原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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七三話:延長戦/原作主人公vs続編主人公

 

 

 バギィッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 七年前の街の景色が砕け散り、現代へと帰還する。

 

「な──⁉︎」

 

 位置座標がズレたのか、俺が現れたのは九相霧黎の真後ろ。

 突然の気配に彼は驚愕を顔に浮かべる。

 

 首根っこを掴んでいた彼女の感触はない。

 恐らく、第五摂理の安定による影響だろう。

 俺は彼女の名前を思い出せないし、このまま二度と彼女が転生する事もない。

 

 

(──だったらッ、そんな巫山戯たルールなんざブチ壊してやるッ‼︎)

 

 

 右手に異能の力を込める。

 この肉体に憑依した事で異能の使用回数は更新されたが、過去編で五回使用したため残弾は一回のみ。

 その一回で全てを終わらせる。

 

 トンッ、と。

 九相霧黎の肩に触れた。

 

 霧黎は身を捩って俺の手から離れようとする。

 《魂絶(ソウルリーパー)》を警戒したのだろう。六界列強(グレートシックス)になった霧黎にとって、唯一恐れる死因はそれだ。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(魂を壊すだけじゃダメだ。また第五摂理が不安定になって、また誰かが第五摂理を求めて、また新たな六界列強(グレートシックス)が生まれて、また俺がそいつをブチ殺す……そんな事が繰り返されるだけじゃ、彼女は一生戻って来ない)

 

 グッ‼︎ と九相霧黎の肩を握り締める。

 逃がさないように、万力を込めて。

 

 ……否ッ‼︎

 俺が触れたのは九相霧黎ではない!

 それこそ、終末摂理(ワールドエンド)‼︎

 魂の繋がりを辿り、終末摂理(ワールドエンド)そのものを握り締める‼︎

 

 『原作』のどの世界線(ルート)でも至らない境地へ、足を踏み出す。

 それこそ、即ち。

 

 

「《崩界(ワールドブレイカー)》ッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 バッギィィンッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 鋼鉄を金槌でブチ壊したような音が響く。

 

 イメージするのは、六道伊吹(タイトルロール)の拳。

 あらゆる不条理を叩いて直す、理不尽の塊。

 異能の無効化ではない、魂の破壊ではない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 俺の世界観(セカイ)にこんなルールは必要ねぇ‼︎

 

「…………は?」

「異能は全部使い切った。だが、俺は救ったぞ」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 意識はないが、息はしている。

 七年前から持ってきた肉体に、折手メアの魂が転生しているのを確認する。

 

「決勝戦はテメェの勝ちだった。だが、俺達は敗者復活戦を這い上がってきた。じゃあ、こっからやる事は一つだろ?」

「ふざっ、ふざけるな‼︎ こんなッ、こんな滅茶苦茶があっていい訳が……‼︎」

()()()()‼︎ ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ‼︎」

「そんな理不尽があっていいのならッ、ディートリンデだって救われていいはずだろうがっ!」

「関係ねぇ。アイツは俺がこの手でブチ殺すと決めた。テメェも腹を括りやがれ」

 

 互いに満身創痍。

 体力は限界に近い。

 だが、その姿形は対照的だった。

 

 いくらでも再生する肉体に憑依した俺と。

 全身に火傷を負って血だらけの九相霧黎。

 

「ねぇ、六道伊吹」

「なぁ、九相霧黎」

「あなたが彼女を殺すと言うのならッ‼︎」

「テメェがヤツを生かすってんならッ‼︎」

 

 もはや異能は出し切った。

 言葉は平行線でしかない。

 ならば、残るは拳での語り合いのみ。

 

「「彼女(ヤツ)が『しあわせ』な未来を生きる」」

 

 六道伊吹と九相霧黎。

 二人の主人公は、同時に叫んだ。

 

 

「そんな結末(ハッピーエンド)に導いてやるッッッッ‼︎‼︎‼︎」

「そんな結末(デッドエンド)は覆してやるッッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 直後。

 拳と拳が激突した。

 

「ごっ、がば⁉︎」

「近接戦闘で、あなたがっ、ぼくに勝てるわけッ、ないだろうがッ‼︎」

 

 ドガガガガガガガガッ‼︎ と拳がボディに刺さる。

 万全な俺と死にかけの九相霧黎。それほどの差があったにも拘らず、力と手数で押し負けた。

 

「ぼくは異世界転移者だぞ⁉︎ 一体いくつの世界を回ったと思っている! あなたとぼくじゃ、戦闘経験の差が段違いなんだよ‼︎」

「そう、かもな。けど、今なら勝てる、ぜ」

「………………あなた、まさかッ⁉︎」

 

 ビキビキビキビキッ‼︎ と九相霧黎の腕から異音が鳴った。

 骨か、肉か、神経か、あるいはもっと深刻なモノが崩れていくかのような音。

 

