原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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お久しぶりです。
第三章中編その3(その3⁉︎)開始です


六四話:過去編/Episode_0-4

 

 

 ルーアハを殺した直後のこと。

 制御の失われた太陽が暴発する。

 最後に目に映ったのは、意識を失った霧黎の姿と──

 

 

 

「ほんとに世話がかかるなぁ、キミは」

 

 

 

「…………ぁ」

 

 無意識のうちに声が漏れる。

 本当なら目も耳も使えない。

 太陽の中で、そんなものが役に立つ訳がない。

 

 なのに、どうしてか。

 彼女が姿が、はっきりと俺の網膜に焼きつく。

 彼女の声が、はっきりと俺の鼓膜を揺らした。

 

 

 

「次が正真正銘、ラストチャンス。ボクのテコ入れも弾切れだよ」

()()……」

 

 

 

 彼女の名を口にする。

 彼女の名を思い出すことが出来る。

 ただそれだけのことが、嬉しくてたまらない。

 

 咄嗟に、右手を伸ばした。

 だけど、届かない。

 時空が歪み、俺は再び七年前の世界へ逃げ込んだ。

 

 

 

 ポタポタ、と水滴が地面を叩く。

 初め、それは自分の涙の音だと思っていた。

 彼女の名を呼ぶ事ができて嬉しかったんだと。

 

 だが、違う。

 そんな綺麗なものではないと、鉄錆の臭いが俺に現実へ引き戻す。

 

 

 

『あーあ、つまんねーな。過去編は……』

 

 

 

「め、あ……?」

 

 口から先程と同じ言葉が漏れる。

 だけど、そこに込められた感情は全く別のものだった。

 

 辺りには倒れ伏す六界列強(グレートシックス)達と、得体の知れない肉のようなナニカで腹を貫かれたアダマスがいた。

 水音は彼の血が流れ落ちる音だった。呆然と、俺はそれを眺める。

 

 六界列強(グレートシックス)・番外位、折手メア。

 最低最悪の魔女がそこに君臨していた。

 

「なん、だ……アレは……」

 

 アダマスを貫くそれは、クリスの腹から這い出たモノだった。

 肥大化した赤子の手のようにも、細長い巨人の指のようにも見えるそれは、少なくとも自然現象や何らかのテクノロジーではないと断言できるような生々しさを持っていた。

 

 パンッ‼︎ と。

 アダマスが叩くと、内側から弾け飛ぶ。

 しかし、ナニカは未だクリスの腹で蠢いていた。

 折手メアはそんな様子を見て、一言呟く。

 

 

『知らん……、何そのイキモノ……。怖……』

 

 

 言葉も出なかった。

 意味が分からなかった。

 

 折手メアすら予期できないイレギュラー。

 転生者でも、天使でも、七天神装(アーティファクト)でもない。だからと言って、一般人とは絶対に呼ぶことのできないイキモノ。

 分類名すら付けられない怪物が〈堕胎事変(フォールダウン)〉を蹂躙する。

 

『なるほど、な』

 

 そんな中、アダマスは小さく息を吐く。

 咄嗟に主要な内臓は避けたとは言え、口から大量の血を吐き出す彼が無事な筈がないのに。

 それでも、彼の心は折れてはいなかった。

 

『君が選んだのはその未来(ルート)か』

『あっ、これってボクの異能の影響なのかい?』

『サプライズニンジャ理論に近いものだろう。君は通常の〈堕胎事変(フォールダウン)〉に飽き、何の脈絡もない乱入者が展開をブチ壊すことにカタルシスを見出した』

『……真顔でサプライズニンジャって言うの、メチャクチャ笑えるね。いや、ボクの語彙に合わせてくれてるのは分かるんだけどさ』

 

 笑える訳がなかった。

 俺が助けようとしている少女の本性を叩きつけられる。

 改心した。悪行を後悔している。……それが何だ? 今まで積み重なった罪は消えない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ブオンッ‼︎ と名のない怪物が暴れる。

 形の定まらない肉塊は触手となり、鞭のようにしなってアダマスを叩きのめす。

 

『……これは、第四位がクリスの(はら)で製造していた新たな肉体か』

『あー、原作Cルートで栗栖椎菜が孕まされてたヤツ?』

『《神体加護》により作られた肉体。しかし、そこに第四位の魂は宿っておらず、肉体の形も未だ定まっていない。そこに母胎たるクリスの特性が合わさった事で化学反応が起きたか。何者でもない空っぽの器だからこそ、何者にでも成れる無貌の肉という訳だな』

 

