車好きの転移先は、憧れの頭文字D!?   作:憂@やる気がない

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初投稿です。




第1話 令和からこんにちは

 

 

 

───21時過ぎ 神奈川県横浜市内

 

 

 

 

「あ”ぁ”ーーー、つっかれた」

 

 

 

仕事終わりの青年が帰路を進んでいた。こんな時間なのは無論、残業上がりのためである。

じきに繁忙期を迎えるため、じわじわと日毎に増えるイベントをこなすのに時間を取られ、諸々の書類申請もカタを着けたためにさぁ帰るぞ!と時計を見ればこんな時間である。

 

 

 

───帰りの途中で寝ちまいそうだ。

 

 

 

そんなもしもが頭をよぎった為に、近くのコンビニでアイスコーヒーを買って車に乗る。

 

純正シートだと腰が痛い、というなんとも微妙な理由で導入したフルバケットシートの包み込むような感覚に、思わず一息つく。

そして、おもむろにスイッチが入ってしまう。

 

 

 

(・・・走りたいな)

 

 

 

一度むずっと心を突いた欲求は瞬く間に大きくなり、あまり深く考えずに著名なワインディングをピックアップする。

 

あーでもない、こーでもないとあれこれ探しているとふとLINEが飛んできた。

 

 

 

<『明日明後日休みっしょ?群馬行こうぜぃ!』

 

 

 

別の場所で活躍している同期(アホ)*1からだった。

なんで休み把握されてるんだろうかと考えながら、了解と集合時間の質問を飛ばす。

 

 

 

「は?もう先に居るってバカなん??」

 

 

 

どうやら向こうは今日から連休だったらしく、先に群馬を堪能していたようである。

だからってそっちに呼びつけるとか突拍子も無さすぎないだろうか。

 

────そうだ。

ここでちょっとしたイタズラ心が沸いた。

ぶっ飛んだ発想には相応のもので返してやろう、と。

 

 

 

『じゃあ今から向かうわ、宿取っといて』>

『最悪同じ部屋でもいいや』>

 

 

 

若干のセクハラをかましながらメッセージを送信。*2返信を確認せずに携帯の画面を落とし、さて行ったるかと車のキーを捻る。

 

心臓部へと火が入り社外マフラーが吼える。

 

どれだけ乗ってもこの瞬間はワクワクするな、と思いながら、車を高速道路へと走らせる。

 

目指すは群馬県の渋川だ。

 

 

 

 

 

 

 

✣✣✣✣✣

 

 

 

 

 

 

───関越自動車道をしばらく進む。

 

スマホのナビを見ながらひた走ること2時間弱。

眠気を噛み殺しながら運転し続けたが、段々と眠気がピークに達してきた。既にコーヒーは空になって久しい。

 

 

 

───あーくそ、眠すぎる・・・このまま事故ってもおかしくねぇなこれ

 

 

 

正直かなり危ないとこまで来ている。

何度か意識が消えかけてボケーッとなってしまう症状が出ているし、だんだん感覚も短くなってきているように感じる。

 

 

 

───一度大人しく仮眠とるか。

 

 

 

これで事故を起こしたら目も当てられないので、仕方なく適当なPAで寝ることに決めた。

 

アイツには、遅れるって、LINE、飛ばし、て・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

✣✣✣✣✣

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───・・・うぅ、ん?」

 

 

 

・・・どんくらい寝たんだ?今何時?

ササッと時計を確認すると、時刻は3:30過ぎを指していた。あかん寝すぎた。取ってもらった(であろう)宿が無駄になったなコレ。

 

一度車から降り、眠気覚ましのコーヒーを買いがてら、大きく伸びをする。いい朝だね。まだ暗いけど。

 

 

 

「んー・・・!」

 

 

 

やっべ、超気持ちいい。

引いた眠気を感じながら、PA端っこの自販機へと赴く。いつものと同じコーヒーがあればいいけど。

ついでにスタンプも貯まればいいな、とアプリを起動しようとして、気付く。

 

 

 

「は?」

 

 

 

スマホにでかでかと表示されているのは『圏外』の二文字。嘘やんお前。

 

一旦財布を取りに車へ戻らなければ。

 

なんで通じんのやこのポンコツ電波めと悪態をつき、何となく戻りながら周りに目をやる。

・・・妙な違和感を感じてしまう。なーんかしっくりこない、というべきか。

 

 

 

(・・・あぁ、妙に年式が古いのか)

 

 

 

当然、ここはPAなので早朝であろうと他の車も止まっている。

チラホラと見える車の年式が自分のよく見る年式より3〜4代くらいは前の型なのだから、まるでタイムスリップでもした気分になる。

 

特にあそこ。若いお兄さん達*3がシルビアやワンエイティを囲んで談笑しているのを見ると、なんだか嬉しさが込み上げてくるのだ。

 

ホイールだのマフラーだのが弄ってあるのが見えるので、車好きとしては少しうずうずしてしまう。

 

 

ま、とりあえず一服だけしたら、行きますか。

 

 

無事コーヒーを買えたのだが・・・。

 

絵柄古くね?

