大変お久しぶりです。
就活が終わったので執筆を再開します(進捗0文字)。
昔々、そのまた昔。
実は言うほど昔ではないある日。
一人の少女が、この世界に産まれた。
両親のどちらの遺伝も感じない銀色の髪。
両親のどちらの特徴も持たない美しき貌。
両親から一切の祝福を受けず、やがて世界に害悪を振り撒く少女は誕生した。
その少女は不気味だった。
人形染みた人外の美貌に、人形染みた無表情。
天才と持て囃されても喜ぶ事なく、鬼子と罵られても悲しむ事なく、まるでありふれた
────
それこそ、少年と少女の
少女の脳に焼き付く様に記憶された、そして少年にとってはまるで見に覚えのないお話。
幼稚園に入る少し前の頃。
少女は気付いた。この世界が前世で好きだった
少女は手に入れた。この世界が物語だという思い込みによる世界観──《
少女は頂点に立った。この世界を決定的に歪める
顔も名前も覚えてない両親なんてどうでもよかった。
この世界に生きる無辜の人々なんて知ったこっちゃなかった。
興味があるのはただ一人。
この
六道伊吹を一目見たい。
六道伊吹と言葉を交わしたい。
六道伊吹に自分を知ってもらいたい。
六道伊吹と一緒にご飯を食べたい。海にも行きたい。遊園地とか、水族館とか、色んなデートコースを見て回って、様々な映画も見て、二人でクソ映画だったね……なんて喫茶店で話したい。いや、わざわざ映画館に観に行かなくても、家でくっついて映画を観て良い雰囲気になりたい。
六道伊吹に、ボクの事を好きになってほしい。
怒っている六道伊吹が見たい。
苦しんでいる六道伊吹が見たい。
ブチ切れている六道伊吹が見たい。
勧善の欠けた懲罰の化身、理不尽を糾す理不尽の権化、全を救えない世界を罵りながら世界を壊すしか能がない憤怒の魔人。悲劇を、運命を、
六道伊吹を輝かせたい。
たとえこの世界が灰燼と化したとしても、築かれた屍の山が六道伊吹の演じる
悲劇を仕込み、火種をばら撒き、悪人を仕向け、悪行を重ね、秩序を麻痺させ、社会を腐らせ、舞台を整え、やがて世界さえ終わらせるだけの力が。
「──だから、ボクは間違えた。現在のこの世界の惨状も、過去のキミの苦しみも、
「…………、」
冗長な話だった。
興味のない少女の来歴。
知らない人物や固有名詞のオンパレード。
長々とした話に耐えきれず、ため息を吐いて首を回す。
ジャラ、と身じろぎと共に金属音が響く。
五月七日。
俺は折手メアによって
「九相霧黎」
少女は一人の少年の名を語る。
それは
「ボクも、キミも、彼に敗北した。完膚なきまで、ブチ殺された。第五摂理の破壊には成功したけど、九相霧黎もディートリンデも生きているのだからボクらの負けには違いない」
「……そんなヤツと喧嘩した覚えはねぇけどな」
「未来の話さ」
「……………………、」
「ま、この世界の
使えないはずの異能が使えるのは《
「遡行先が五月七日だったのは、そこが『原作』開始地点にして最初の
「……………………」
「
「?」
首を傾げても答えは返ってこない。
どうやら俺に説明する気はないようだ。
「……その話が、俺に何の関係がある?」
「大ありさ。好き勝手に生きるために世界さえ敵に回した彼らが、唯一ディートリンデを殺せる可能性のあるキミを見逃す訳がないだろう?」
「テメェが俺を守ってやってるとでも言いたいのか?」
「守ってやってるというか……守らせてもらっているという感じかな。きっと、キミはボクの庇護なんか求めてないのだろうけれど、ボクはキミを守りたい。ぜんぶボクのせいなのに、キミだけが苦しむなんてもう耐えられないんだ」
「……手枷を嵌めて、足枷で縛って、それがテメェの言う『庇護』か。動物園のパンダでももうちょっと配慮されてると思うがな」
「だって、手足を自由にしたらキミはすぐにでも外へ飛び出してしまうだろう?」
無論。
躊躇いもなく、俺は告げる。
「当たり前だ。九相霧黎だのなんだの知らねぇが、全員ブチ殺してやる」
「
「…………何だと?」
折手メアの言葉は不可解だった。
九相霧黎やディートリンデといった人物を憎むべき敵の様に語りながら、彼らがまるで世界の救世主であるかのように扱うのだから。
「前提として、この世界の誰も第一位には勝てない。故に、この世界は彼女が転生した時点で終了する」
キュッキュッ、と。
何処からか持ち出したホワイトボードに、折手メアは図形を描く。
横に伸びた数直線。始点の0から伸びた右端に、アリス・アウターランドと記された
「彼らはそれから逃れるために五月七日に時間遡行する。本来ならば一方通行の時系列が巻き戻り、五月七日という始点に舞い戻る」
終点と始点が一本の線で繋がる。
本来ならば終わりの定まっていた直線が、歪な形の円となる。
「これが、彼らの考えた永遠の生──
永続する
それを楽園と捉えるか、無限地獄と捉えるかは人次第であるが。
「ボクの《
折手メアは罪悪感と責任感に苦しみながら、唯一の希望を見出して笑う。
歪であるがようやく安堵の息をつけたような、そんな表情だった。
その顔を見て、俺は────
「
──唾を吐き捨てた。
「……………………は?」
「テメェの責任がどうとか、世界の存続がどうとか、
唖然とした顔の折手メア。
罪悪感は抱かない。こっちはテメェと絆を育む暇すらなかった。
「永遠に生きられるとしてもこの部屋から出られねぇんじゃ意味はねぇ。
世界が終わる?
第一位には勝てない?
九相霧黎やらディートリンデやらの力がなければ生きていけない?
そんな世界終わってしまえ。
九相霧黎やらディートリンデやら、
そもそもの話、世界が終わるのと現在が永遠に繰り返されるのに何の違いがある?
カラン、カラン、と金属が足元に転がる。
「な、に……⁉︎」
「
もう、俺を縛るモノは何一つとして存在しない。
人間社会から
贅肉が削ぎ落とされて本当の俺が剥き出しになる。
骨が浮かび上がり、ガイコツのようになった腕を力一杯握り締める。
「
その本性は、ただ怒りのままに暴力を振るう怪物だった。
▽分岐点73.0『お前の気持ちも分かる』を選択。
六道伊吹は異世界転移者・九相霧黎の言い分に共感してしまい、トドメの一撃を刺す事ができず敗北します。その後、三瀬春夏冬の力も借りて《
▽本ルートの結末
世界を存続させる気持ちが失せた六道伊吹は、牢獄の如き閉じた時系列を破壊して世界を終末の方向へと導きます。結果、六道伊吹は九相霧黎とディートリンデの二人がかりで殺害されますが、時間遡行の手段は永遠に失われます。
▽攻略のヒント
他人の感情を踏み躙ろう。たとえどんなに正当性のありそうな言葉を吐く人物がいたとしても、自分の我儘を突き通しましょう。