ドジャースに入団したばかりの佐々木郎希選手が、電撃結婚を発表した。アリゾナのキャンプ地で報道陣の取材に応じた佐々木は、妻となった女性について、「普通のというか、優しい人です」とだけ答えた。なれそめや、年上か年下かについても返答を避けており、プライベートをあまり明かしたくない気持ちがうかがえる。もちろん、照れの気持ちもあるだろう。
「普通の」というのはおそらく一般人女性という意味と思われるし、アメリカに来たばかりの佐々木が、彼なりに妻を守ろうとしているのは、日本人としてはよくわかる。
妻となった女性にしても、いきなり大きな脚光を浴びるのは、たしかにしんどいかもしれない。だが、この後、慣れてきたら、その部分に関しても、アメリカ人を相手にした場では、アメリカのセレブリティらしく振る舞ったほうがいい。
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大谷は「僕の美しい妻へ」と公に感謝
先月の全米野球協会ニューヨーク支部主催の晩餐会にビデオで登場した大谷翔平選手は、「僕の美しい妻へ。いつも支えてくれてありがとう」と、真美子夫人への感謝を英語で公に述べた。
この言葉に日本のファンやメディアは大きな反応をしたようだが、アメリカでは男性が自分の妻を「美しい」と褒めるのは、ごく当たり前のこと。日本では、とくに古い世代では外で「愚妻」などと妻を貶すこともあったかもしれないが、そんなことは考えられない。
アメリカでは、妻を大切にしない男性は軽蔑される。客観的に見ればごく平凡な女性であったとしても、夫は妻のことを「美しい」「賢い」と持ち上げる。だから、大谷選手が「美しい妻」と言っても、アメリカでは誰も反応しなかった。ほかのスポーツ選手も、ハリウッドセレブも、みんながそう言うのだから、驚く理由は何もない。
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オスカー授賞式など、ハリウッドの大きなイベントでは、そういうシーンが想定されていて、その瞬間がやってきたら、カメラは感動の表情を浮かべている妻を映す。それを見て視聴者もほっこりする。そういうもの。
逆に、そういったスピーチで奥さんに感謝しなかったなら、そっちのほうが記憶に残る。もちろん女性セレブも夫やパートナーに公に感謝の言葉を述べるが、男性が妻を絶賛することのほうがより大事である。
日本で生まれ育った日本人男性にしたら、世界に見られている中で自分の妻を美しい、賢いと絶賛するのは、恥ずかしいかもしれない。大谷選手も、英語でのスピーチだったから言いやすかったというのもあるだろう。
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家族を大切にする人というイメージが重要
実際、彼も、結婚を発表した直後の日本人記者との会見では、「いたって普通の人」と真美子夫人について語っていた。その時までに大谷選手は6年間アメリカ生活を送ってきていたが、日本人記者に対しては日本的な対応をしたということだろう。
ハリウッドセレブもだが、とりわけ家庭で子供と大人が一緒に観戦するメジャーリーグの選手は、家族を大切にする人という部分はイメージ上、かなり重要だ。もちろんすごい成績を出してみせることが一番とはいえ、その部分が人間味をプラスし、ファンを共感させるのである。
仕事に集中できるのも支えてくれる家族がいるおかげという気持ちを、彼らは機会あるごとに公に表現する。大きな試合に勝ったら、妻や子供がフィールドに出てきて、ハグをし、キスをして、祝福する。この勝利は一緒に手にしたものなのだから。
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その気持ち、すなわち妻への感謝は、選手たち自身が実際に持っているものであり、嘘はないはずだ。佐々木選手も、会見で、「お互い不安もあるんですけれど、お互い力を合わせて支え合いながらやっていけたらいいかなと思います」と言っていた。
今はまだ心の準備ができていないのかもしれないが、そのうち奥様も表に出てくるべき時が来る。いつまでも隠していると逆に印象が良くない。それに、初めて出てきた時はもちろん注目されるけれど、そこを通り過ぎたらもうアメリカ人は、選手の一般人の妻などにそんなに関心は持っていない(選手の妻あるいは恋人がテイラー・スウィフトなみのスターであれば別問題だが)。緊張するのは一度だけだ。
ヴィンス・ヴォーン、マット・デイモン、クリスチャン・ベール、エディ・レッドメインなど、ハリウッドにも一般女性と結婚したスターはいる。それらの女性たちが授賞式やプレミアなどに、どれほど頻繁に出席するかはそれぞれだが、夫たちは妻について聞かれると、間違いなく褒める。
たとえば、ベールは「僕の妻はプライベートを守りたがっていて、僕もそれを維持したいと思っている。僕たちの私生活はすばらしい。彼女は僕の人生に現れた、最も強い女性だ」と語った。ベールの妻は、かつてウィノナ・ライダーのパーソナルアシスタントをしており、ベールがライダーと映画『若草物語』で共演した時に知り合っている。
日本人男性の感覚だと、「強い女性」というのは褒め言葉なのか、と思うかもしれない。しかし、強い女性を称え、愛することができる男性は、自分に自信があり、心がオープンな男性だとして、アメリカでは世間から評価される。
やはりプライバシーをほとんど語らないヴォーンも、昨年夏、ハリウッドの「ウォーク・オブ・フェーム」に星が刻まれた時には、「僕の美しい妻、ここにいてくれてありがとう。君と僕たちの美しい子供たちがいつも笑いを分かち合ってくれることを感謝します」と、壇上から心を込めた言葉を送っていた。彼の妻は、不動産エージェントをしていたカナダ人女性。ほら、ここでも「美しい妻」なのだ。
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本当に「普通」の人であるはずがない
このオフシーズン、佐々木選手以外にもブレイク・スネルなど新たに優れたメンバーを加えたドジャースは、今年も優勝を目指して突っ走ると期待される。
だが、今はまだ開幕前。重要なシーンが起きるポストシーズンは、半年以上先だ。やがて来るかもしれない祝福の場で、佐々木選手が愛する女性が受けるにふさわしい言葉を贈ってくれることを願いたい。彼が選んだ人が、本当にただの「普通の」人であるはずはないのだから。
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