「俺をブン殴るテメェにも、衝撃ってのはある。それで? テメェは衝撃に耐えられるのか? ()()()()()()()()()()()()()()()()?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()⁉︎」

 

 攻撃と攻撃の応酬じゃない。

 九相霧黎は死ぬまでに俺を殺せるのか。

 俺は九相霧黎が死ぬまで耐えられるか。

 これは、そういった種類の戦いだ。

 

「ふざっけんな‼︎」

「ぶっ、ごッ!」

 

 クリーンヒット。

 九相霧黎の拳が俺の顔面をブッ飛ばす。

 顔面のガードをすり抜けた貫手だった。

 

「そうまでしてッ、なぜディートリンデを殺そうとする⁉︎ 折手メアは救われてッ、なぜ彼女は救われちゃいけない‼︎」

「ああ⁉︎ 大した理由なんざねぇよ! 折手メアには情が湧いてッ、ディートリヒには怒りを抱いた! それだけだ‼︎」

「それだけッ⁉︎ それだけの差で彼女が死ぬのか⁉︎」

「人を救いたいと思うのもッ、人をブチ殺したいと思うのもッ、大した理由なんざ必要ねぇだろうが‼︎ 自分の感情以外の何が大切だ⁉︎ 逆にテメェはッ、なんでヤツを助けようとしてんだよ‼︎」

 

 今度は逆に顔面のガードを意識しすぎて、ガラ空きになった足を払われた。

 体勢が崩れ、ガンッ‼︎ と頭を地面に押さえつけられる。まずいッ、マウントポジションを取られた‼︎

 

「助けてと、そう乞われたからだ‼︎」

「ぎっ、ぶごっ⁉︎」

「一番初めにッ、彼女がぼくに頼った! だから! ぼくは! 誰よりもまず彼女の願いを優先する‼︎」

「がはっ‼︎」

「彼女の願いで、この拳を振るう! 彼女の願いで、彼女の敵を殺す! 彼女の願いで、彼女を救う‼︎ それがぼくの戦う理由だ‼︎」

「……こんのッ、チキン野郎がッ‼︎」

 

 容赦ない顔面へのラッシュに耐え、拳に噛みついて一瞬の隙を作り、ヘッドバットで相手を怯ませて腰を浮かせる。

 転がるようにして、マウントポジションから脱出した。

 

「そんなのッ、ただ行動の責任をディートリヒに押し付けてるだけじゃねぇか‼︎ 善悪なんざ自分で決めろよ! 誰をどう救って、誰を殺すかなんか、他人任せにしてんじゃねぇ‼︎」

「あなたに何が分かる⁉︎ 異世界転移者の──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ‼︎」

 

 メキメキィッッ‼︎‼︎ と。

 転がる俺の横腹を九相霧黎が蹴っ飛ばす。

 それは俺の肋骨が折れた音か、それとも霧黎の脚の骨が折れた音か。

 

「ぼくだって自分の意思で人を助けたい! でも! ぼくの善悪がその世界で正しいのかなんてどうやって判断する⁉︎ ぼくの気持ちが正しいだなんてッ、信じられる訳がねぇだろうが‼︎」

「……っ、ごぼッ」

「男達に囲まれて暴行を受けた老人を助けた事がある。誰も手が出せないように守り抜いた事がある。……その世界では暴力はコミュニケーションの一種で、誰ともコミュニケーションを取れなくなった老人は孤独に耐えきれず自殺したよ」

 

 気道に血が詰まる。

 こぽこぽと液体の音がする喉を奥に手を突っ込み、血を吐き出す。

 

「崖から落ちた少女を助けた事がある。彼女の自殺を止めて、自暴自棄になった彼女の世話をした事がある。……その世界では生きる事は罪を重ねる事で、生きながらえた彼女は天国に行けず地獄に落とされたよ」

「がっ、がはッッッ……くそ、それで自分を信じられなくなったって?」

「自分の常識、自分の文化、自分の正義、自分の善悪、自分の感情。そんな曖昧なモノを信じて何になる? 自分の都合を押し付けるだけじゃ相手は絶対に救われない。だから、相手の言葉の通りに動く事で相手は救われる‼︎」

「……ふざっけんな! そんなのッ、ただ自分が後悔したくないだけじゃねぇか‼︎」

 

 吐き出した血を九相霧黎の目にかけて、視界を失った彼の鼻っ柱を折るように拳を振るう。

 

「老人の自殺は殴って止めれば良かったじゃねぇか! 死んで欲しくないんだって、拳で伝えれば良かったじゃねぇか! 地獄に落ちた少女だって、自分も一緒に地獄に行けば良かっただろうが! 一緒に地獄に立ち向かって、そんな世界なんざ認めねぇってブチ壊せば良かったんだ‼︎」