 メキメキメキメキィッ‼︎ と。

 触手は骨が粉砕するような力でアダマスの足を締め上げる。

 あれだけ簡単に六界列強(グレートシックス)を屠っていたアダマスが、まるで子供みたいに振り回されている。

 

『……っ、やはり勝てないか』

「お前でも……、歴代最強の天使でもアイツの前では手も足もでないのか⁉︎」

『私はあらゆる未来(ルート)を演算して勝利へ辿り着くが、番外位の《ご都合主義(デウス・エクス・マキナ)》はあらゆる確率論を無視して現実を改変する。私との相性は最悪だ』

 

 アダマスの足はあり得ない方向に折れ曲がっていた。

 見ているだけで痛くなりそうな有様。だけど、彼はうめき声の一つも漏らさない。

 

『第四位は逃げたかな?』

 

 気づくと、そこにクリス(に憑依したディートリヒ)の姿はなかった。

 生存本能の怪物は、いつもの如く逃げ足が速かった。

 

『いやぁ、ボクはアドっちとちょっとした約束事をしていてね。邪魔だった六界列強(グレートシックス)以外の転生者を皆殺ししてくれる代わりに、ボクはディートリヒを彼女のもとへ誘導する必要があったのさ』

『ああ、知っている。私にとっても、それは好都合だ。そうでもなければ、見逃しなんてしない』

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?』

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 一体、誰が悪なんだろう。

 戦いに一万人を巻き込むアドレイドか、その原因を作ったディートリヒか。

 その騒乱を誘導した折手メアか、その未来を許容したアダマスか。

 

 ()()()

 無意識の内に、拳を握り締める。

 変えられない過去だと知っていても、込み上げる怒りが止まらない。

 この事件に関わって全員を殺し、理不尽なこの世界をブチ壊してやりたい。

 

「貴方が憤る必要はないわぁ。そんな事は、わたしもアダムも求めていない」

「…………クリス」

 

 いつの間にか、隣に立っていた。

 いや、幽霊に立っているという表現は間違いかもしれない。彼女は隣に浮いていた。

 

「結局、これは変えることのできない過去。わたしたちは貴方の未来を切り開いて欲しいのであって、どうしようもない過去に拘泥して欲しい訳じゃあないわよぉ」

 

 まるで、痛いくらいに握り締められた手を労るみたいに。

 彼女は触れる事のできない手を、俺の右手と繋ぐように重ねる。

 

『やっぱり、キミは原作主人公(タイトルロール)に相応しくない。彼だったなら、たった一人の犠牲も許さなかったと思うよ?』

『ああ、私は原作主人公(タイトルロール)には成れない。結末(デッドエンド)が視えてしまうから、それ以上足掻く事ができない』

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?』

 

 そこで、意味の分からない言葉を聞いた。

 あまりにも文脈から外れた言動に、理解が追いつかない。

 だけど、分かっていないのは俺だけだった。アダマスにも、クリスにも、何の動揺も見られなかった。

 

 血の繋がり……()()()()

 その答えはすぐだった。

 

 

 

熾天使(セラフィム)(スペード)”、アダマス────()()()()()()()()()()()()()()?』

 

 

 

「──────は?」

 

 六道刃金(りくどうはがね)、アダマスの本名。

 珍しい苗字だった。

 聞いたことのない苗字だった。

 ──()()()()()()

 

()()()()……()()()⁉︎」

 

 髪色と、顔立ちも、似ていない。

 信じられないし、信じたくない。

 だけど、もしかしたら。そんな推測が止まらない。

 

「……血の繋がりって不思議よねぇ。わたしは自分の遺伝子をめちゃくちゃに改造しているから、貴方と似てないのは納得が行くけどぉ。アダムと貴方も、あんまり似てないものねぇ」

「………………ぁ」

「けど、目元がそっくりよ。それに、意志が強くて絶対に折れない所も」

 

 アダマスが父親なのだとしたら。

 母親が誰かなんて、決まってる。

 

「最初はねぇ、イブって名前の予定だったのよぉ? アダム(Adam)から生まれたからイブ(Eve)。だけど、あの人が周りに馴染みやすいように性別に合わせた名前にしようって」

「………………おま、えが」

「だから、伊吹(いぶき)。あの人の子供(イブ)で、転生者に負けない命の輝きを持った息吹(いぶき)。わたしたちの愛しい子供」

()()()()()()()……?」

 

 返答は抱擁だった。

 決して触れる事はできない。

 だけど、どうしてか、暖かみが感じられる。

 

