埼玉県川口市のクルド人が愛知県に「大移動」か…現地住民が明かす「知られざる理由」
クルド人の大移動はなぜ起きたのか?
愛知県に住む在日トルコ人の数は、埼玉の1786人に次ぐ1644人で全国2位だ。県西部に位置する津島市や稲沢市、あま市などに暮らしている。 【一覧】予想よりずっと...在留外国人の多い市区町村や構成比 また、県内に住むトルコ人の7割以上が、黒海沿岸のオルドゥ県という地域の出身者という特徴もある。'80年代後半から同地域のトルコ人が解体業などに従事するために来日したのを機に、彼らの親戚が次々と押し寄せるようになったという。 国内におけるトルコ人コミュニティは2つ存在する。ひとつはトルコ国籍のクルド人が住む埼玉県川口市、もうひとつはオルドゥ県出身のトルコ人が集まる愛知県西部だ。彼らは同じトルコ国籍を持っているとはいえ言語や文化が異なる。そのため、これまでは日本国内で上手く住み分けをしていた。 実は近年、こうした均衡が崩れつつある。埼玉に住むクルド人が、愛知県に「大移動」を始めているというのだ。その実態を探るため、現地へ向かった。
懸念される過去の“諍い”
津島市では、いまも多くのトルコ人たちが解体業に従事している。彼らのひとりに話を聞いてみると、こう答えた。 「様々な事情を抱えて西川口から愛知に移り住んでいるクルド人は増えています。基本的に私たちは『来るもの拒まず』の精神で生きているので何も問題はありません。ただ、かつてクルド人との間で抗争が起きてしまった過去があるので、同じ悲劇が起こらないことを祈ります」 この抗争とは、'15年に都内のトルコ大使館前で起きた乱闘騒ぎだ。当時、トルコ総選挙の在外投票が大使館で行われたのだが、その場でグループ間の諍いが起きてしまったという。
トルコ人の数は半年で100人増加
なぜ、クルド人が愛知県に来るようになったのか。あま市で解体業者を経営するトルコ人のアドさんはこう解説する。 「埼玉に住むクルド人が急増しているために、働き先が見つからないクルド人は少なくありません。もともと愛知にはトルコ人と仲良くしているクルド人もいて、解体系の仕事先を斡旋しているようです」 こうした経緯を経て、いまではトルコ人とクルド人が手を取り合って、解体業に従事するようになっているという。 統計としてクルド人は増えているのかどうか、出入国在留管理庁に問い合わせると、「特定の民族(編集部注:クルド人)の集計データはありません」との答えだった。ただ、「愛知県在住のトルコ国籍数は'23年12月から'24年6月までの間で約100人増えている」という。 後編記事『埼玉から愛知への「クルド人の大移動」と増えるトルコ人とクルド人の「対立」と「共通点」』へ続く。 「週刊現代」2025年2月15日号より
週刊現代(講談社・月曜・金曜発売)