「ぐッ、だまれぇ‼︎」

「自分の感情が信じられない? だったらッ、誰かのたすけてって言葉に応えるのは誰の感情だ⁉︎ 第一位によって滅ぼされるって決まったこの世界でッ、それでも永遠に生きたいっていうディートリヒの願いを叶えようとしたのは誰の意志だッ‼︎」

「だまッ、れぇぇえええええええええええ‼︎」

 

 姿勢を低くして、九相霧黎の下半身にタックルする。

 今度はこっちがマウントポジションを取る番だ。なりふり構わず、両手の拳を振り回す。

 

「俺は救うぞッ、折手メアを! 俺は殺すぞッ、ディートリヒを! 誰に頼まれた訳でもねぇ! 俺がただそうしたい‼︎ 必要なのはそれだけだろうがッ‼︎」

「かは……ッッッ⁉︎」

「常識とかルールとか知るか! 俺が決めたルールを優先しやがれ‼︎ 世界だろうが何だろうがッ、そんなちっぽけなモンを優先する必要が何処にあるッ‼︎」

「ぐぞやろうがぁぁあああああああああああ‼︎」

 

 髪の毛を掴まれ、アスファルトで削るように引きずられる。

 もみくちゃになって殴り合う。もはや殴っているのか殴られているのか、そんな事も分からないほど感覚がめちゃくちゃになっていた。

 

「……後悔、するぞ。折手メアをここで殺しておかなかった事を、いつか、絶対に」

「んなもん、知ったこっちゃねぇよ」

「…………そいつのせいで、世界が終わるとしても」

「一人の少女を救ったせいで終わるくらいの世界なんざ、さっさと終わった方がマシだ。むしろ俺がブチ壊してやる」

 

 勝敗は、決した。

 両者共に血だらけで地に伏す。

 もう立ち上がる事なんかできない。

 それでも、再生できる俺と再生できない九相霧黎の差は大きい。

 

「先にあの世で、待ってやがれ。すぐにディートリヒを送ってやる」

「それ、は……無理、だね」

「────な、に?」

 

 勝敗は決した、()()()()()

 

 

 ()()()()()

 “()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「あ、が⁉︎」

「僕は、かつて、二神双葉の世界観に適応して、肉体を変質させた。もちろん、その適応は失敗して死にかけた訳だけど、その時に手に入れた物がある」

「こ、れは……⁉︎」

「自殺細胞、とでも呼ぼうかな。生を否定して死に向かう細胞、それをあなたに植え込んだ。再生能力があったって意味のない、絶対的な死だ」

 

 もしも、俺がまだゾンビだったのなら意味は無かった。

 たけど、今の俺は生きている。生きているからこそ、死んでしまう。

 

「……相討ちに、何の意味がある。ここで俺が死んでも、テメェが死んでちゃ意味がねぇ。ディートリヒは、すぐに殺されるぞ」

「はは、あはははははははははははは‼︎」

「……何がおかしい?」

「おかしいさ! ディートリンデが死ぬだって? ()()()()()()()()()()()()()()?」

「──────は?」

 

 思考が、止まった。

 

「ぼくが栗栖椎菜を倒した時、彼女の第四摂理がぼくに移った。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「……そんな、異能が……⁉︎」

「第五摂理に縋っているならまだ彼女は不死じゃないと思ったかい? 甘いんだよ、想定が。とっくの昔に、目的は達成されてい──ごぼっ‼︎」

 

 九相霧黎は血を吐く。

 中身もボロボロだから仕方がない。

 ……だが、その様子は少し違っていた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「お前ッ、それは……()()()()か⁉︎」

 

 

 そうだ、当たり前だった。

 自殺細胞が変質した九相霧黎の肉体なら、それを生成する彼自身が真っ先に死んでいるはずなのだ。

 つまり、最初から相討ち目的。九相霧黎が勝つか、両方とも死ぬかの二択しか無かった。

 

「あなたに負けた時点で第一希望は諦めた。だったら、せめて、不老不死の彼女を殺せる可能性のあるあなただけでも道連れにする。それがぼくの第二希望だ‼︎」

 

 意識が薄れてゆく。

 九相霧黎には勝った。

 俺は戦いに勝利した。

 

 だが、勝負には負けた。

 ディートリヒを殺せなかった。

 

 


 

 

 

 

 

「生存者リスト」

 

▽天命機関

ブレンダ

ジェンマ

ロドリゴ

レオンハルト

ファウスト

イヴリン

etc

 

▽転生者

六道伊吹

アドレイド・アブソリュート

二神双葉

三瀬春夏冬

九相霧黎

ディートリンデ

フラン=シェリー・サンクチュアリ

ルーアハ

折手メア

破邪の剣(アスカロン)

 

▽一般人

栗栖椎菜

デッドコピー×20000

二神妹





次回、第三章エピローグ。
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