「ちが、う。だって、俺の母親は栗栖晶子(くるすしょうこ)で。お前とは、顔も全然違う……」

栗栖晶子(くるすしょうこ)は転生者だったわぁ。《聖釘の冠(ロンバルディア)》の素材となった、変身能力を持った転生者」

「…………」

「だけど、忘れていないかしらぁ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()宿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()宿()()()()()()()()?」

「……………………ぇ」

 

 たしか、椎菜の親父さんに聞いた事がある。

 母には双子がいた、と。

 それ以上のことは、何も聞いていないが。

 もしかすると、クリスという名前は栗栖(くるす)が由来なのかもしれない。

 

「姉の形をしたイキモノがわたしの両親を殺した。だから、姉の姿をして代わりに善行を積まなくちゃならない。そんな強迫観念が始まりだったわぁ」

「……つまり、俺を産んだのも、椎名の母さんに俺を託したのも、栗栖晶子じゃなくて──」

「わたし。まぁ、天命機関に入った先で男に惚れて、最終的に子供を作ったのは想定外にも程があったけどねぇ」

「っ」

 

 声が震える。

 心の何処かで憧れていた、ふつーの家族。

 母親がいて、父親がいて。そうしたら、もしかしたら、俺もこんな頭のおかしい人間じゃなかったんじゃないかって。

 

「……苦労をかけて、ごめんなさい。未来の事を貴方に頼るしかなくて、ごめんなさい」

『嫌になったら、全部投げ出したって構わない。君は君が生きたいように生きろ。……幸せになってくれ、伊吹』

「ぁ…………」

 

 手を伸ばす。

 

 異能を持つ母親。

 歴代最強の父親。

 ちっとも普通じゃない家族。

 

 手を伸ばす。

 

 でも、だけど。

 そんな異常な家族なら。

 こんな異常な俺だって。

 

 手を伸ばす。

 

 手を伸ばす。

 

 手を伸ばす。

 

 手を伸ばす。

 

 

 ──()()()()()()()()()()

 

 

 ぷしゅっ、と。

 炭酸が抜けるみたいな軽い音を立てて。

 六道刃金(りくどうはがね)は肉塊に押し潰されて死んだ。

 

『ぷっ』

 

 肉塊が肥大化する。

 街の全てを呑み込む。

 最悪のイレギュラーがあらゆる努力を台無しにする。

 

『ぷぷぷっ』

 

 父親に伸ばした手は届かない。

 過去の人間に、俺は干渉できない。

 

 母親に伸ばした手は届かない。

 死した幽霊に、俺は干渉できない。

 

 確かに存在したはずの家族は、どうしようもなく俺の手から溢れ落ちた。

 

『ぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷッ、あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは‼︎』

 

 父の言葉も、母の言葉も掻き消され。

 全てはその嘲笑に埋まってゆく。

 

『幸せになってくれ? ねーよ‼︎ 六道伊吹がッ、あの理不尽を見たら怒りを抱かずにはいられない異常者が幸せになれるわけないだろ馬鹿かキミは‼︎』

「…………で、……ぁ」

『そもそもボクが幸せになんかさせねぇよ‼︎ 幸せに生きて幸せに死ぬ? あり得ないね! それの何が面白い⁉︎ 見ているかいッ、六道伊吹(タイトルロール)‼︎ キミは絶望から逃れられない! ボクが絶対に逃しはしない‼︎ だってッ、キミは理不尽の中でこそ輝くのだからッ‼︎』

「おりでッ、メアァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ‼︎」

 

 認識が甘かった。

 ブレンダ先輩の言葉で、折手メアを知った気になっていた。

 こんなのが折手メアなのか? こんなのが俺が助けたかった少女なのか⁉︎

 

『見ているかい? 見ているのなら、目に焼き付けて欲しい。これがボク、六界列強(グレートシックス)・番外位の折手メア』

 

 肉塊の頂点で。

 最低最悪の魔女は嗤った。

 

 

『キミの人生(ストーリー)黒幕(ラスボス)さ』

 

 

 さぁ、今一度問おう。

 こんなヤツ、命を賭けて救う価値があるのか?

 

 

 


 

 

 

 

 

「生存者リスト」

 

▽天命機関

ブレンダ

ジェンマ

ロドリゴ

レオンハルト

ファウスト

イヴリン

etc

 

▽転生者

六道伊吹

アドレイド・アブソリュート

二神双葉

三瀬春夏冬

九相霧黎

ディートリンデ

フラン=シェリー・サンクチュアリ

ルーアハ

 

▽一般人

栗栖椎菜

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