第1回「最後のとりで」のドイツまで 伸びる右翼、失われる移民への寛容さ

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ベルリン=寺西和男
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 献花台には、花束やろうそくとともに、くまやパンダのぬいぐるみも並んでいた。その前で、人々が足を止め、男の子の写真を見つめて静かに祈りを捧げる。2月初めに訪れたドイツ南部アシャッフェンブルクの公園は深い悲しみに包まれていた。

 公園では1月下旬、アフガニスタン出身の男が幼児らを襲った。男児(2)と通行人の男性(41)が亡くなり、女児(2)ら3人が大けがを負った。独メディアによると、男は2022年にドイツに来て難民申請したが、出国を希望したため、申請手続きは停止された。当局からは、可能な限り早くドイツを離れるように求められていたという。

 「無秩序な移民の流入が何につながるか、我々が訴えてきた通りだ」。公園近くで2月初めにあった右翼「ドイツのための選択肢(AfD)」の集会で同党候補のヨアヒム・ラウシュ氏(65)は不法移民の即時送還の必要性を強調した。

 会場に来た人々からは事件への不安の声が上がった。助産師のイリーナ・ブラウンさん(49)は「二度と襲撃事件を起こさないことを保証できるのはAfDだけ」と移民規制に期待を寄せた。

 13年に結党したAfDは、内戦が激化したシリアなどから難民らが欧州に押し寄せた15年以降、移民排斥の主張を強めた。前々回17年の総選挙で初めて連邦議会で議席を確保したばかりだが、今回は前回から得票率を倍増させ、初めて第2党になった。

 ドイツでは昨年以降、外国出…

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この記事を書いた人
寺西和男
ベルリン支局長
専門・関心分野
欧州の政治経済、金融、格差、ポピュリズム

連載欧州の盟主 ドイツの岐路(全4回)

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