なんか俺の見知ったやつよりロゴの立体感を感じられないし、プリントもちょっと薄いように感じる。

缶そのものもあまり見なくなったスチール製である。

 

でも同じ銘柄のだしなぁ。なんか不思議な気分だわ。

 

 

ちょっぴりカッコつけて、愛車に寄りかかりながら缶を煽っていると、後ろから声が掛けられた。

 

 

 

「よう。アンタの車かい?それ」

 

 

 

思わず振り返ると、先程のシルビア組の人だった。

他の2人もこちらに着いてきて、こちらに目線を向けている。

 

・・・いや、俺っていうか、車を見てる?

 

 

 

「ええ、そうですよ。あっちのシルビア達はあなた方ので?」

 

「ああ、今夜秋名山にギャラリーに行くんだ。あのレッドサンズがバトルするってんだから、見なきゃ損だぜ!」

 

「へ?」

 

 

 

なんか聞き覚えのある単語が耳を揺らしたので、一瞬思考が止まる。

秋名?榛名山じゃなくて?

レッドサンズってなに?あの漫画の追っかけかなんか?

アンタもギャラリー組だろ?早めに下見して場所決めちゃった方がいいぜ、って?

あれ、俺遊びに向かってたんだけど・・・。

 

思考がグルグルしそうになったときに、うずうずしてた後ろの2人組みの片方が、俺に問いかけて来た。

 

 

 

「なぁ、それってなんていう車なんだ?」

 

「───あ、失礼。コイツはスバルのレガシィですね」

 

 

 

咄嗟に答えたために簡潔な内容になってしまったが、どうか許して欲しい。

おかげで思考の沼から抜け出せたが、なんだか様子が変だ。

 

なんというか、釈然としてない?

 

 

 

「えー・・・どうかしました?」

 

「いやぁ、その、レガシィって言われて全然頭が着いてこなくて、どうしたもんかなぁと」

 

「俺、新型のインプレッサかと思ってたぜ」

 

「ははは、よく言われるんですよそれ」

 

 

 

事実、スバルの予備知識があまりない人が見たらそう見えるだろう。

ボンネット中央に、インタークーラーを冷やすためのエアインテークがあるのは共通だし。

 

俺のはプラスでGC8がモチーフのウィングを後付けしているので余計にである。

 

 

 

「良かったらどんなチューンしてるか見せてくれないか?」

 

「俺も見たいな。お願いできないか?」

 

「俺も俺も!」

 

 

 

結構なラブコールが来たので、苦笑しながらも期待に応えるためにボンネットを開ける。

 

ボンピンを後付けしてると、サッと見せたい時に不便になるのを毎回感じるなぁ。

 

なにはともあれお披露目。

 

 

ガチャ

 

 

「「「おぉー・・・」」」

 

「現状、エンジン本体は耐久性を考えてインプレッサのに載せ替えてます、タービンはHKS製で、ターボラグの軽減と低速から効かせるためにツインスクロールに。ベルト類が強化品なのと、軽量プーリーに交換。ラジエーターとインタークーラーを大容量品に交換してあって、給排気はHKSとフジツボでまとめてます」

 

「うん?でもラジエーターは純正に見えるけど・・・」

 

「社外品で、純正と同じ本体部分と樹脂部分の3ピース構造を採用したやつがあるんです。コア厚は倍近いのでかなり冷えますよ」

 

「へぇ、単純なアルミ一体じゃないのって、理由があるのかねぇ」

 

「なんでも、スバル車はインタークーラーが上置きなので、フロントから吸い込む量とエアバルジから入る量のバランスを考えた結果らしいです。どちらかを大きくしすぎると、もう片方が冷えなくなっちゃうらしくて」

 

「なるほどなぁ・・・車によってはそういう面の考慮も要るのか」

 

 

 

こうして車のスペックを話してると楽しくなってくるな。だんだん話が膨らんで長時間話し込みがちなの、みんなも経験あると思う。

 

 

 

「あとホース類はシリコン製に変えてますし、バッテリーは軽量タイプに変更した上でトランクに移設してます」

 

「いいなぁ。ツボを抑えてるって感じだ」

 

「な、ちょっとエンジン掛けて貰えたりしないか?」

 

「いいですよ。ちょっとお待ちを」

 

 

 

ご希望に答えてエンジンをかける。

ボンネットを開けているので、吸気音がよく聞こえてくることだろう。

 

 

ヴォオオン

 

 

「うひょー、いい音してるなぁ」

 

「お、これはもしかしてキャタも変えてる?」

 

「ええ、これもフジツボで、排気はエキマニから全部そうです」

 

 

喜んでくれているので、サービス精神を効かせて、ちょっぴり吹かしてあげる。もちろん周囲への迷惑にならないくらいでね。

 

 

ヴォオン ヴォォオオオン!

