顔に青いアザがあったにもかかわらず「事件性はない」と判断された理由とは…? 62歳で孤独死した俳優・大原麗子「歩くのもやっとだった」病魔との戦い
文春オンライン / 2025年2月25日 17時0分
2009年、62歳で亡くなった大原麗子さん ©時事通信社
「歩くのがやっとなんです」――亡くなる前年、取材陣にそう答えた大原麗子さん。「男はつらいよ」「居酒屋兆治」など数々の名作に出演した、彼女が62歳で孤独死した理由とは? 朝日新聞編集委員で、昨年10月に亡くなった小泉信一氏の『 スターの臨終 』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/ 後編 を読む)
◆◆◆
62歳の孤独死
寅さんの恋は純粋である。美しいマドンナが目の前に現れても、指一本触れなかった。
「そこが渡世人のつれぇところよ」。そう粋がって、四角いトランクを手に旅の空──。だが、この女性の前では、さすがの寅さんも心が乱れに乱れた。第22作「噂の寅次郎」(1978年)の早苗。そして第34作「寅次郎真実一路」(1984年)のふじ子。麗しい容姿に罪深いほどの色っぽさ、そして甘くハスキーな声。無意識に男の気を惹くような小悪魔的な雰囲気をまとっていた。
いずれの役も演じたのは大原麗子。運命のいたずらか、単なる偶然か、第22作の時は俳優・渡瀬恒彦(1944-2017)と、第34作の時は歌手・森進一と離婚した直後だった。そう知りながら映画をもう一度見ると、沈鬱な表情が実にリアルに迫ってくる。
落語界きっての寅さんマニアの立川志らくが、寅さんシリーズのマドンナの中で「一番輝いていて美しい」と絶賛したのが大原である。また、ビデオリサーチによる「テレビタレントイメージ調査」では、通算13回も人気タレントランキング女性タレント部門1位に選ばれた。
大原のキャラクターを確立させたのが、1977年から10年間続いたサントリーレッドのCM「すこし愛して、なが~く愛して。」シリーズだ。おちゃめで勝ち気だけど可愛い。あんな女性がそばにいたらなあ、などと鼻の下を長くしたオジサンたちも多かったに違いない
しかし、そんな彼女の最期は悲しいものだった。2009年8月6日、東京・世田谷の自宅で冷たくなっているのを、実弟と成城警察の署員が見つけたという。
62歳の孤独死である。
当時の朝日新聞によると、実はこの3日前、弟から署に「2週間前から姉と連絡が取れない」との通報があった。6日になって弟の都合がつき、同日午後7時すぎに署員とともに大原の自宅に入った。2階寝室のドアを開けたところ、仰向けで倒れていたという。
大原の自宅は施錠され、外部からの侵入や物色の跡などがないことから、事件性はないと警察は判断した。実弟がのちに報道関係者に明かしたところによると、左目の周りに青いアザのようなものができていた。殴られたのではなく、脳内出血した血液の一部が流れた跡だという。死因は不整脈による脳内出血。死後3日が経っていた。
その頃、大原は90歳を超える母親と一緒に暮らしていたが、母親が施設に入ってからは一人暮らしだったという。
「女優」でなく「俳優」
大原の晩年は病魔との闘いだった。47歳の時、乳がんの手術を受け、うつ病にも悩まされていた。さらに、20代の頃に発症したギラン・バレー症候群が再発。免疫が異変を起こして運動神経を攻撃することが原因で、急に手や脚に力が入らなくなり、歩行障害などを引き起こす進行性の難病である。
亡くなる前年の11月、自宅で転倒し、右手首2カ所を骨折。その際、インターホン越しに取材に答えた大原は、涙声で「歩くのがやっとなんです」と話したという。
実弟によると、大原が亡くなった時、1.5メートルから2メートルほど離れたところに携帯電話が置かれていたという。そのわずかな距離ですら、彼女は移動することが難しかったのかもしれない。
〈 お別れの会には元夫の渡瀬恒彦、森進一が参加しただけじゃない…俳優・大原麗子(享年62)の人生が「決して孤独なものではなかった」理由 〉へ続く
(小泉 信一/Webオリジナル(外部転載))
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