話もあって、碓氷、いろは坂やもみじライン、フルーツラインや定峰、箱根なんかも目撃例があるそうで。年代から考えて、現役なら今の親世代・・・40〜50代くらいじゃないかなって思う」*18
「ポルシェまでもか・・・。おもしれぇ!速いほど負かしがいがある!あれから俺は走り込んだ。もうコースの熟練度の差はねぇし、油断もしねぇ。伝説だかなんだか知らねぇが、FDは国産最速のコーナリングマシンだ!二度の負けはねぇ!」
───こうして見ると、立派な主人公の1人なんだな〜、という実感と感動を得る。
でもこの頃の啓介って天狗というか・・・どこかドライビングをナメてる傾向にあるからなぁ・・・。
ま、その曇った目は主人公が晴らしてくれるでしょ。
俺はそれをギャラリー出来れば満足である*19。
そのままたわいもない雑談を少しして、啓介とは解散した。ギャラリーに行くことは伝えてあるから、運が良ければ会えるでしょうよ。
俺はどうしようか・・・日が高くなったら、原作のスタンドでも探しますか。
───あ、あと地図買わなきゃ。
主人公:原作キャラに会えたことが嬉しくて余計なムーブをかました。当然そのままでは終わらない。横から見てれば満足だって?まぁ観客が舞台に上がることもあるやろ。
某豆腐屋の息子:すれ違っただけで出番終了のかわいそうな子。交流戦で沢山スポットライト当たるからゆるして。
セカンダリータービン()の人:原作でかなり熱心な走り込みをしていたので、前日もしていたと予想。帰路で適当に寄ったコンビニにて主人公に遭遇するミラクルを発揮。やっぱダブルエースは持ってるね(白目)