 

 

「というか、スバルなのに音が綺麗だな」

 

「確かに。インプとかはドロドロ言ってたし、マフラーは等長?」

 

「ご明察です。この型から純正でも等長になったんですよ。先代と違ってシングルターボになりましたし」

 

「へぇ〜。ってことは元から280馬力?」

 

「純正だとそうですね。こいつは金プロで制御してるので、320とかは出てます。パワーよりもレスポンス重視のセットアップなので」

 

「4駆ならタイトな峠でも持て余さないくらいかな?車高調は青色だけど、どこのやつ?クスコ?」

 

「これはエンドレスのですね。ぶっちゃけこいつに付いてるパーツで1番高かったです。なんせボーナスがかなり吹き飛んだので」

 

「マジ?エンドレスって車高調作ってたんだ。めっちゃ気になるな」

 

「ホイールはworkのか?白でピシッとキマっててかっこいいぜ。タイヤもヨコハマのADVANか。チョイスもバッチリって感じだな」

 

「ブレーキもエンドレスだな。シルバーなのは特注?」

 

「ええ、それに合わせてローターも大口径品です。フェード対策でスリットの入ったやつを採用しました」

 

 

ローター径は340mmで、これは二代目インプであるGDBよりも大口径になる。このおかげでよく止まることよ。まぁ、制動力の上限が高すぎるせいか、低グレードのタイヤだとフルブレーキでズリズリ行くのがね・・・。

 

 

「外装だと、カーボンボンネットとダクト付きのフェンダーが目に付くな。そんでこの羽だな。流用?」

 

「いえ、実は社外エアロでレガシィ用のやつです。意外と効いてくれるんですよこれが」

 

 

 

そのまま話し込んでしまい、少し明るくなってきたので解散した。

どうやら碓氷から来たらしいので、もし近くに来れば歓迎してくれるそうだ。

 

 

 

「じゃあな兄ちゃん!また会えたら走ろうや!」

 

「ええ、是非お願いします!」

 

 

 

さて、現地民(?)との交流は終わったが、幾つか整理しなくては。

 

 

 

まず、『秋名山』と『レッドサンズ』。

どちらも漫画”頭文字D”に登場するワードだ。

 

秋名山なんてものは現実になく、実際には榛名山となっている。

 

上毛三山をはじめとした、群馬を舞台にした男たちの峠における公道レースを描いた作品で、その影響は大きかった。

この作品に登場したおかげで人気絶頂に押し上げられた車も多い。

 

実在する峠を舞台にしたおかげで、俗に言う聖地巡礼を行う人もかなり多い印象である。

 

 

だが今は令和。走り屋なんてものは大多数が駆逐されて久しいし、世の中主流はエコカーやミニバン、SUVなどの実用性が高い車になっている。だが周りにはスポーツカーが多めに止まり、普通の車も年式が旧式過ぎる気がする。

 

 

まぁ、たまたまこのPAで古めの車が多くて、かつ偶然俺が現役の走り屋組に出会っただけかもしれないが・・・。

 

 

だが他はどう考えてもおかしいのだ。

 

 

次に携帯について。

 

先程起きてから今まで、全く使えないポンコツと化していた。

 

圏外表示のままで、アプリなども立ち上がらない。

ゲームなどもってのほかである。

 

地図を持っていない俺にどう渋川市で行けというのか。

下手したら日本で遭難するかもしれん。全く笑えない。

 

 

 

 

そして極めつけはこれだ。

 

フロントガラスに貼っていた車検ステッカーが変なのである。

赤色でカラフルであり、数字も変化している。

オマケにナンバープレートまで変わっており、最後が5桁になってる。なして?下手すりゃ偽装ナンバーになっちまうよ。

 

 

一応車の車検証を確認しているのだが、年号まで違うのだ。

発行が平成になっているので、普通に考えればこいつは検切れの車である。

 

だがフロントガラスのステッカーも同じ日時を記してある。

ってかなんかデケェ。オマケに紙製ときた。え、昔こんなのだったの?

 

 

───まぁ、ここまでおかしい点が見つかればもう確定的だ。

 

 

どうやら俺は、漫画の世界に転移したようである。

それも平成の時代にタイムスリップとして。

 

 

 

いやほんとに、どうして?

 

 

 

*1
なおメスの模様

*2
セウト

*3
たぶん年上






主人公:まさかの漫画世界への転移に混乱している。だが大好きな世界なので興奮を隠しきれていない。
走り屋ではないが、車にかなりの額をかけている。行きつけのショップがあり、チューンは基本そこにお願いしている。
車種はBL型のレガシィB4。ド前期。



シルビアの3人組:実は原作の碓氷峠のギャラリー3人。群馬エリアのレベルはどんなもんかと見に行こうとしている。実はこの後アクシデントに遭い、交流戦を見に行けなくなる運命にある。かわいそう。

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